English report
AS-HOPE 事業報告
事業番号:AS-22-G003
高次脳研究のための視察とEMBO会議への参加
報告者:鹿島 誠
期間:2010/09/23 - 2010/10/02
派遣研究者は高次脳の成り立ちに興味がある。そこで、いきなり複雑な脳を直接調べるのではなく、進化の時系列に沿って各動物の神経系の形態や機能の変化を学び、脳の複雑化のプロセスを再現することで高次脳の成り立ちを理解することを試みている。派遣研究者はプラナリアの脳を研究しているので、集中神経系を持つ以前の動物を観察することと、プラナリアに近い担輪動物の脳の構造と行動を観察すること、さらにそれよりより複雑化した種々の脊椎動物の脳について新たな知見を得たいと考えた。そこで、ドイツのヒドラ、ネマトステラ、ゴカイの脳研究をしている研究室を訪問し、野外環境を再現した研究室で、それらの動物の神経系の構造と行動を観察した。また、ポルトガルでのEMBO会議で発生の話題を通じて種々の脊椎動物の脳の再生と機能について全世界の科学者から新たな知見を収集することを行った。
この視察の目的は、高次脳の機能に関する研究を進化の道筋に沿って考えていくうえで必要な知識を得ることである。最終的にはヒドラから類人猿への脳の進化に関する見識を深め、研究活動に還元していきたい。
まず、ハイデルベルグ大学のHolstein研究室を訪問した。ここで私は散在神経系をもつHydra
magnipapillataとNematostella vectensisを観察し、二種の行動・神経について学んだ。Hydra
magnipapillataは散在神経しか持たないのに対して、Nematostella
vectensisは口の周りに神経が集中しており、脳の起源と考えられている。
次にEMBLハイデルベルグ支部のDetlev Arendt研究室を訪ね、Platynereis
dumeriliiについて学んだ。オスがメスの周りを回る性行動は衝撃的だった。Platynereis
dumeriliiは集中神経系を持つために性行動といった高次行動ができるのであろう。
最後に私はEMBO会議に参加し、Hydra magnipapillataの神経についてのポスター発表、ゼブラフィッシュやイモリ、マウスの脳と行動についての口頭発表を聞き、また、世界中の研究者たちと議論を行い、非常に多くの知見を得ることができた。
今回の視察を通して、私は高次脳の機能に関する研究を進化の道筋に沿って研究していくうえで必要な知識を持つことができた。
Hydra magnipapillata
Nematostella vectensis
Platynereis dumerilii
EMBL Heidelberg
AS-HOPE Project<>
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