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リーフモンキーだって種子散布する
Neglected seed dispersers: endozoochory by Javan lutungs (Trachypithecus auratus) in Indonesia 辻大和, Jenni Indah Dwi Pajar Ningsih, Shumpei Kitamura, Kanthi Arum Widayati, Bambang Suryobroto
概要
「コロブス類 = 葉食専門のサル」 という認識が霊長類研究者に根付いている。しかし最近の研究で、多くのコロブス類で果実食が見れることが示されており、ゆえにコロブス類は、種子散布をはじめとする、果実食を通じた生態学的サービスに影響していると予想される。われわれはインドネシアに生息するジャワルトン(Trachypithecus auratus)を対象に、(1)糞に含まれる種子の量と多様性、(2)散布距離、(3)発芽率を評価し、それを同所的に生息するカニクイザル(Macaca fascicularis、マカク類は主要な散布者として知られる)の値と比較した。 調査期間中に採集したルトンの糞の54%に種子が含まれ、これはカニクイザルの62%に匹敵する高い値だった。ルトンの糞から出現した植物種数は少なくとも6種あり、これはカニクイザルの19種より少なかったものの、ひとつの糞に含まれる種子の数はむしろルトンのほうが多かった。なお、ルトンの糞に含まれる種子の多くはイチジク類(Ficus spp.)などの小型種子だった。 野外調査と動物園での給餌実験を組み合わせてルトンの散布距離を推定したところ、平均51-100m、最長299mであり、同所的に生息する他の果実食者の散布距離(数百メートル~数キロメートル)より短かった。最後に、ルトンの糞に含まれるイチジク類の発芽率は、果実から取り出した種子(コントロール条件)の発芽率よりも低かったが、カニクイザルの糞に含まれる種子の発芽率との間では有意差がなかった。 以上の結果より、ルトンによる散布効率は同所的に生息する他種よりも低いことが示唆された。しかし、森林におけるコロブス類のバイオマスの大きさを考えると、小型種子の散布においては、ルトンが重要な役割を果たしていると考えられる。種子散布に限らず、生態学的な現象を正しく評価するには、「果実食者」「葉食者」といった先入観から脱却することが必要である。 2017/04/12 Primate Research Institute
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