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辻大和が第28回日本霊長類学会にて日本霊長類学会高島賞を受賞しました。

受賞者:社会進化分野 助教 辻大和

受賞名:日本霊長類学会高島賞

選考対象論文は以下6編である

1. Tsuji Y. (2011) Sleeping site preferences of wild Japanese macaques (Macaca fuscata): the importance of nonpredatory factors. J Mamm 92: 1261-1269.

2. Tsuji Y. (2011) Seed dispersal by Japanese macaques (Macaca fuscata) in western Tokyo, Japan: a preliminary report. Mamm Study 36: 165-168.

3. Tsuji Y., Sato K., and Sato Y. (2011) The role of Japanese macaques (Macaca fuscata) as endozoochorous seed dispersers on Kinkazan Island, northern Japan. Mamm Biol 76: 525-533.

4. Tsuji Y., Morimoto M., and Matsubayashi K. (2010) Effects of the physical characteristics of seeds on gastrointestinal passage time in captive Japanese macaques. J Zool 280: 171-176

5. Tsuji Y., Yangozene K., and Sakamaki T. (2010) Estimation of seed dispersal distance by the bonobo, Pan paniscus, in a tropical forest in Democratic Republic of Congo. J Trop Ecol 26: 115-118

6. Tsuji Y. (2010) Regional, temporal, and inter-individual variation in the feeding ecology of Japanese macaques. In: Nakagawa N., Nakamichi M., and Sugiura H. (Eds.) Japanese Macaques. Springer, Tokyo. pp. 95-123.

霊長類はヒトを含む分類群であると同時に、生態系を構成する生物でもある。辻氏は、霊長類が生態系の中で果たしている役割や、霊長類が生態系の中でどのように適応しているかを明らかにしてきた。

霊長類が生態系の中で果たしている大きな役割の一つは種子散布である。今回の選考対象となった論文のうち、4編は種子散布に関するものである。辻氏はニホンザルの野外調査を宮城県金華山島 (3) と東京都西部 (2) で行い、ニホンザルが運搬している植物種を明らかにした。ニホンザルが、温帯林における種子散布者としての重要な役割を果たしていることを示す結果である。ボノボでも種子散布に関する調査を行い (5)、彼らが非常に長い距離で、種子を運んでいることを示唆した。

さらに、飼育下のニホンザルに、様々なサイズの種子を食べさせ、消化管の通過時間を推定した (4)。これは、種子散布の距離を推定する際の、もっとも基礎的な情報であるが、研究例は多くない。辻氏は、様々な重量や比重の種子を用いて実験を行い、 種子の物理的な特性によって、消化管の通過時間が異なることを明らかにした。種子散布距離を推定する上で新たな知見を付け加えたと言える。

辻氏 は環境の変動とニホンザルの行動変化についても多くの研究をしているが、選考対象となったニホンザルの泊まり場選択に関する研究 (1) もその一つである。季節によって、ニホンザルの泊まり場と相関の高い変数が異なることを明らかにし、季節によって寒さを避けたり、採食場所に近い場所を選択したりしていることを示した。泊まり場の選択は、捕食者回避が重要な要因として強調されてきた。しかし、捕食者のいない金華山島のニホンザルを対象にすることで、捕食者以外の要因も、泊まり場選択に影響を与えていることを示した。また、日本各地のニホンザルの採食行動、活動時間、土地利用をレビューした (6)。日本各地の地理的な変異と、季節変化や年次変化という時間的な変異をまとめ、環境の変動に対して、ニホンザルの行動がどのように変化するかをまとめている。

辻氏は丹念なフィールドワークを長期にわたって継続しており、短期的、長期的に変動する環境の中で霊長類がどのように生きているかを明らかにしてきた。 ニホンザルの長期調査と変更して、他の霊長類や、霊長類以外の哺乳類も対象として研究の幅を広げている。霊長類の研究においては、ヒトとの比較や、社会的 な側面が強調されてきた。辻氏は、これまでの知見に加えて、他の哺乳類との比較や、生態学的な側面も重視して研究を進めている。霊長類生態学の幅を広げるとともに、生態学、哺乳類学にも貢献できる研究者として、一層の活躍が期待される。