世界で一番美しいサルの図鑑
内容紹介
サルってこんなに美しい!
世界屈指の研究機関である京都大学霊長類研究所が全面監修した今までにない画期的なサルの図鑑!
「ヒトはどこからきて、どこにいくのか」
人間のルーツを探るには、彼らのことを知る必要がある……
われわれヒトも含まれる「霊長類」は、今世界中に約440種いるといわれています。
本書では「南米」、「アジア」、「マダガスカル」、「アフリカ」の4つの地域に分けて世界中のサル約130種を紹介。
手のひらサイズの「ピグミーマーモセット」や、目が大きくて可愛い「メガネザル」から
まるで人間のような社会をつくる「ゴリラ」や「チンパンジー」、「ボノボ」まで
サルは不思議な姿かたちや、奇妙な生態といった、私たちの想像を超えた面白い多様性をもっています。
しかしこれらに驚きつつも、それぞれにどこか親近感があり、他人事とは思えない……
それはほかの動物にはない特徴、「ヒト」にもっとも近縁だからなのです。
選び抜かれた美麗な写真の数々と、読み応えのある解説によって紹介される
ヒトへとつながる霊長類研究の集大成がここに! !
【面白い姿、生態が沢山! 】
「手足の先だけオレンジ」なアカテタマリン、「妖怪油すまし」のような姿のアカウアカリ
「謎の凸凹頭」をもつヒゲサキ、「哺乳類には珍しく有毒」なスローロリス
「目が大きすぎて動かせない」メガネザル、「孫悟空のモデルだと間違えられた」キンシコウ
「毎朝夫婦でデュエットをする」テナガザル、「猛毒の竹を食べ続ける」ジェントルキツネザルなど…
ヒトにもできないことをする凄いサルから、どこか残念なサルまで
一口に「サル」ではまとめきれない多様性が目白押しです!
【美麗な写真の数々で、眺めるだけでも楽しい! 】
「全身が鮮やかなオレンジ色」のゴールデンライオンタマリン、「5色もの体毛をもつ」美しすぎるアカアシドゥクラングール
「なぜか赤ん坊だけが鮮やか」なシルバールトンやダスキールトン、「真っ赤で真っ青な顔をもつ」マンドリルなど…
動物園でも見られない美しい毛並みやこの色合いは野生やそれに近い環境だからこそ観ることのできるもの!
【ただ「面白い」だけでは終わらない、最先端の情報が満載!
】
サルたちの姿や生態については、実際に現地で調査研究していた研究者が解説。
広大な森に響くかれらの鳴き声や、細かな動き、かれら特有の社会のつくりなど
地道な調査によってのみ得られた臨場感のある内容は、読み物としても楽しめます!
また、霊長類を語る上で外せないかれらの「形態」、「進化」、「社会生態」、「保全」についても詳しく解説。
最新の分類研究による「学名」や「分類」はもちろん、多様性をもつ「食性」や「生息環境」についても全種に記載しています。
手のひらサイズの小さなサル
ピグミーマーモセット
真猿類のなかで最も小さなサルである。
頭胴長は12~16cm、体重も85~140gとかなり軽く、手のひらに乗せて運べるほどのサイズだ。毛色は黄褐色を基調としている。首のまわりの毛は長くたてがみ状となり、耳を覆い隠す。節足動物も食べるが、とりわけ好んで食べるのは樹液で、樹液食に食事の時間の2/3を費やす。
生後1.5~2カ月までの子どもは群れのサルが運ぶ。子どもは生まれてから5カ月までには歯で幹に傷をつける行動をとり、6カ月経つと樹液食を自力で行うようになる。
レッドリストでは「LC(軽度懸念)」に分類されている通り、ピグミーマーモセットは日本では珍しいサルではあるものの、絶滅に瀕したサルというわけではない。
五つの毛色で「世界一美しいサル」の異名
アカアシドゥクラングール
インドシナ半島の東部に生息するリーフモンキーで、キンシコウやテングザルの近縁種である。推定生息個体数は770~2,500頭。目尻がつり上がった独特の目つきをしている。
胴体は灰色、首とすねの部分は赤、肩・腰・手足は黒く、前腕・顔・尻と尾が白、そして顔の皮膚は淡いオレンジ色である。5色もの体毛をもつサルはほかになく「世界で一番美しいサル」の異名をもつ。
