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ワンバのボノボ(Pan paniscus)の集団間の出会い―果実量が最大の時期に出会いが増える
坂巻哲也、柳フンジン、戸田和弥、徳山奈帆子、古市剛史
概要
霊長類の集団間交渉は被攻撃的なものから非常に攻撃なものまで多様である。食物資源と繁殖力のあるメスの存在は、他の集団を引きつけるとともに、防衛のための攻撃を引き起こす。異なる集団の個体が平和的に混ざり合うことは、まれではあるがいくつかの霊長類で報告があり、ボノボ(Pan paniscus)もその一種である。ボノボが集団間の出会いで平和裏に混ざり合う様子は、かつて餌づけが行われていた場所とそれ以外の場所の両方で観察されてきたが、餌づけが頻繁な出会いに影響していた可能性はあった。 コンゴ民主共和国にあるボノボの調査地ワンバでは、1996年以降、餌づけは行われておらず、2010年以降、隣接し合う3集団(E1, PE, PW)の人づけに成功し、4集団目(BI)の人づけも進みつつある。本研究では、PE集団が出会う他の3集団(PW, E1, BI)との出会いについて、2010年から2015年のデータを用い、とくに果実量の変動と性皮最大腫脹のメスの存在が集団の出会いの生起に影響するかを検討した。 分析の結果、まずPE集団は平均して月に7.1日程度、他の集団と出会っていた。最大で4集団が同時に一か所で出会うことが観察された。出会いが頻繁な時期には、数日から最大で12日に渡って、複数集団が出会いを繰り返しながらゆるやかなアソシエーションをつづけていた。月毎の出会い頻度には季節的な変動があり、とくに果実量が最大になる時期にもっとも頻度が高い傾向が確認された。このことは、食物競合の低下が集団の出会いの増加と関係することを示唆している。また果実量が多いときには、性皮最大腫脹のメスの多少にかかわらず出会いは起こるが、果実量が比較的少ないときは、性皮最大腫脹のメスが多いときの方が集団間の出会いが起こりやすい傾向がみられた。食物競合と性皮腫脹メスの両方が、ボノボの集団間の出会いの生起に影響していることが確かめられた。 図は、2010年11月から2015年12月の期間、ボノボの調査地ワンバのPE集団が他の集団(PW, BI, E1)と出会った月毎の日数の変動を示している。年による変動はあるものの、概して7月から9月あたりに、集団間の出会いはよく起こる。最大で4集団が同時に出会うことも確認された。
書誌情報
International Journal of Primatology pp 1-20 DOI https://doi.org/10.1007/s10764-018-0058-2 http://link.springer.com/article/10.1007/s10764-018-0058-2
2018/09/25 Primate Research Institute
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