京都大学霊長類研究所 年報
Vol.40 2009年度の活動
共同利用研究
1. 概要
平成21年度の共同利用研究の研究課題は以下の三つのカテゴリーで実施されている.
1.計画研究
2.自由研究
3.随時募集研究
共同利用研究は,昭和57年度に「計画研究」と「自由研究」の2つの研究課題で実施された.昭和62年度からは「資料提供」(平成14年度から「施設利用」と名称を変更,さらに平成20年度から「随時募集研究」と名称を変更)を,また平成6年度からは「所外供給」(平成14年度から「所外貸与」と名称を変更し,平成15年度で終了)を新設し,現在に至っている.それぞれの研究課題の概略は以下のとおりである.
「計画研究」は,本研究所推進者の企画に基づいて共同利用研究者を公募するもので,個々の「計画研究」は3年の期間内に終了し,成果をまとめ,公表を行う.
「自由研究」は,「計画研究」に該当しないプロジェクトで,応募者の自由な着想と計画に基づき,所内対応者の協力を得て,継続期間3年を目処に共同研究を実施する.
「随時募集研究」は,資料(体液,臓器,筋肉,毛皮,歯牙・骨格,排泄物等)を提供して行われる共同研究である.
平成21年度の計画課題,応募並びに採択状況は以下のとおりである.
(1) 計画課題
(課題推進者のうち下線は代表者)
1.霊長類のゲノム研究
実施予定年度 平成19年度~21年度
課題推進者:平井啓久,景山 節,今井啓雄,宮地重弘
ヒトゲノムの概要配列が明らかにされことで,霊長類のゲノム研究は「人間の由来」を解く鍵として,もっとも重要な研究課題といえる.本課題は,比較ゲノム配列解析,cDNA比較解析,感覚系遺伝子の比較解析を主軸として各種霊長類のゲノム研究を推進する.
2.チンパンジーの発達に関する総合的研究
実施予定年度 平成19年度~21年度
課題推進者:友永雅己,宮部貴子,林 美里
チンパンジーの認知や行動とその発達について,幅広い視点で学際的・総合的に研究する。基礎的な知覚・認知機能,成長,生理機能,運動機能,コミュニケーション,社会的知性などについて,他の霊長類と比較しつつ検討する.
3.マカクの種内・種間分化およびその保全と利用
実施予定年度 平成19年度~21年度
課題推進者:川本芳,渡邊邦夫,濱田穣,田中洋之,半谷吾郎,國松豊
マカカ属サル類の形態,生態,行動,遺伝等の形質比較による種内地域変異,種間分化,種間関係,生物地理の研究を進め,多様性と進化の理解をめざす.また,保全や実験利用に関わる研究も募り,マカクをめぐる問題の検討を進める.
4.旧世界ザルの変異性と進化に関する多面的アプローチ
実施予定年度 平成21年度~23年度
課題推進者:高井正成,西村剛,江木直子,マイク・ハフマン
旧世界ザル類(オナガザル科)はオナガザル亜科とコロブス亜科の二つのグループからなるが,その形態・食性・行動パターンには大きな変異が存在する.こういった旧世界ザル類の多様性とその進化に関して形態学や同位体分析などの多面的な分野・手法を用いてアプローチする.
(2) 応募並びに採択状況
平成21年度はこれらの研究課題について,92件(142名)の応募があり,共同利用実行委員会(友永雅己,宮部貴子,古賀章彦,田中洋之,辻大和)において採択原案を作成し,協議員会(平成21年2月10日)の審議・決定を経て,運営委員会(平成21年3月9日)で了承された.
その結果,89件(137名)が採択された.
各課題についての応募・採択状況は下記のとおりである.
課題 | 応募 | 採択 |
計画研究1 | 7件 | ( 13名) | 7件 | ( 13名) |
計画研究2 | 8件 | ( 10名) | 8件 | ( 10名) |
計画研究3 | 13件 | ( 17名) | 13件 | ( 17名) |
計画研究4 | 5件 | ( 5名) | 5件 | ( 5名) |
自由研究 | 39件 | (63名) | 37件 | (59名) |
随時募集研究 | 20件 | (34名) | 19件 | (33名) |
合 計 | 92件 | (142名) | 89件 | (137名) |
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