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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > vol. 48 京都大学霊長類研究所 年報vol. 48 2017年度の活動系統発生分野 <研究概要> 東部ユーラシア地域における霊長類進化に関する研究 ミャンマー産新第三紀霊長類化石の研究 高井正成, 西村剛, 江木直子 ミャンマーの中新世~更新世の地層を対象に霊長類を中心とした哺乳類化石の発掘調査をおこない,テビンガン地域の後期中新世初頭の地層からホミノイド類化石を発見した。現在,詳しい形態解析を行っている。
東部ユーラシア地域における古第三紀の霊長類進化に関する研究 高井正成, 西村剛, 江木直子 ミャンマーのポンダウン地域に広がる中期始新世末の地層から産出する霊長類化石について研究を行っている。
韓国産マカクザル化石の研究 高井正成, 西村剛,伊藤毅(進化形態分野) 韓国中部忠清北道の中期更新世の洞窟堆積物からみつかっていたマカクザルの頭骨化石を報告した。
ユーラシア産大型ヒヒ族化石の研究 西村剛, 高井正成, 伊藤毅(進化形態分野) ルーマニア産パラドリコピテクス属の系統学的関係の検討を行った。その基礎資料である現生ヒヒ亜族とマカクの顔面頭蓋の外表形状について,幾何学的形態計測法とコンピューターグラフィック技術を用いて比較分析した。新たに,両グループに共通するアロメトリー形状差異を明らかにし,ヒヒ属とスラウェシマカクが特異的な形状を進化させたことを明らかにした。
中国南部の更新世霊長類相に関する研究 浅見真生(大学院生),高井正成 中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の金昌柱教授と張穎奇教授の調査隊に協力して,中国南部の広西壮族自治区の更新世の洞窟堆積物から産出する霊長類化石解析を行った。特に同地域から見つかったマカク類(オナガザル亜科)の化石の下顎第3大臼歯を基に,幾何学的形態計測法を用いて種レベルの同定を試みている。
東南アジア島嶼域における霊長類の進化に関する研究 Halmi Insani(大学院生),高井正成 東南アジア島嶼域(インドネシア,フィリピン,マレーシア)における霊長類の進化について研究している。
現生霊長類の機能形態学的研究 サル類の音声生理に関する実験行動学的研究 西村剛,國枝匠,香田啓貴(認知学習分野) 音声生成運動のサルモデルを確立するため,音声発声のオペラント条件付けを施したニホンザルを対象として,各種の音声行動実験と分析を実施した。サル類における音声発声のオペラント条件付けの機序が,ヒトのそれと大きく異なることを明らかにした。オーストリア・ウィーン大学および立命館大学と共同して,マカクザルの声帯振動の吹鳴実験および機能形態学的分析を実施し,その多様性と制御機序を明らかにし,新たな振動計算モデルを検討した。
哺乳類の鼻腔の生理学的機能に関する流体工学的的研究 西村剛 鼻腔内における温度と湿度調整機能に関する数値流体力学的シミュレーションについて,ヒトのモデルをもとに,サル類を含む哺乳類一般の機能を計算しうるモデルの開発を進めた。
霊長類以外の生物を主な対象とした古生物学的研究 古第三紀哺乳類相の解析 江木直子,高井正成 古第三紀(6500万年前~2400万年前)の陸棲脊椎動物相を解析することによって,哺乳類の進化の実態を明らかにすることを目指している。本年度は,ミャンマーのポンダウン層から産出したヒエノドン類(肉歯目)と食肉類の系統分類の検討及び古生物地理学的な考察を行った。
ミャンマー中部における新第三紀哺乳類相の解析 高井正成, 江木直子, 西村剛,浅見真生(大学院生) ミャンマーの新第三紀哺乳類相とその進化史の解明を目指し,中新世から更新世に生息していた哺乳類化石群集の古生物学的研究を行っている。本年度は,ミャンマー中部のイラワジ層(テビンガン地域,チャインザウク地域,グウェビン地域)を中心に発掘調査を実施し,霊長類を含む多くの哺乳類化石を発見した。また,ミャンマーの新第三紀哺乳類の変遷に関する日本語総説を執筆した。
霊長類以外の生物を主な対象とした機能形態学的研究 江木直子 アフリカ獣類と霊長類,カンガルーなどの限られた哺乳類に保持されていることが知られている距骨の形態形質について,形態の差異を観察し,系統分類における有用性と関節の可動における機能を検討した。
<研究業績> 原著論文 Ito T, Lee Y-J, Nishimura TD, Tanaka M, Woo J-y, Takai M (2018) Phylogenetic relationship of a fossil macaque (Macaca cf. robusta) from the Korean Peninsula to extant species of macaques based on zygomaxillary morphology. Journal of Human Evolution 119: 1-13. (https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2018.02.002) Zin Maung Maung Thein, Thaung Htike, Aung Naing Soe, Chit Sein, Maung Maung, Takai M (2017) A review of the investigation of primate fossils in Myanmar. Barber AJ, Khin Zaw, Crow MJ (eds) Myanmar: Geology, Resources and Tectonics. Geological Society, London, Memoirs, 48, 185–206. (https://doi.org/10.1144/M48.9) Thaung Htike, Takai M (2017) Reevaluation of the phylogeny and taxonomy of the Asian fossil hippopotamuses. Universities Research Journal 8(1): 171-197. 西岡佑一郎・高井正成(2018)ミャンマー中部の鮮新統から発見された骨化石密集層.