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サル類等の鼻腔内温度と湿度の数値シミュレーションモデルの開発
西村剛、兼子明久、森太志、松澤照男
概要
本研究では、サル類で吸気の温度や湿度が鼻腔内でどう変化するのかを数値流体力学シミュレーションでより正確に推定する手法を開発しました。鼻腔は、吸気の温度や湿度を調整して、肺に安全な状態になった空気を送る役割を担っています。ヒトを含む霊長類の鼻腔は、それぞれの種が生息する温度・湿度環境に適応して形態学的変化を遂げていると考えられています。それを検証するためには、サル類の鼻腔内の温度や湿度分布を知る必要があります。しかし、ヒト以外の動物で、それらを実測するのは技術的にひじょうに難しく、研究が進みませんでした。数値流体力学(CFD)シミュレーションは、それを解決する有力な手法です。ヒトでは様々な研究で用いられています。CFDシミュレーションは、温度や水分の交換と言った物理的な事象の計算モデルと、鼻腔の解剖組織学的特性を反映する計算モデルを組み合わせて計算されます。本研究では、ヒト用開に発されたシミュレーションモデルを用いて、後者の解剖組織学の計算モデルを体重で補正してサル類でも正確に推定できるようにする手法を検討しました。ニホンザルの鼻腔内温度を実測し、CTで頭部をスキャンして鼻腔形態の3Dデジタルモデルを作成してシミュレーション計算し、体重補正による効果を検証しました。結果、ひじょうに簡便な体重補正によって、より正確なシミュレーション結果が得られることを確認しました。本手法は、これまで鼻腔内の温度・湿度が実測できなかったサル類にも応用可能で、様々な気候環境へと進出したサル類での鼻腔の形態進化とその機能的意義を明らかにする有力な手法となると期待されます。 ニホンザルにおける鼻腔内の温度分布のシミュレーション結果
書誌情報
Futoshi Mori, Akihisa Kaneko, Teruo Matsuzawa & Takeshi Nishimura*. Computational fluid dynamics simulation wall model predicting air temperature of the nasal passage for nonhuman primates, American Journal of Physical Anthropology. 10.1002/ajpa.24221 Takeshi Nishimura & Akihisa Kaneko (2019) Temperature profile of the nasal cavity in Japanese macaques, Primates 60: 431-435. 10.1007/s10329-019-00741-0 2021/01/28 Primate Research Institute
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