京都大学霊長類研究所でおこなわれているチンパンジーの心の研究について紹介します。最初の研究パートナーとなったチンパンジーにちなんで、アイ・プロジェクトと名付けています。1978年4月15日に、アイが初めてコンピュータのキイボードに触わりました。
その後、多数の研究者が、チンパンジーの知覚・記憶・言語・模倣・協力などについて実証的な研究を積み重ねてきました。
1986年からは、西アフリカ・ギニアのボッソウの野生チンパンジーの研究もおこなっています。彼らはさまざまな道具を使います。アフリカ広しといえども、ここのチンパンジーだけが、一組の石器を使ってアブラヤシの種を叩き割ります。長く続く親子関係を基盤に、教えない教育・見習う学習によって、世代を超えて文化が伝わります。
2000年に、3組の母子が研究所に誕生しました。参与観察という手法で、彼らの日々の暮らしに参加しつつ子どもたちの発達過程を研究してきました。
さらに2010年からはコンゴ盆地に住むチンパンジーの別種である野生ボノボの研究にも着手しています。こうして実験室の研究と野外の研究を並行しつつ、進化の隣人チンパンジーの心のまるごと全体をとらえようとしています。
チンパンジーを知ることで、人間とは何かを考える。そうした研究の軌跡と現状をお伝えしたいと思います。