化石103: 1-2. Nishioka Y, Takai M (2018) A bone bed from the Pliocene of Central Myanmar. Fossil, 103: 1-2. 西岡佑一郎・高井正成(2018)ミャンマー中部の新第三系イラワジ動物相:霊長目・トガリネズミ形目・齧歯目・兎形目.化石103: 21-36. Nishioka Y, Takai M (2018) Neogene Fauna of Central Myanmar: Primates, Soricomorpha, Rodentia and Lagomorpha. Fossil, 103: 21-36. 高井正成,楠橋直,西岡佑一郎,タウン・タイ,ジン・マウン・マウン・テイン(2018)ミャンマー中部の新第三系の地質と動物相の変遷.化石 103: 5-20. Takai M, Kusuhashi N, Nishioka Y, Thaung-Htike, Zin-Maung-Maung-Thein (2018) Geological setting and transition of the Neogene mammal fauna in central Myanmar. Fossil 103: 5-20. 大石元治,江木直子,宇根有美,藤田道郎,添田聡,尼崎肇,市原伸恒 (2018) アメリカグマ(Ursus americanus),マレーグマ(Helarctos malayanus),ホッキョクグマ(Ursus maritimus)における手内筋の筋重量について.麻布大学雑誌, 29, 1-4.
著書(項目執筆) 高井正成(2018)人類学.『ブリタニカ国際年鑑』ブリタニカ・ジャパン.217-218頁. 江木直子 (2017) III 動物編 13 食肉類.バイオメカニズム学会 (編) 手の百科事典.朝倉書店.pp. 241-243. 江木直子 (2017) III 動物編 27 鈎爪・扁爪・蹄.バイオメカニズム学会 (編) 手の百科事典.朝倉書店.pp. 287-290. 江木直子 (2017) III動物編 29 走行型.バイオメカニズム学会 (編) 手の百科事典.朝倉書店.pp. 295-298.
学会発表 Saegusa H, Takai M, Thaung-Htike, Zin-Maung-Maung-Thein, Nishioka Y (2017) New materials of the late Cenozoic proboscideans of Myanmar. 7th International Conference of Mammoths and Their Relatives (ICMR) (Sep., 17-23, 2017, Taichung, Taiwan). Egi N, Tsubamoto T, Zin-Maung-Maung-Thein, Thaung-Htike, Takai M (2017) Carnivoran fossils from the Pondaung Formation (Middle Eocene) of Myanmar and their systematic classification. 7th International Symposium on Asian Vertebrate Species Diversity. (2017/12,Yangon, Myanmar). Takai M, Thaung-Htike, Zin-Maung-Maung-Thein (2017) Transition of the Later Neogene Land Mammal Fauna in Central Myanmar. (5-9, Dec, 2017, Yangon, Myanmar). Asami, M., Takai, M. Species Identification for Macaque Teeth, Using 3D Geometric Morphometric Method. The 7th International Symposium on Asian Vertebrate Species Diversity. Yangon, Myanmar December 2017. Zin-Maung-Maung-Thein, Takai, M., Nishioka, Y., Thaung-Htike (2017) Stable Isotope Analysis of the Irrawaddy Mammalian Fauna from Gwebin Area and its Implication to Paleoenvironmental Transition in Late Neogene of Central Myanmar. International Conference on Applied Earth Sciences in Myanmar and Neighboring Regions (organized by Myanmar Applied Earth Sciences Association, MAESA) (Nov., 2-8, 2017, Yangon, Myanmar) Egi N, Tsubamoto T, Zin-Maung-Maung-Thein, Thaung-Htike, Takai M. (2017) A new hypercarnivorous hyaenodont (Mammalia) from the Middle Eocene Pondaung Formation of Myanmar and its influence to the biogeographic origin hypotheses of the Pondaung hyaenodonts. Society of Vertebrate Paleontology 77th Annual Meeting. (2017/08,カナダ・カルガリー市) Ito T, Lee Y-J, Nishimura TD, Takai M (2017) Zygomaxillary morphology of Macaca cf. robusta (Middle Pleistocene, Korea) and its phylogenetic and evolutionary implications. 