2010年8月29日
狩野文浩が日本動物心理学会第70回大会で
日本動物心理学会大会発表奨励賞優秀奨励賞を受賞しました。
狩野文浩(D2)が日本動物心理学会第70回大会(2010.8.27-29、帝京大学)において日本動物心理学会大会発表奨励賞優秀奨励賞を受賞しました。
発表題目
「ヒトとチンパンジーにおける比較アイ・トラッキング研究」
発表者
狩野文浩(京都大学霊長類研究所・日本学術振興会)・友永雅己(京都大学霊長類研究所)
受賞内容の解説
ヒトは視野を探索するために、一秒間に普通2-3回、視点の中心を移動させる。私たちは日常、視野のすべての部位をクリアに見ている印象を抱いているが、高い精度の視覚情報は実際、視点の中心(中心禍)からのみ取り込まれる。したがって、視点の動きは視覚情報が取り込まれ、分析されるやり方を反映している。本研究は、この点を比較の方法で検討することを目的とし、ヒトと最も近縁なチンパンジー(/Pan
troglodytes/)の視点の動きをアイ・トラッキングの方法を用いて比較検討した。
結果、自然画像を自由に観察しているとき、チンパンジーは視点を一秒間に3-4回、ヒトよりも高い頻度で移動させることがわかった。さらに、gap-overlap法を用いることによって、このヒトとチンパンジーの目のタイミングにおける種差が、視野における基本的な違い(周辺視野に対する感受性)に由来すると言うよりも、中心視野と周辺視野における刺激の闘争を解決する行動戦略の違いを反映していることがわかった。また、小さな画像がランダムな位置に出現/消失するような動画を提示したときに、チンパンジーは視点をヒトより早く移動させ、ゆえにひとつひとつの画像をより正確に目で追跡することがわかった。このことから、シーンを走査する速度において、チンパンジーの視覚戦略は利点を持っていることが示唆された。もしかするとヒトは、この利点を犠牲にすることによって、特異的な視覚処理の方法を進化させてきたのかもしれない。
ゆえに、これらの結果は、ヒトとそれ以外の霊長類における視覚戦略の非連続性と、それぞれの視覚戦略のコスト―ベネフィット関係を示唆している。
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