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English report

AS-HOPE 事業報告

事業番号:AS-22-025

飼育霊長類の動物福祉にかんする応用行動学的研究

報告者:小倉 匡俊

期間:2010/08/02 - 2010/08/16

飼育下の野生動物の福祉に対して配慮することは、動物の飼育に関係する者の果たすべき責務である。日本でも近年は飼育野生動物の福祉に配慮し、環境エンリッチメントにも積極的に取り組んでいる動物飼育施設が増えてきている。しかし、その元となる知見の多くを海外の飼育施設に頼っているのが現状であり、特に研究としての動物福祉の取り組みについて海外の実例に触れることは今後の研究を推進する上で大いに役立つと考えられる。また、霊長類の多くは社会性に富んだ動物種だが、日本の多くの施設では限られた個体数で飼育されており、群れとして適切な状態だとは必ずしも言えない。一方で、海外には十分な個体数により適切な群れの状態が維持されている飼育施設が多く存在する。こうした施設での群れ管理の方法は、飼育霊長類の福祉に配慮するうえで貴重な知見である。そこで申請者は国際学会への参加と研究発表、および動物飼育施設の視察をおこない、動物福祉の取り組みについての情報収集をおこなった。

動画呈示を用いた環境エンリッチメントの評価と環境に求める要因の検討について個別ケージ飼育ニホンザルを対象としておこなった研究の成果を、スウェーデン・ウプサラで開催された第44回国際応用行動学会のポスターにて発表した。家畜を対象とした動物福祉にかんする研究をおこなう研究者が主に集う学会であり、新しい視点からの福祉研究に対する貴重な知見を入手することが出来た。
学会の後には、スウェーデンのコルモーデン動物園、オランダのアッペンヒュール、ドイツのハーゲンベック動物園を視察し、動物園における霊長類の個体群管理と動物福祉に対する配慮の取り組みについて情報収集をおこなった。各動物園に共通して、大型類人猿の個体群管理がとてもうまくいっており、日本と比較して大きな個体数での群飼育をおこなうとともに、繁殖にも成功していた。また、オランウータンの群れ飼育が標準となっており、単独飼育が主である日本の飼育形態との違いを目の当たりにした。アッペンヒュールでは小型霊長類を放し飼いで飼育すること、ハーゲンベックでは来園者に給餌を許可していることに、これまでの常識を覆される思いだった。


poster presentation @ ISEA 2010


squirrel monkeys @ Apenheul


orangutans @ Tierpark Hagenbeck

AS-HOPE Project<>