京都大学霊長類研究所 年報
Vol.40 2009年度の活動
資料
霊長類研究所が所蔵する資試料は,骨格標本,液浸標本,化石模型,遺伝子試料,CT画像などからなり,外部の研究者にも基本的にすべて公開されている.資試料のほとんどはデータベース化されており,資料委員会の許可にもとづいて利用希望者に提供され,研究遂行上の必要に応じて貸し出しもおこなっている.他機関所蔵の資料との交換も受け入れている.
(1) 霊長類骨格資料(表1)
現在,資料委員会のデータベース(PRISK)に登録された霊長類骨格標本は表1の通りである.その数は8,200点を超え,大部分はマカク類を中心とした旧世界ザルの標本である.特にニホンザルの標本は飼育・野生由来個体を合わせて3300点以上を数え、世界的に見ても稀なコレクションである.その他に,新世界ザルの標本も約1,450点保有している.類人猿,および原猿類(+ツパイ)の標本は,それぞれ数十点ずつである.
(2) 霊長類以外の骨格標本(表2)
霊長類以外にも,哺乳類を中心に1,400点近い骨格標本を所蔵している.内訳は,タヌキ,キツネ,ツキノワグマ,テン,イタチ,イノシシ,シカ,カモシカなど日本産哺乳類が多い.日本産の野生哺乳類が減っている現在,これらは貴重な資料である.
骨格標本はすべて研究所新棟4階と本棟地下の骨格資料室において移動式標本架にならべて保管されている.標本は種ごとに分類され,種内では標本番号にしたがって配列されている.利用希望者は,資料室に設置されたコンピューター上で骨格標本データベース(PRISK-Z)を検索することができる.
(3) 液浸標本(表3, 4)
本棟地下及び栗栖地区の液浸資料室に各種霊長類のフォルマリンもしくはアルコールで固定された液浸標本が800点以上保管されており,共同利用研究者などを対象に,研究・教育目的で提供されている.データベース(PRISK)に登録された霊長類標本は表3の通りである.このように大規模な液浸標本資料は稀有であり、世界的にみてもなかなか利用機会が得られない貴重なコレクションである.霊長類以外の液浸標本も50点ほどある(表4).現在全所蔵標本のデータベース化が進められている.
(4) 化石模型
人類および中新世ホミノイドを中心に495点の化石模型を所蔵し、データベース(PRICAST)に登録して研究利用に供している.
(5) 霊長類遺伝子関連試料
平成21年度より大型類人猿ネットワーク(GAIN)の情報を通じて譲渡を受けた試料(チンパンジー臓器数個体分)や、研究所内で多重利用の対象となった試料の一部(旧世界ザル、新世界ザル等)を管理し、共同利用研究等に提供している.RNAlater処理試料や凍結試料が主であるが、譲渡契約等の関係から原則として利用は所員と共同利用研究員に限定しているので、利用希望者は関係所員に問い合わせてください.現在,データベース化を進めている.
(6) CT画像
平成21年度にCT撮像装置が導入されたのを期に、所蔵標本のCT画像データ化を進めている.管理運用内規に基づいて、画像データをデータベース化して研究利用に供する準備を進めている.
(7) その他
以上の他に,被毛標本数十点が保有されている.
霊長類研究所資料委員会は国内外の多くの研究者がこれらの資試料を利用して研究を進めることを希望しており,利用希望者の要請にできるだけ応えたいと考えている.そのため,資試料の充実に努めるとともに,上記のように所蔵資試料のデータベース化など利用環境の整備をおこなっている.新しい資試料の作製,受け入れを積極的におこなっており,毎年,その数は増加している.資試料を一層充実させるため,野外調査などの際での標本資料の採集にご協力くださるようお願いする.
骨格・液浸標本の利用許可については,非破壊的な使用目的の場合は簡便な手続きで利用できる.標本の破壊が必要だったり破損の恐れのある研究利用もできるが,その際は資料委員会への充分な説明に基づく審査を受ける必要がある.また,大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)等の情報により、貴重な資試料を動物園等の飼育施設から譲渡していただいているので、利用規約や契約等の遵守をお願いする.
備考:資料委員会では,霊長類研究所資料室で登録・保管する他,資試料に関するデータのみの登録も受け付けています.あるいは,管理者の移籍・退職などによって管理困難となった標本・資料の取り扱いについても相談を受けます.霊長類研究所資料委員会までご連絡ください.
(平成22年度連絡先:江木直子
siryo [AT] pri.kyoto-u.ac.jp).
(文責:西村剛)
表1
表2
表3
表4
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