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The perception of self-agency in chimpzanzees(Pan troglodytes).

Kaneko, T. and M. Tomonaga

京都大学霊長類研究所の兼子峰明と友永雅己は、チンパンジーが「行為の主体感」を形成する認知機能をヒトと共有していることを、実験心理学の観点から明らかにし、英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に発表しました。

 「行為の主体感」とは、ある行為を「自分自身で行っている」、「自分が行為の主体である」といった感覚を意味します。 例えば、TV ゲームを友人と行う場合など、どのキャラクターを自分が操作しているのか分からなくなる場合がありますが、少し続けていれば自分の操作している対象がわかり、「自分の思った通りに動いている」という感覚が成立します。このような感覚を行為の主体感と言います。このような認識が成立する背景には、自分の行為の結果に対する予測と実際の結果を比較照合する情報処理過程が重要だと考えられています。「右にうごく」と思うと同時に実際に右に動くことで、主体感が形成されます。行為の主体感は、ヒトが自己概念を形成するうえで重要な要素であると考えられています。また、統合失調症にみられる「させられ体験」などは、この能力に関連する疾患ではないかと考えられています。 

我々は、上記のような場面を実験室にて再現することで、チンパンジーが自己の行為対象を認識するメカニズムをヒトと共有していることを明らかにしました( 写真参照)。トラックボールという装置でコンピューター画面上のカーソルを操作することをチンパンジーに訓練しました。画面にはチンパンジーの操作できるカーソルと、コンピューターで操作されるカーソルを呈示しました。2 つのカーソルの外見は同一で、コンピューター側のカーソルは過去に同じチンパンジーが操作した軌跡を再生しました。したがって、どちらのカーソルをチンパンジーが実際に操作しているのか第三者にはわからない場面となります。しかし、操作している本人は、意図した運動と実際の運動を照らし合わせることで、自分がどちらを操作しているのか認識することができます。我々 はこのような場面で、チンパンジーが正しく自己の操作対象を区別できることを示しました。 

これまでチンパンジーでは鏡に写った自己像を自己と認識する「鏡像自己認識」と呼ばれる現象が知られており、何らかの自己認識が成立していると考えられていました。今回の我々の研究では、チンパンジーが持つ「自己」の新たな側面を浮き彫りにし、より具体的な心理メカニズムを明らかにしたといえます。ヒトを含む現生の霊長類において、「行為の主体感」に関する種間での類似点・相違点を明らかにしていくことは、我々ヒトの形成する自己概念の進化 的背景の理解につながると考えられます。

 Kaneko, T. and M. Tomonaga (2011). "The perception of self-agency in chimpzanzees(Pan troglodytes)." Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences.

 http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2011/04/27/rspb.2011.0611.abstract

Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences.

The ability to distinguish actions and effects caused by oneself from events occurring in the external environment is a fundamental aspect of human cognition. Underlying such distinctions, self-monitoring processes are often assumed, in which predicted events accompanied by one's own volitional action are compared with actual events observed in the external environment. Although many studies have examined the absence or presence of a certain type of self-recognition (i.e. mirror self-recognition) in non-human animals, the underlying cognitive mechanisms remain unclear. Here, we provide, to our knowledge, the first behavioural evidence that chimpanzees can perform self/other distinction for external events on the basis of self-monitoring processes. Three chimpanzees were presented with two cursors on a computer display. One cursor was manipulated by a chimpanzee using a trackball, while the other displayed motion that had been produced previously by the same chimpanzee. Chimpanzees successfully identified which cursor they were able to control. A follow-up experiment revealed that their performance could not be explained by simple associative responses. A further experiment with one chimpanzee showed that the monitoring process occurred in both temporal and spatial dimensions. These findings indicate that chimpanzees and humans share the fundamental cognitive processes underlying the sense of being an independent agent. 

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2011/04/27/rspb.2011.0611.abstract

MAY/09/2011

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