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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2009年度 > 大型プロジェクト

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.40 2009年度の活動

HOPE-GM(先端学術研究人材養成事業)


人間の進化の霊長類的起源:心からゲノムまで

 先端学術研究人材養成事業(Invitation Program for Advanced research Institutions in Japan)は,独立行政法人日本学術振興会が実施した平成21年度限りの事業である.海外の著名研究者および若手研究者を招へいし,国際的に卓越した研究者の指導・監督の下に若手研究者の育成を図るとともに,研究拠点の研究環境の一層の国際化に資することを目的として行われた.国立大学共同利用機関,国私立大学の共同利用・共同研究拠点,世界トップ5拠点(WRI)の中から,人文・社会科学,医学・生命科学,理工学の分野を問わず15程度の事業が選抜されたものである.世界的に著名な研究者を海外から招いて日本の若手研究者と交流するプログラムであり,霊長類研究所は「共同利用・共同研究拠点」のひとつとしてHOPE-GM事業を推進することにした.

 先端学術研究人材養成事業に採択された個別課題には,正式な事業名がない.そこで,2004年3月に開始されたHOPE事業(人間の進化の霊長類的起源)という研究所の全体的な取り組みの一環として位置づけ,「人間の進化の霊長類的起源―ゲノムから心まで」という意味でHOPE-GM事業と命名した.なお,ITP-HOPEやAS-HOPEが若手研究者の日本から海外への派遣であるのに対して,HOPE-GM事業は,海外の著名研究者や若手研究者を比較的長期にわたって日本に招へいする事業である.そういう意味で,まさに相補的な関係にある.

 HOPE-GM事業は,国際連携によって,人間の進化の霊長類的起源に関する学際的研究を推進することを目的とした.進化ゲノム科学,動物行動学,文化霊長類学の分野で世界的に著名な3人の学者を日本にお招きして,日本人若手研究者との交流を通じて先端的・萌芽的研究の創生をめざした.以下の3名の著名な研究者をお招きした.

スバンテ・ペーボ Svante Paabo, 独国,マックスプランク進化人類学研究所Max Planck Institute of Evolutionary Anthropology, Germany
期間: 2010年2月10日から3月10日まで

フランス・ドゥバール Frans de Waal 米国,エモリー大学ヤーキス霊長類研究所リビングリンクス Living Links, Yerkes Primate Center, Emory University, USA
期間: 2010年3月5日から3月29日まで

ウィリアム・マグルー William McGrew 
英国,ケンブリッジ大学レバーヒューム人間進化研究所 Leverhulme Centre for Human Evolutionary Studies, University of Cambridge, UK
期間: 2010年3月18日から4月11日まで

HOPE-GMでは以上の著名研究者に加えて,8名の外国人若手研究者(ポスドクないし大学院生)を同時期に招聘した.彼らはいずれもまる3か月間,日本に滞在した.

アンナ・アルビアッチ・セラーノ Anna Albiach Serrano, Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology 期間: March 16, 2010 - June 14, 2010

マリーニ・サチャック Malini Suchak, Emory University 期間: February 28, 2010 - May 29, 2010

パコ・ベルトラーニ Paco Bertolani, University of Cambridge 期間: February 24, 2010 - May 25, 2010

スザーナ・カルバーリョ Susana Carvalho, University of Cambridge 期間: February 19, 2010 - May 19, 2010

カテライナ・コープス Kathelijne Koops, University of Cambridge 期間: March 12, 2010 - June 10, 2010

ソーニャ・コスキー Sonja Koski, University of Cambridge 期間: March 12, 2010 - June 10, 2010
キンバリー・ジェーン・ホッキングス Kimberley Jane Hockings, Faculdade de Ciencias Sociais e Humanas Universidade Nova de Lisboa 期間: January 28, 2010 - April 29, 2010

チー・シャオガン Qi Xiao-Guang, Northwest University 期間: November 27, 2010 - February 24, 2010

HOPE-GMでは,これらの研究者による一連の講演やワークショップを企画・実行した.

3月 8日:2010 PRI Seminar in Inuyama
3月 21日-23日:2010 HOPE-GM Conference in Kyoto
3月 29日-30日:2010 Koshima Field Station in Miyazaki
3月 31日-4月2日:2010 Yakushima Field Station in Yakushima
4月 6日- 7日:2010 Great Ape Research Institute, Hayashibara in Okayama
4月 8日 -11日:2010 Chimpanzee Sanctuary Uto in Kumamoto

著名研究者3氏のプロフィールは以下の通り.

