English report
AS-HOPE 事業報告
事業番号:AS-23-MA10
マレーシア・サバ州の自然保護区における野生動物研究研修
報告者:田島 知之
期間:2011/6/20 - 2011/7/3
ボルネオ島のマレーシア領サバ州には、低地の熱帯雨林のみでなく、非常に多様な自然環境と野生動物が分布している。特に、マリアウベイスン、インバックキャニオンの2つの自然保護区には、環境破壊が進行するボルネオ島において貴重な環境が残されており、保全のための研究が必要とされている。今回、この2つの自然保護区において野生動物研究を今後推進するために、野生動物研究に関する野外研修を行うとともに、京都大学霊長類研究所とサバ財団およびサバ州野生生物局との研究協力協定締結式、およびその記念ワークショップに参加するため渡航を行った。 申請者はこれまで、サバ州内の低地熱帯雨林帯においてオランウータンの野外研究を行ってきた。これまで経験したことの無い、高地林や貧栄養林を含めた多様な自然環境を横断的に視察することにより、野生動物と生息環境の関係性についての見識を深め、オランウータンを対象とした将来の研究活動に役立てることが本研修に参加した目的である。
ボルネオ島マレーシア領サバ州において2か所の自然保護区を視察した。6月21日から24日までは、インバックキャニオン自然保護区を視察した。ヒゲイノシシ、スイロク、カワウソの痕跡や、テナガザル、ジャコウネコの一種を観察することができた。オランウータンに関しては、各所に独特の体臭が漂う場所があり、おそらく少数であろうが生息している様子がうかがえた。6月25日から28日までは、マリアウベイスン自然保護区を視察した。ここでは保護区内のキャンプに宿泊し、夜間に野生のヒゲイノシシを見ることができた。また車道上には、野生のウシであるバンテンの糞が多く見られた。おそらく早朝、森の深部から開けた土地に遊動しているものと考えられる。低地熱帯林とは全く景観の異なる高地のヒース林(貧栄養林)では、多くの木本の根元に苔が繁茂していた。これは保水性の低い砂地の土壌特性に対応し、乾燥を防ぐ生育形態であると考えられる。また同地域では多くのウツボカズラが自生していた。そのうちの一種のウツボカズラの中には、カエルが生息しており、産卵していることを確認できた。様々な植生や種間関係を観察することにより、熱帯環境の多様性に対する理解を深めることができた。
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