辻大和(社会進化分野助教)の著作が、
平成24年度から採用される中学校国語(光村図書)の教材になりました。
シカの『落穂拾い』―フィールドノートの記録から p118-125 教科書に掲載したのは、宮城県の金華山島でニホンザルの食物の調査中に、サルが樹上から落とす植物を地上のシカが採食するという行動をたまたま観察したのが
きっかけではじまった、両者の関係についての研究内容です。 これまで、樹上で暮らすニホンザルと地上で暮らすニホンジカは互いに関係がないと 考えられてきましたが、われわれの研究により、シカにとってサルは、食物の乏しい時期に栄養価の高い食物を樹上から落としてくれる、ありがた
い存在だという可能性が示されました。 似たような観察例が、その後日本各地から報告されるようになりました。とくに鹿児島県の屋久島では、シ カの群れが、樹上を食べ歩くサルに一日中ついて回るのだそうです。海外でも、私が東南アジアやアフリカの各地でサルを見ていると、サルのいる
木の下にシカやレイヨウがやってきて、落ち穂ひろいをはじめることがあります。 霊長類と地上で暮らす哺乳類の間の関係というのは、けっして偶 然のできごとではなく、同じ環境で暮らす両者の、ごく日常的なひとコマなのでしょう。二種の動物が、落ち穂拾いの際に互いに相手をどう思いな
がらふるまっているのかを想像すると、楽しくなります。 本文にも書いたように、サルがシカの生活にどの程度貢献しているのかは、まだ明らかに なっていません。今後の研究で、両者の関係の意義がより明確になってゆくことでしょう。
APR/2/2012
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