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ニホンザルにおけるサルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)高感染率の原因を探る
村田めぐみ、安永純一朗、鷲崎彩夏、関 洋平、倉光 球、Wei Keat Tan、Anna Hu、大隈 和、浜口 功、水上拓郎、松岡雅雄、明里宏文
概要
サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)は、成人T細胞白血病の原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)と同じデルタレトロウイルス属に分類され、そのウイルスゲノムの相同性も90%程度と非常に高い。興味深いことに、HTLV-1は日本人の陽性率は1%以下であるのに対して、ニホンザルは高い割合(60%以上)でSTLV-1に感染していることが報告されているが、その感染様式に関する詳細は不明であった。この原因を明らかにするべく、ニホンザルにおけるSTLV-1の感染動態調査を行った。 当初、ニホンザルのSTLV-1高感染率に関して、「一部の感染個体においてSTLV-1に対する液性免疫が不応答となり高いSTLV-1 PVLとなることで、結果としてウイルススプレッダー(媒介個体)となるのではないか?」とする仮説を考えた。実際、以前霊長研ニホンザルにおいて伝染性血小板減少症のアウトブレークを引き起こしたサルレトロウイルス4型(SRV-4)は、ニホンザルに持続感染した際に一部の個体で液性免疫不応答によるスーパースプレッダーとなった例を我々は経験している。しかしSTLV-1感染細胞率およびSTLV-1特異的な抗体価の定量解析の結果から、STLV-1に対する液性免疫不応答により高い感染細胞率を示すような例は認められず、ウイルススプレッダーの可能性は否定された。 その後のSTLV-1感染における年齢相関、レトロスペクティブな経年感染動態等の解析結果から、母子感染に加えて個体間(水平)感染が高頻度に生じていることが示され、このことがニホンザルにおけるSTLV-1高感染率の原因と考えられた。 2020/06/24 Primate Research Institute
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