京都大学霊長類研究所 年報
Vol.40 2009年度の活動
附属施設
国際共同先端研究センター
霊長類研究所は,霊長類に関する基礎研究を総合的に推進するために,国際的かつ先端的な共同研究を推進するための附属施設を2009年(平成21年)4月1日に新設した.名称は,国際共同先端研究センター(英文名称はCenter
for International Collaboration and Advanced Studies in
primatology,略称 CICASP)である.
日本は先進諸国のなかで唯一野生のサルのすむ国であり,霊長類学は日本から世界に向けて発信し続けてきた稀有な学問である.霊長類研究所は,多様な霊長類研究の国内中核拠点(ナショナル・センター)として,約40名の教員,約40名の大学院生,その他の教職員等を擁して,自ら先端的な研究をするとともに,国内の他の研究者と共同して,年間約100件の共同利用研究を推進してきた.
国立大学の法人化に伴い,全国の国立大学附置研究所のあり方が見直され,全国共同利用研究所が廃され,2010年度(平成22)年度から新たに「共同利用・共同研究拠点」という制度が始まる.これを契機として,真に「国際研究所」としての機能の充実をめざしたい.それが本センターである.
これまで日本学術振興会(JSPS)の先端研究拠点事業の採択第1号としてHOPE事業(「人間の進化の霊長類的基盤」に関する日独米英伊の先端研究拠点間の国際連携事業)を平成15年から推進してきた.これがITP-HOPEという新事業名のもと平成25年度まで継続する.同じく,JSPSの21COEに継続してグローバルCOEプログラムでも拠点の一翼を担ってきた.
平成22年度には,20年ぶりの国際霊長類学会の日本招致が決定している.こうした過去の実績をもとに将来を展望し,国内の共同研究だけではなく,国際的な共同研究を推進する国際中核拠点(インターナショナル・センター)となることが,国内外の研究者コミュニティーに対して霊長類研究所が果たすべき責務であると考える.
従来,研究所は2附属研究施設を擁していたが,平成19年度末に1附属研究施設「ニホンザル野外観察施設」を廃した.さらに時限で措置していた流動部門・多様性保全分野を平成20年度末に廃した.そうした組織改廃を背景に,従来の使命を継承しつつ新たに「国際共同先端研究センター」という附属研究施設を平成21年度当初から開設した.将来構想としては,現在シーリング(雇用抑制)で欠員の2名と新規要求2名の教員合計4名と,再雇用・再配置の技術職員等からなる組織である.
霊長類研究所の大学院生・ポスドクの場合,現状ですでに約20%が外国人であり,しかもアメリカ・カナダ・フランスなど先進諸国からも,ミャンマー・インドネシア・スリランカ・バングラデシュ・中国といった国々からもきている.そこで外国人教員を積極的に登用し(教員比率10%超の数値目標をたて),英語で運営される国際的に開かれた組織として,霊長類に関する基礎研究を総合的に推進したい.
現有の共同利用宿泊棟は「国際共同先端研究センター棟」として,平成20年度補正予算で耐震改修・機能向上の工事を実施した.当面その1フロア(11室)に相当する広さを新センターにあてることとした.
新たな組織を附属研究施設として整備することによって,人間を含めた霊長類の心・体・暮らし・ゲノムなど多様な視点からの基礎研究を,国際的な共同研究として推進し,霊長類学の更なる展開を図りたい.
国際共同先端研究センターが設置されたあと,それに呼応するかのように,本学ではグローバル30プログラムによる国際コース(K.U.PROFILE)の設置が決まった.霊長類研究所は,野生動物研究センターと協力して,この英語による教育をおこなうコースを新設した.その結果,外国人教員2名,日本人教員1名,事務職員1名が,特定教職員等として本センターに措置されることとなった.いずれも平成21年度中に選考を終了し,平成22年度に赴任する.フレッド・ベルコビッチ教授,ダイビッド・ヒル教授,足立幾磨助教の3教員と,事務職員の宿輪マミ,である.なお初代のセンター長は所長の松沢哲郎が兼任することとなった.
(文責:松沢哲郎)
2. 交流協定
平成22年3月31日現在
協定国 | 協定先 | 協定先(アルファベット表記) | 協定年月日 | 期間 |
ギニア | ギニア科学技術庁 | La Direction Nationale de la Recherche Scientifique et Technique | 2004/1/28 | 5年間(自動継続) |
ギニア | ボッソウ環境研究所 | L'Institut de Recherche Environnementale de Bossou
(IREB) | 2004/1/4 | 5年間(自動継続) |
大韓民国 | 国立霊長類センター | Korea National Primate Reserch Center (KNPRC) | 2004/12/20
| 5年間(2005.1~) |
釜山大学薬学部 | Pusan National University, College of Pharmacy
(PNUCP) |
釜山大学理学部 | Pusan National University, College of Natural Science (PNUCNS) |
インドネシア | ボゴール農科大学霊長類研究センター | Bogor Agricultural University (Primate Research Center) | 2005/2/24 | 5年間(2005.4.1~) |
インドネシア | アンダラス大学理学部生物学科 | Andalas University (Department of Biology, Faculty of Mathematics and Natural Sciences) | 2005/12/21 | 5年間(2006.4.1~) |
スリランカ | スリジャヤワルデネプラ大学社会学人類学教室 | University of Sri Jayawardenepura (Faculty of Arts, Department of Sociology and Anthropology) | 2005/8/18 | 10年間 |
台湾 | 国立屏東科技大学野生動物保全学研究所 | Institute of Wildlife Conservation National Pingtung University of Science and Technology | 2008/1/18 | 10年間 |
タイ | タイ・王室後援動物園協会 | The Zoological Park Organization, Thailand | 2009/9/16 | 5年間(2009.10.1~) |
日本 | 財団法人名古屋みなと振興財団(名古屋港水族館) | | 2010/7/3 | 定めなし |
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