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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2009年度 > 寄付研究部門

京都大学霊長類研究所 年報 

Vol.40 2009年度の活動

寄附研究部門

ボノボ(林原)研究部門の発足に当たって

 ボノボ研究(林原)研究部門が平成21年度中の審議をへて,平成22年度当初から発足することになった.

 パン属2種のうちチンパンジーは日本に現在334人いるが,ボノボはゼロである.向こう3年以内に,アメリカ動物園水族館協会の協力を得て日本にボノボ1群5人を導入する計画を立てた.研究の場所は岡山の林原類人猿研究センター(GARI)で,研究は霊長類研究所のボノボ(林原)研究部門(寄附講座)がこれと共同しておこなう.当該部門は,松沢哲郎教授(兼任),平田聡准教授(客員,本務は林原類人猿研究センター主席研究員),山本真也助教(専任)の3名で構成される.

 ボノボ(林原)研究部門の目的は,ボノボの心の研究を通じて,人間の本性の進化的起源を解明することである.そのために,自然の生息地における野外研究を進めつつ,飼育下の実験的研究を推進し,ボノボを対象にした比較認知科学的研究をおこなう.

 現代社会の直面するさまざまな課題がある.たとえば人口比でみても日本の自殺率は先進国中第1位である.交通事故の3倍の年間約3万人が自殺している.その背景にある「うつ」や,ひきこもり,児童虐待,家族崩壊,著しく伸びた高齢期の暮らしも問題だ.こうした日々の暮らしを変える力になるような科学的研究が必要だろう.そのためには,「人間とは何か」という普遍的な問いに,具体的かつ実証的に答える基礎科学研究が必須だ.

 そこで「アウトグループ」という発想から人間を科学する視点を提起し,チンパンジーとボノボという存在のまるごと全体の理解をめざしたい.例えていえば,三角測量の視点だ.チンパンジーとボノボの厳密な比較を基線として,チンパンジーから見た人間,ボノボから見た人間を描き出すことで,従来まったくなかった人間理解が進むだろう.ヒト属2種(サピエンス人とネアンデルタール人)は,約3万年前の後者の絶滅によって,直接の比較研究はできない.しかしパン属2種(チンパンジーとボノボ)の比較研究はできる.
研究目的は,1)心を形成する諸要素(知覚・記憶・感情等)についての研究を進めるとともに,その基盤となる脳の働き,さらにSNP解析を通じた個性のゲノム的基盤を明らかにする.2)個体レベルを基礎として,個体と個体の「間」になりたつ社会関係の解析をすすめる.親子関係,仲間関係,さらには群れ(社会集団)の文化の研究である.3)心だけでなく,それを担う器官としての脳,さらには身体,暮らし,ゲノムなどの広範な比較研究をおこなう.以上の研究から,人間の心の進化的基盤を,人間とチンパンジーとボノボというヒト科近縁3種の比較を通じて明らかにし,現代社会の直面する人間の心の諸課題について科学的に妥当な指針を与える.

 本研究部門がめざすのは,世界で初めての,野生と飼育の双方でのボノボの総合研究である.チンパンジーは,男性優位で殺害が多く子殺しをして多様な道具を使う.他方ボノボは,女性優位で殺害が皆無に近く,したがって子殺しも無く,道具をほとんど使わない.いわば平和共存型の社会である.コンゴの内乱が終息して,野生ボノボ研究が復活した.しかし,地球上で最も到達しにくい調査地のひとつである.アフリカ中央のコンゴ盆地の最奥部で,ザイール川を遡上すると1週間以上かかる.チャーター飛行機は高額だ.それでも,ここは日本が世界に先駆けて最初にボノボ研究に着手したところであり,そのパイオニアである加納隆至(京大名誉教授)は「ニューズウィーク2009年7月8日号」で,「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた.その調査地コンゴのワンバでの研究を引き継ぎ発展させることは日本の誇る固有な国際貢献といえるだろう.霊長類研究所の社会生態研究部門では,加納教授以来の伝統を受け継いで野生ボノボの研究をしてきた.今回の新たな寄附研究部門は,そうした既存の研究を支援し補完するものだといえる.

(文責:松沢哲郎)



白眉プロジェクト

  京都大学では,平成21年度に京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」を立ち上げた.このプロジェクトは,優秀な若手研究者を年俸制特定教員(准教授,助教)として採用し,最長5年間,自由な研究環境を与え自身の研究活動に没頭してもらうことにより,次世代を担う先見的な研究者を養成するものである.

