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京都大学霊長類研究所 年報
Vol.40 2009年度の活動
ナショナルバイオリソースプロジェクト(ニホンザル)の活動
平成19年度より,5年間の計画で第2期ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)が開始された.NBRPは実験研究のモデルとなるマウスやラットやショウジョウバエならびにイネやシロイナズナ等の動植物,ならびにES細胞などの細胞株を含めたバイオリソースのうち,国が戦略的に整備をすすめる22件が中核的拠点整備プログラムとして推進されている.そのなかの一つに「ライフサイエンス研究用ニホンザルの飼育・繁殖・供給」がある.自然科学研究機構生理学研究所が中核機関,霊長類研究所が分担機関として,いわゆるニホンザル・バイオリソース(NBR)を推進している.NBRは病原微生物学的に安全で,馴化の進んだ研究用ニホンザルを年間200頭程度供給する体制の確立を目標としている.
霊長類研究所では官林キャンパス(第1キャンパス)から直線距離で約1キロ東に位置する善師野地区に第2キャンパス(約76ha)として,大型プロジェクト「リサーチリソースステーション(RRS)」を平成19年度に開設した.本事業は環境共存型大型放飼場を設置し,ニホンザルの社会行動等の観察研究に資するとともに,新たな研究用ニホンザルを創出・繁殖・育成し,全国の研究機関に供給することを目的とする.環境との共存を重視する本キャンパスでは,敷地内の植生の保全と,排水の処理に万全を期している.とくに汚水はBODで5ppm以下に処理後,放飼場へ還元散布し,敷地外には出さないシステムを構築している.大型放飼場はニホンザルの野生での生息環境を再現するもので,今後の多様な霊長類研究の推進の核となるものと期待される.
RRSの整備にともなってNBRの分担機関として「大型飼育施設でのニホンザルの繁殖・育成事業」の課題を推進し,全国へのニホンザル供給を実現するための,繁殖育成を遂行している.平成21年度に最後の大型グループケージを設置し,予定した施設整備は完了した.これで1式2条の放飼場が3式,育成舍1棟,さらに3棟のグループケージが完成し,母群総数350頭のニホンザルの飼育が可能となった.平成21年度からNBRの経費が補助金化され安定供給に向けた業務が本格的に実施されている.
NBRPのニホンザルとして飼育される母群の導入は平成21年度で終了し,繁殖も順調に進み,母総数307頭で出産数は40頭であった.NBRP全体で68頭の供給がおこなわれ,霊長類研究所の担当は17頭であった.プロジェクトでは最終的に全国の研究機関に毎年200頭の供給を目標としていて,第2期終了時の平成23年度にはその目標を達成することを目指している.霊長類研究所は100頭の供給を担当することになっている.母群調達は平成21年度で完了したので,今後は健康状態に配慮し,適性に繁殖と育成をさらに進め,目標達成に努める.所内で発生しているニホンザルの特異的な疾病はRRSでは認められないので,今後も防御態勢を強化し,第2キャンパス内での発生を阻止する対策をとっている.
(文責:平井啓久)
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