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スラウェシマカクにおける苦味受容体TAS2R38の多様化
Functional divergence of the bitter receptor TAS2R38 in Sulawesi macaque Kanthi Arum Widayati #, Xiaochan Yan #, Nami Suzuki-Hashido, Akihiro Itoigawa, Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Fahri Fahri, Yohey Terai, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai*
#共同筆頭著者 概要
インドネシアのスラウェシ島には7種のマカクザルが種分化して生息している。それぞれの生息地域は気候や植生も異なるため、種分化には食行動などの環境適応が関係していると考えられる。我々は苦味受容体TAS2R38の多様性を4種のスラウェシマカク(Macaca nigra, M. nigrescens, M. heki, and M. tonkeana)で比較し、行動実験とあわせてその機能を検討した。Macaca nigra, M. nigrescensではTAS2R38が偽遺伝子化した個体が存在していて、行動実験でもTAS2R38のリガンドであるPTCを拒絶しなかった。M. hekiではすべての個体がPTCを拒絶し、TAS2R38遺伝子にも目立った変異はなかった。興味深いことにM. tonkeanaではPTCを拒絶する個体と拒絶しない個体が混在し、TAS2R38遺伝子は見かけ上機能的なタンパク質をコードしているように見えた。TAS2R38タンパク質の機能を培養細胞を用いて検討した結果、M. tonkeanaでは3カ所の変異をもつ遺伝子からコードされるタンパク質がPTC低感受性を示した。この結果はヒトのPTC感受性の個人差が3カ所のアミノ酸残基の変異によることと類似している。このようにスラウェシマカクは共通祖先から分岐する際に、種特異的な遺伝子変異を伴って食性を変化させていることが示唆された。
2019/08/21 Primate Research Institute
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