  対象とする分野は, 人文学,社会科学,自然科学の全ての分野を対象である.これらには,基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を含む. 公募は,国際公募とした.年俸制特定教員(准教授,助教)として,毎年度20名を上限として採用する. 採用にあたり,公正な評価に基づき,同等の能力を有すると判断される場合には,女性研究者や外国人研究者の採用を促進することとした. 採用予定時期については,原則として,平成22年4月1日とした.なお,本プロジェクトの採用者については,次世代をリードする優秀な研究者として本学が認めたことを証するものとして,「京都大学白眉研究者」の称号が与えられる.
「白眉プロジェクト」を実施するため,京都大学次世代研究者育成センターを設置した.同プロジェクトにより採用される年俸制特定教員(准教授,助教)は,同センターに所属することとなる.研究費として,研究内容に応じて,年間1,000千円~4,000千円程度を措置される.採用後に提案された研究計画を実施するための京都大学内の研究場所等(受入先)について,事前に内諾を得ることが求められた.

  選考方法は下記のとおり.京都大学次世代研究者育成センターに,本プロジェクトに係る採用候補者の選考を行うための選考委員会「伯楽会議」を設置し選考を行った.第一次審査として,伯楽会議の下に設置する専門委員会において書類選考を行い,第二次審査として,伯楽会議において面接(日本語/英語)を行い,研究面のみならず次世代のリーダーとしての資質等を総合的に判断して採用候補者の選考を行った.伯楽会議で選考された採用候補者については,センターにおける管理運営に関する事項を審議するための運営委員会に諮り,採用者を決定した.平成21年11月16日締め切りで公募され,審議の結果,平成22年1月27日に内定通知され,18名(男女比14:4)の採用が決まった.応募総数588名,採択率3.1%である.准教授7名(平均年齢37歳),助教11名(平均年齢30歳)が採用された.

  霊長類研究所が「受入先」となるものとして,比較認知発達(ベネッセコーポレーション)研究部門の佐藤弥准教授が,「京都大学白眉研究者・准教授」に採用された.研究課題名は,「顔を通した社会的相互作用の心的メカニズムの解明」である.佐藤氏の研究は,認知心理学・電気生理学・機能的脳画像・脳損傷研究・発達障害研究といった手法を有機的に組み合わせたものである.本研究所としては,京都大学白眉研究者を受け入れるにあたって,平成22年度より,既存の部門・施設等とは独立に「白眉プロジェクト」という部署を新たに設けて,受入先としての責任を果たしつつ,本学の新たな試みを支援することとした.

(文責:松沢哲郎)

 




グローバル30プログラム
「国際霊長類学・野生動物コース」

  霊長類研究所と野生動物研究センターの2部局は協力して,「霊長類学・野生動物系」の名のもとに,理学研究科・生物科学専攻として大学院教育を推進している.このたび,英語コース「国際霊長類学・野生動物コース」を開設することになった.平成21年から準備をはじめて,22年度中に試行し,23年度当初に正式に開設予定である.これは,英語で授業をおこない,英語で博士学位を取得するコースである.大学院生は,従来どおり既存の分科のいずれかに属すが,英語コースを志望すると,既存の授業に加えて英語による授業課目が別途用意される.英語コースの運営は,平成21年度に新設された霊長類研究所の付属研究施設「国際共同先端研究センター(CICASP)」が担当する.志望資格は,外国籍の者あるいはそれと同等の理由のある,日本語の試験が妥当でない日本国籍の者である.日本で,霊長類学や野生動物の研究をしたいという方は,ぜひ応募を検討していただきたい.英語に堪能な外国人ならびに日本人の教職員がお手伝いをする体制を整えた.また,霊長類学・野生動物系の大学院生には,ITP-HOPEその他の事業によって,海外研修や海外調査をする機会が数多く用意されている.選抜方法については,HPで周知している.詳細については,当面,指導教員となるスタッフにお問い合わせいただきたい.
  英語コース名:国際霊長類学・野生動物コース
International course for Primatology and Wildlife Research
  目的:先進国の中で日本だけがサルの住む国だという特徴を活かして,霊長類学の発展と保全のための人材を育成する.

(文責:松沢哲郎)

 

 

 

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