① スバンテ・ペーボ博士(Svante Paabo)
ドイツ,マックスプランク進化人類学研究所・所長
博士学位取得後,チューリッヒ大学やカリフォルニア大学バークレイ校でポスドクののちミュンヘン大学教授,1997年にマックスプランク進化人類学研究所の創設に加わり初代所長,現在に到る.霊長類研究所創立40周年記念講演をはじめ,隔年で来日してセミナー等を担当している.主要著作は以下の通り.
○Paabo, S: Preservation of DNA in ancient Egyptian mummies. J.Archaeol. Sci. 12: 411-417 (1985).@エジプトのミイラから世界で初めてDNAを採取した.
○Krings, M, Stone, A, Schmitz, RW, Krainitzki, H, Stoneking, M, Paabo, S(代表著者): Neandertal DNA sequences and the origin of modern humans. Cell 90: 19-30 (1997).@絶滅した化石人類であるネアンデルータル人の骨髄からDNAを世界で初めて採取して解読した.
○Enard, W.et al, Paabo, S(代表著者)Humanized version of Foxp2 affects cortico-basal ganglia circuits in mice. Cell 137: 961-71 (2009).@ペーボ自身が発見した人間の言語遺伝子FOXP2をマウスに遺伝子組み込みし,その発声が変化することを世界で初めて実証した.
ペーボ氏は,Leibniz Prize of the German Science Foundation(1992)ライプニッツ賞,ドイツ科学財団が出す最高の栄誉.Ernst Schering Prize, Berlin, Germany(2003)エルンスト・シェリング賞(基礎科学の最高栄誉で世界中が対象となり日本人はただ一人西塚泰美が1995年に受賞),Louis Jeantet Prize for Medicine, Geneva, Switzerland(2005)(ヨーロッパの医学生物学者を対象とした最高の栄誉)を受賞している.またAAAS講演者2009,すなわち「サイエンス」誌の発行元であるアメリカ科学者協会AAASの2009年の特別講演者である.

② フランス・ドゥバール博士(Frans de Waal)
米国,エモリー大学ヤーキス霊長類研究所・教授
博士学位取得後,ウィスコンシン大学准教授を経て1991年からヤーキス霊長類研究所教授,なお1997年に同研究所にリビング・リンクス研究センターが創設され,初代の所長となって現在に到る.第1回の今西錦司・伊谷純一郎記念学術賞の受賞者であり,霊長類研究所創立40周年記念講演をはじめ,ほぼ隔年で来日して深い交流があり,日本各地で講演するとともに,セミナー等をおこなってきた.主要著作は以下の通り.
○de Waal F(1982). CHIMPANZEE POLITICS  Jonathan Cape, London邦訳:政治をするサル.日本を始め10か国語に翻訳され,1998年に改訂版が出て,霊長類学・人類学・行動学の分野でのベストセラー.
○de Waal F (1989). PEACEMAKING AMONG PRIMATES, Harvard University Press, Cambridge, MA.邦訳:仲直り戦略.日本を始め8か国語に翻訳され,ロサンジェルス・タイムス最高出版図書賞を受賞した.
○Brosnan S, de Waal F (2003) Monkeys reject unequal pay. Nature, 425, 297-299.
ドゥバー氏は,アメリカ心理学会Arthur W. Staats Award(2005),アメリカ哲学会会員(2005),アメリカ科学アカデミー外国会員(2004),アメリカ心理学会会長栄誉賞(2001)を受賞し,オランダ王立科学協会会員(1993)である.

③ ウィリアム・マグルー博士(William McGrew)
英国,ケンブリッジ大学,人間進化研究センター・教授
オックスフォード大学で博士学位を取得したのち,英国スターリング大学講師,米国マイアミ大学教授を経て,2005年にケンブリッジ大学,現在に到る.日独米英の先端研究拠点をつなぐ日本学術振興会のHOPE事業の英国側の代表者であり,ほぼ隔年に来日してセミナー等を開催するとともに,ケンブリッジ大学でもマッチングのセミナーを開催している.主な著作は下記の通り.
○McGrew WC (1992) Chimpanzee Material Culture: Implications for Human Evolution. Cambridge University Press, 277 pp.@野生チンパンジーに道具の文化があることを指摘した最初の書物.
○McGrew WC (2004) The Cultured Chimpanzee: Reflections on Cultural Primatology, Cambridge University Press, 248 pp.@文化人類学に対する文化霊長類学の設立を宣言した記念碑的な著作.
○Haslam M McGrew, W et al. Primate Archaeology, Nature, 460, 339-344.@霊長類考古学という新しい研究分野を開拓した.
  マグルー氏は,Osman Hill Medal, PSGB(2008)英国霊長類学会の最高賞を受賞している.アメリカ科学アカデミー外国会員(2005)・スコットランド王立協会会員である.
なお,HOPE-GM事業は,HOPE関連の他の大型プロジェクトと同様に,2009年4月に創設した国際共同先端研究センターが所轄した.実施にあたって,事務職員の宿輪マミ氏の多大な尽力を得た.記して感謝したい.なお,若手研究者の3か月間の滞在記録は,ホームページ上で公開されているので参照されたい.

(文責:松沢哲郎)

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