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夜間視力上昇をもたらす視細胞内微小レンズをヨザルは 15 My 以内の期間で獲得した
Tanabe H, Kusakabe K, Imai H, Yokota S, Kuraishi T, Hattori S, Kai C, *Koga A
概要

ヨザルという名前のサルがいます。漢字では夜猿。

真猿類(しんえんるい)とよばれる一大グループがあり、ヒトはここに含まれます。ヒトに近いチンパンジーやゴリラも。そしてテナガザル・ニホンザル・マントヒヒ・マーモセット・リスザルなども、真猿類。この連中、みんな昼行性です。ただし、例外が1つ。それがヨザル。

ヨザルも、祖先は昼行性でした。それが夜行性になりました。移行に伴い、目が大きくなりました。そして変化は目の細部にも。

視細胞は、網膜の中にたくさん並んでいて、光を感じる細胞。ネズミなどの夜行性の哺乳類は、視細胞の一種である桿体(かんたい)細胞の内部に、微小レンズをもっています。目全体のレンズである水晶体とは別物です。弱い光を効率よく捕らえて、夜間視力を高めます。ヨザルにこの微小レンズがあることを先の研究で確認し、その成分まで突き止めていました。

今回は、この微小レンズを獲得するのに要した時間を、調べました。マーモセット(昼行性)とヨザル(現在は夜行性)が共通祖先から分岐したのが、約 20 My 前(My = 100万年)。なので微小レンズの獲得の開始は、それより後。

さて、終わったのはいつか。この見当をつけるために、以前の研究で微小レンズがあるとわかっていたアザラヨザル(南アメリカ大陸東部)に加え、コロンビアヨザル(南アメリカ大陸北西部)の目を、今回調べました。そして微小レンズがあることが、確認できました。この2種が分岐する前に、微小レンズの獲得は完了していたことになります。分岐したのは、約 5 My 前。

以上から、獲得にかかった時間は、最大で 15 My(20 My - 5 My)となります。

これが結論ではありますが、これ以上ではないという意味であって、実際にはこれよりはるかに短い時間で獲得した可能性は、十分にあります。

書誌情報

The heterochromatin block that functions as a rod cell microlens in owl monkeys formed within a 15 million year time span
Genome Biology and Evolution (2021), doi: 10.1093/gbe/evab021
2021/02/01 Primate Research Institute