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ボルネオ・サル紀行―妻と一緒に、テングザル研究

松田一希

内容 

北海道大学大学院の教授として長く教育と研究に携わってこられた東正剛先生の退官を記念して編集、出版された書である。書名のパワー・エコロジーは東研究室の研究姿勢を象徴する造語であり、先生の指導方針を端的に表している。しいて訳せば、力業の生態学、である。本書は、この力業の実績記録となっている。本書は2部構成になっており、第一部では、調査地が全世界に及ぶことを示す狙いで、院生時代に、中米、ボルネオ、オーストラリア、アフリカ、南極へと散っていった教え子の奮闘記が綴られている。第二部では、対象生物と研究課題が多種多様であることを示す狙いで、藻類からクマムシ、昆虫、魚、鳥、はてはエゾシカまで、様々な生態学的観点からの研究が綴られている。 

仮説・検証型の研究が推奨される現在にあって、未知の領域に挑む発見型の研究は敬遠されがちである。確固たる成果が見通せないことに加え、人一倍の力業を必要とする研究ならば、なおさらである。しかし、研究の原点は「面白そうだから」、「楽しそうだから」、「知らない土地に行ってみたいから」というような単純な思いと、研究にかける情熱にあるはずである。そうであるならば、パワー・エコロジーの精神は一般性をもちうると言え、研究者を目指す若い人の精神的支柱としてだけでなく、現役の教員にも指導上の指標となりうるのではないか。ここにこそ、一研究室の実践記録にすぎない本書の意義があると信じたい(まえがきより抜粋)。 

山極寿一・京都大学大学院理学研究科教授(推薦文)「サイエンスの面白さを教えてくれるのは知識ではなく人である」 

序章 生態学の躍進 ─ その目指すもの (大原雅) 

第一部 世界中にフィールドを求めて

1 アリの農業とヒトの農業 ─ 南米で進化!? (村上貴弘) 

2 ボルネオ・サル紀行 ─ 妻と一緒に,テングザル研究 (松田一希) 

3 アフリカで自然保護研究の手法を探る (小林聡史) 

4 豪州蟻事録 ─ 大男,夢の大地でアリを追う (宮田弘樹) 

5 土壌動物学徒の南極越冬記 (菅原裕規) 

第二部 多様な生物を求めて 

6 海産緑藻類の繁殖戦略 ─ 雄と雌の起源を求めて (富樫辰也) 

7 いじめに一番強いモデル動物,ヨコヅナクマムシ (堀川大樹) 

8 真社会性と単独性を簡単に切り替えるハチ,シオカワコハナバチ (平田真規) 

9 アルゼンチンアリの分布拡大を追う (伊藤文紀) 

10 潜葉性鱗翅類で何ができるか ─ 独創性との狭間のなかで (佐藤宏明) 

11 幻の大魚イトウのジャンプに導かれて ─ 絶滅危惧種の生態研究と保全の実践記録   (江戸謙顕) 

12 モズとアカモズの種間なわばり ─ 修士大学院生の失敗と再起の記録 (高木昌興) 

13 タンチョウに夢をのせて (正富欣之) 

14 エゾシカの遺伝型分布地図が語ること ─ 野生動物管理に貢献する保全遺伝学   (永田純子) 

http://kaiyusha.wordpress.com/

 

海游舎 パワー・エコロジー(佐藤宏明、村上貴弘 共編 pp454) pp. 43-76(2013)

MAR/7/2013

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