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京都大学 霊長類研究所 年報 vol. 48
京都大学霊長類研究所年報のページvol. 48

京都大学霊長類研究所 年報

vol. 48 2017年度の活動

.ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP


1. ナショナルバイオリソースプロジェクト(ニホンザル)の活動

平成14年度から文部科学省により開始されたナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の一環である。自然科学研究機構(生理学研究所)を中核機関、京都大学(霊長類研究所)を分担機関として、安全で健康なニホンザルを日本のさまざまな研究機関に供給することを目的として実施してきた。京都大学では、平成24年度より中村克樹を管理責任者として実施している。平成27年度より日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトとなった。平成29年度より第4期(5年計画)に入った。第4期からは、京都大学が代表機関となり自然科学研究機構を分担機関とし実施することとなった。現在、約400頭のニホンザルの3分の2を小野洞キャンパス(第2キャンパス)内で、3分の1を官林キャンパス(第1キャンパス)内で飼育している。

平成29年度の実績は以下の通りである。1)京都大学霊長類研究所にNBRPニホンザル運営委員会・提供検討委員会・疾病対策委員会を立ち上げ、プロジェクトの実施体制を整備した、2)特定職員を雇用し、代表機関としての業務に対応できる体制を確立した、3)今年度は霊長類研究所から29頭、生理学研究所から47頭の提供を実施した。また、ユーザーの希望を満たすため年3回の提供を行った、4)提供に関する業務は出荷検疫にいたるまですべて京都大学が実施した、5)事前講習会等を通じて、ニホンザルを用いた研究者の教育や指導を行った、6)サルの疾病対策等に関しては、生理学研究所の個体で発症したサルレトロウィルス(SRV5)感染症に対し、DNA・RNA・抗体検査を全頭で実施した。生存している全個体で陽性反応のないことを確認した、7)神経科学学会の大会期間中にユーザー会議を開催し、ユーザーとの情報交換を行った、8)広報活動および新たなユーザー開拓を目的として、関連学会等でポスター展示を行った。また、公開シンポジウムを開催し、ニホンザルを用いたHPを用いた情報発信などに努めた。

(文責:中村克樹)


2. ナショナルバイオリソースプロジェクト(GAIN)の活動

GAIN:大型類人猿情報ネットワークの展開

事業名称「情報発信体制の整備とプロジェクトの総合的推進」(大型類人猿情報ネットワークの展開,英文名称Great Ape Information Network,略称GAIN)は,文部科学省の主導によるナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の一環として平成14年度に発足した。平成29年度より第4期が開始し,飼育施設と研究者を結ぶネットワークや個体情報データベースのさらなる充実をめざしている。平成29年度も,霊長類研究所と野生動物研究センターの両部局の共同運営事業と位置づけた。綿貫宏史朗(特定研究員、霊長類研究所・日本モンキーセンター赴任)と渡邉雅史(技能補佐員、野生動物研究センター熊本サンクチュアリ赴任)の2名の職員が実務にあたった。また親事業である「情報」を統括する国立遺伝学研究所(情報事業代表:川本祥子)から厚いご支援をいただいた。平成29年度事業としては,従来と同様に,死亡や出生に応じて迅速にデータベースを更新することができた。平成30年7月26日現在で,チンパンジー314個体(49施設),ボノボ6個体(1施設),ゴリラ21個体(7施設),オランウータン47個体(19施設),テナガザル類180個体(43施設)が国内で飼育されている。個体ごとの生年月日や家系情報に加えて,DNA情報・行動情報についても整備をすすめた。すでに死亡した個体も含め,チンパンジー1013個体,ボノボ9個体,ゴリラ121個体,オランウータン253個体,テナガザル595個体分,総計1991個体(うち現存個体570個体)分の情報データベースとなった(平成30年3月31日時点,前年度末比+15個体)。また,死亡個体由来の試料について,霊長類研究所の共同利用・共同研究拠点制度にのっとった配布を進めた。今年度死亡した類人猿12個体中,4個体分の遺体由来試料についてGAINを通じ霊長類研究所・資料委員会で譲受した。GAINの推進する非侵襲的類人猿研究の成果として,京都大学霊長類研究所のチンパンジー親子3個体(父:アキラ,母:アイ,息子:アユム)の全ゲノム配列を高精度で解読した論文(Tatsumoto et al., 2017)を発表した。今後,その有効な公開方法を検討する。データベースについては,以下の和英のWEBサイトを参照されたい。http://www.shigen.nig.ac.jp/gain/

なお、GAIN雇用の研究員による研究業績は以下のとおりである。


学会発表

打越万喜子・山田将也・石田崇斗・綿貫宏史朗 (2017) 社会的環境変化で飼育下テナガザルの歌はどう変わるか? 第33回日本霊長類学会, 2017年7月16-17日, 福島県福島市. 霊長類研究,33巻補遺版,p42.

(文責:友永雅己・松沢哲郎・綿貫宏史朗)



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