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English report

AS-HOPE 事業報告

事業番号:AS-23-018

タンザニアの疎開林に棲息する野生動物の行動と生態に関する研究

報告者:飯田恵理子

期間:2011/8/8 - 2011/12/21

 近年、初期人類進化の舞台が疎開林の環境に似ていたことが指摘されている。こうした観点から、タンザニアの疎開林でチンパンジーの研究がおこなわれているが、初期人類の生活環境の復元や進化過程を考える上では単一の種だけではなく、同所的に棲んでいる他の哺乳動物や植生について知ることが不可欠である。そこで本研究では、チンパンジーが棲息するタンザニアの疎開林(ウガラ地域)おいて哺乳類が多く生息する岩場周辺を中心に哺乳動物相の基礎的なデータを収集するとともに、とくに岩場の主要な生息動物であるブッシュハイラックス(Heterohyrax brucei)の行動と生態を明らかにすることを目的とした。これまでの申請者の研究からブッシュハイラックスは昼行性であるが、調査地域の疎開林では夜間も活動を行っていることや、先行研究では巣である岩場の端から50m以上離れるような長距離移動は稀だとされているが、疎開林では50mを超える移動を頻繁に行っていることが示唆される結果を得ている。疎開林の哺乳動物相を調べ、さらにブッシュハイラックスの生態について詳細に調べるためには、実際に対象動物が生息している派遣先での現地調査が不可欠であった。

 申請者は、2011年8月~12月(乾季後半から雨季前半)にウガラ地域において調査を行った。 哺乳動物相の全体的把握のために、週に1度の糞センサスをおこない、トランセクト上の哺乳動物の糞の位置を記録した。直接観察についても可能な限り行った。また岩場に自動センサーカメラを設置し生息する哺乳動物相の把握を試みた。これらの結果から、ウガラ地域においてこれまで生息の確認されていなかった哺乳類種を確認することができた。 ブッシュハイラックスの調査では巣穴・ため糞の場所の特徴を調べ、乾燥糞サンプルを採取した。またGPSを用いて巣穴やため糞場などの位置情報を集め、各岩場周辺の詳細な植生調査をおこなった。巣の出入り口に自動センサーカメラを設置し、巣を利用する個体や活動時間、その他の哺乳類の有無を調べた。その結果、ブッシュハイラックスはこれまで昼行性と言われていたが、夜間も頻繁に活動していることが明らかになった。また、他種の哺乳類との巣穴の共有が確認された。また、今回の調査ではラジオテレメトリーを用いた個体追跡調査を行った。現在、さらに詳細な分析を進めている。


岩の上で休むハイラックス


岩の隙間から出てきたラーテル

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