長く続いたベトナム戦争の影響で、本種の生息地の大半が失われた。本種は希少種のため厳重に保護されており、たとえばソンチャ自然保護区ではレンジャー同伴でないと森林に入ることも許されない。
日中は樹の高い所で休んでいるらしく、調査の際に本種を観察できたのは、ほぼ早朝だけだった。
2017年10月現在、日本国内で本種を飼育しているのは、よこはま動物園ズーラシアのみである。
孫悟空のモデルという説もあった中国のサル
キンシコウ
キンシコウ(金絲猴)はゴールデンモンキーとも呼ばれ、中国南部に生息している美しいサルである。
背中と尾が濃い茶色で、肩と尾の先端はやや白みがかったオレンジ色、腹部や足は白、そして顔は青みがかった白である。鼻がしゃくれて鼻孔が上向きについていることから、日本語では「シシバナザル(獅子鼻猿)」とも呼ばれている。
中国四大奇書のひとつ『西遊記』に登場する孫悟空のモデルだとされていたが、これはある動物園の園長が雑誌のインタビューで語った内容が独り歩きしたというのが実情らしい(現在ではアカゲザルがモデルだとされている)。
現在、キンシコウは中国国内の動物園で飼育され、繁殖の試みが続けられている。本種は中国ではジャイアントパンダと並んで厳重に保護されており、2017年10月現在、日本国内でこのサルを飼育している施設は、熊本市動植物園のみである。
その名の由来はギリシャ神話の「月の女神」
ダイアナモンキー
ダイアナモンキーは、世界でもっとも美しいサルのひとつである。西アフリカの熱帯雨林から二次林にまで分布し、森の高い位置で、20頭を超える大きな群れをつくって生活している。
「ダイアナ」という美しい名前は、額の白い毛の部分が三日月のように見えることから、ギリシャ神話の月の女神にちなんでつけられた。命名は生物分類の父である、カール・フォン・リンネである。
ほかの種類のサルと一緒に群れをつくることが多く、そこでは他種を率いるリーダー的な役目を果たす。移動のときは他種より前で先頭に立つし、天敵が近づいたときに発する警戒声はサルだけでなく鳥など他の動物たちにも利用されている。
コートジボワール共和国、ダン族の精霊の仮面には、ダイアナモンキーを表すものがあり、この精霊は他者をつき従えさせる力をもつという。
オスの子殺しにより群れが巨大化
マウンテンゴリラ
かつて研究者達がゴリラに名前を付けて識別し、行動や社会関係を調べていった結果、ゴリラの社会はチンパンジーのようにメスだけが集団間をわたり歩くことがわかってきた。集団同士はなわばりをもたず、単独生活の若いオスが出会いを繰り返す。それらのオス間をメスが渡り歩いていくのがゴリラの社会の姿だ。
しかし、ほかの地域のゴリラと違ってマウンテンゴリラは、複数のオスを含む複雄の集団をつくる傾向がある。
この理由はオスによる子殺しが頻発し、メスが身を寄せる集団を選ぶようになったからだと考えられている。オスによる子殺しは多くの霊長類でみられる行動で、オスが自分の子ではない乳飲み子を殺して、母親の排卵を回復させて交尾をし、自分の子孫を残そうとする繁殖戦略と見なされている。
ゴリラの場合、乳飲み子を守るのはオスの仕事で、オスがいなくなるとメスは無防備になってしまう。だから、メスが複数のオスのいる集団へ移籍する傾向を強めた結果、複雄の集団が増えて大きくなった。さらに、若いオスが交尾相手を得られるようになって離脱しなくなり、ますます増加したと考えられている。子殺しが社会を変える好例である。
著者名 京都大学霊長類研究所
判型 A4変
ページ数 256
発行年月 2017.11
ISBN 9784767824024
定価 : 2,800円+税
Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4767824028