狩野文浩が第28回日本霊長類学会にて日本霊長類学会高島賞を受賞しました。
受賞者:思考言語分野 2011卒業 狩野文浩
受賞名:日本霊長類学会高島賞
(大型類人猿を対象とした比較アイトラッキング研究)
狩野文浩氏は、ヒトと大型類人猿を対象としたアイ・トラッキング(目の動きを直接計測する方法)の種比較研究を世界で初めて行い、発展させた。従来のアイ・トラッキングの方法では、目に直接器具をつけたり頭を固定したりする必要があって、それが大型の類人猿では物理的・倫理的に難しかったが、氏はその問題を、ヒト幼児の研究で利用されはじめていた新型アイ・トラッカーと、類人猿研究の伝統である対面実験の手法を組み合わせることによって解決した。氏はこの手法を用いて、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどのヒト科4種を対象にその視覚戦略の共通性と特異性を明らかにした。特にヒトと他の大型類人猿の間には視線の移動様式に大きな違いが認められた。ヒトは他の類人猿に比べて、より長くより分散の高いサッカード遅延時間を示したのだ。この種差は、視線の運動そのものの差異(網膜や眼筋の構造のような基本的な差異)よりも認知的差異に由来する可能性が高いことも実験から示唆された。
氏が行ってきた大型類人猿での非拘束・非接触での視線計測は、すでに、他の研究者たちにも活用され始め、大型類人猿の認知機能の解明に新たな光を当て始めている。氏の成果は比較認知科学の新たな地平を切り拓いたといえる。(代筆:友永雅己)
アイトラッキング実験中のチンパンジー、アユム
受賞した狩野文浩氏