86th Annual Meeting of American Association of Physical Anthropologists (Apr., 2017) Nakatsukasa M, Morimoto N, Nishimura T (2018) Sesamoids of the metacrpophalangeal joints in hominoids. The Swiss-Kyoto Symposium: Recent Advancement in Physical Anthropology. (2018/03, Irchel Campus, University of Zurich). Nishimura T (2018) Computed fluid dynamics of air conditioning in the nasal cavity in primates. The Swiss-Kyoto Symposium: Recent advancement in Physical Anthropology. (2018/03, Irchel Campus, University of Zurich). 高井正成・楠橋直・タウンタイ・ジンマウンマウンテイン・江木直子・浅見真生(2018)ミャンマー中部における後期中新世の動物相の変化について.第167回日本古生物学会例会(2018年2月2-3日、松山)、講演予稿集19頁. 浅見真生・張穎奇・金昌柱・高井正成(2018)幾何学的形態解析によるマカク属遊離歯化石の種同定の試み.第167回日本古生物学会例会(2018年2月2-3日、松山)、講演予稿集20頁. 徳川広和・高井正成(2018)ダーウィニウス復元模型製作.第167回日本古生物学会例会(2018年2月2-3日、松山)、講演予稿集45頁 柏木健司・高井正成(2017)富山県東部黒部峡谷のニホンザルによる洞窟利用Cave Use by Japanese Macaques (Macaca fuscata) along Kurobe Gorge, eastern Toyama Prefecture of Central Japan.日本哺乳類学会(2017年8月,富山). 浅見真生・高井正成・張穎奇・金昌柱(2017)マカク属の下顎第三大臼歯における種同定の試み.第33回霊長類学会大会、霊長類研究33(2017年7月15–17日、福島) 高井正成・河野礼子・タウンタイ・ジンマウンマウンテイン・西岡佑一郎・楠橋直・浅見真生(2017)ミャンマー中央部における後期中新世前半の霊長類を含む動物相に関する予備的報告.第33回霊長類学会大会、霊長類研究33(2017年7月15–17日、福島) 江木直子・鍔本武久・Zin-Maung-Maung-Thein・Thaung-Htike・高井正成(2017)ミャンマー中期始新世ポンダウン相の食肉型類(Carnivoramorpha, Mammalia)の系統分類についての再検討。日本古生物学会2017年年会(2017年6月9-11日、北九州市 三枝春生・高井正成・西岡佑一郎・Thaung Htike・Zin Maung Maung Thein (2017) ミャンマーの後期新生界産長鼻類化石. 化石研究会第35回総会・学術大会(2017年6月,福井) Kashiwagi K, Mori T, Hino Y, Kano A, Takai M (2017) Dating rock mass failure by speleothem and cave use of Japanese monkey: example for the Karst area along Kurobe Gorge in eastern Toyama Prefecture of central Japan. 地球惑星科学連合大会(2017年5月) 小林諭史, 森本直記, 西村剛, 山田重人, 中務真人 (2017) ヒトおよび現生大型類人猿の四肢の相対成長. 第33回日本霊長類学会大会. (2017/07, コラッセふくしま, 福島) 小林諭史, 森本直記, 西村剛, 山田重人, 中務真人 (2017) ヒト科における生後の四肢相対成長. 第71回日本人類学会大会. (2017/11, 東京大学, 東京) 西村剛 (2017) 霊長類における鼻腔の形態進化と温度・湿度調節機能の適応. 第19回日本進化学会大会. (2017/08, 京都大学, 京都) 西村剛, 森本直記, 伊藤毅 (2017) ヒヒ族の顔面形状の系統間差異について.第33回日本霊長類学会大会. (2017/07, コラッセふくしま, 福島) 野村嘉孝, 西村剛, 今井宏彦, 松田哲也 (2017) テナガザルの声帯の機能適応に関する三次元形態学的分析. 第71回日本人類学会大会. (2017/11, 東京大学, 東京) 高井正成,楠橋直,タウンタイ,ジンマウンマウンテイン,江木直子,浅見真生 (2018) ミャンマー中部における後期中新世の動物相の変化について.日本古生物学会2018年例会.(2018/02,松山市) 江木直子(2017) 距骨cotylar fossaの形成位置と足根関節での機能:霊長類と非霊長類の差異.日本霊長類学会大会.(2017/07,福島市) 玉川俊広,椎野顯彦,目良裕,重歳憲治,犬伏俊郎,本間智,日野広大,木村智子,内村康寛,新田哲久,牛尾哲敏,小森優,森川茂廣,仲成幸,江木直子,宇田川潤 (2018) 指骨の複比による霊長類の手指機能とそのロコモーションとの関連性.第123回日本解剖学会総会・全国学術集会.(2018/03,武蔵野市) 玉川俊広,椎野顕彦,目良裕,重歳憲治,日野広大,木村智子,内村康寬,本間智,江木直子,宇田川潤 (2017) 霊長類の生態と手指の形態及び機能の関連性.日本解剖学会第93回近畿支部学術集会.( 2017/11,大津市) Asami, M., Takai, M. Species identification for isolated macaque teeth, using 3D geometric morphometric method. 第62回プリマーテス研究会, 犬山, 2018年1月 浅見真生,高井正成,張穎奇,金昌柱,幾何学的形態解析によるマカク属遊離歯化石の種同定の試み,日本古生物学会 第167回例会,愛媛, 2018年2月 浅見真生,化石のはなし-ミャンマー編-,第4回宇部と地球の環境を考えるフォーラム,ときわ動物園,2017年8月
講演 1)西村剛 (2017) 霊長類の進化とコミュニケーション. 立命館大学付属高校講義. (2017/05, 京都大学霊長類研究所, 犬山)
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