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京都大学 霊長類研究所 年報 vol.47 京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.47 目次

 

平成28年度で終了した計画利用研究


アジア産霊長類の進化と保全に関する国際共同研究

実施期間 平成26~28年度

課題推進者 川本芳、マイケル・ハフマン、半谷吾郎、辻大和、アンドリュー・マッキントッシュ、田中洋之


本課題は、生態学・行動学・集団遺伝学・寄生虫学の視点から、アジア産霊長類の進化ならびに保全に関わる研究を推進することを目的に3年計画で実施した。原則的に海外研究者を含む研究課題を採択し、国際共同研究を活性化させることに重点を置く計画とした。この結果、3年間にアジアの6カ国(ミャンマー、スリランカ、ネパール、ブータン、ベトナム、台湾)から7名延べ13件の応募を採択し共同研究を実施した。3年目には研究所で初めて共同利用研究会を海外(スリランカ)で開催し、課題研究の情報交換と研究成果の総括を行った。この結果、①種の多様性と系統あるいは系統地理、②多様な環境における個体群生態、③人との摩擦および保全管理、④外来種および雑種への対策、に関する研究でアジア各国の霊長類研究者のネットワークを拡大し、進化や保全に関する研究情報や技術の交流を促進することに成功した。


研究実施者

<平成26年度>

H26-A4 Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar (Aye Mi San)

H26-A15 The genetic profile of Taiwabese Macaque groups (Su Hsiu-hui・Fok Hoi Ting)

H26-A23 Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal (Mukesh Chalise)

H26-A24 Study of ecology and phylogeography of primates in Sri Lanka (Charmalie Anuradhie Dona Nahallage)

<平成27年度>

H27-A4 MtDNA phylogeography of slow lorises in Vietnam: Conservation and reintroduction program (Hao Luong Van)

H27-A5 Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar (Aye Mi San)

H27-A12 Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan (Tshewang Norbu)

H27-A26 Molecular classification of the grey langur and purple-faced langur in Sri Lanka (Charmalie AD Nahallage)

H27-A36 The genetic profile of Taiwanese macaque groups (Hsiu-hui Su)

H27-A37 Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal (Mukesh Chalise)

<平成28年度>

H28-A1 Phylogenetic and population genetic studies for conservation of nonhuman primates in Myanmar (Aye Mi San)

H28-A20 Study on phylogeography of macaques and langurs in Nepal (Mukesh Chalise)

H28-A21 Ecological and phylogeographical study on Assamese macaques in Bhutan (Tshewang Norbu)



 

京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.47 目次

 

4. 共同利用研究会


「ニホンザル研究・若手とシニアのクロストーク」

日時:2016年6月25日(土)・26日(日)

場所:京都大学霊長類研究所 大会議室(参加人数:48人)


本研究会は昨年度までの『ニホンザル研究セミナー』を母体に、①若手研究者による修士・博士課程の研究の発表、 ②シニアの研究者による、若手の発表へのコメントと最近のニホンザル研究のレビュー、 ③ポスター発表による修士・博士研究の途中経過の発表の3コーナーで構成し、多くのニホンザル研究者に発表の機会を提供した。今回は口頭発表6件、ポスター発表10件の発表があり、行動・生態・保全などさまざまな分野でニホンザルの野外研究を行っている研究者が、討論を通じて相互の連携を強化することができた。


<プログラム>

6月25日(土)

12:55-13:00 趣旨説明

13:00-14:00 勝 野吏子(大阪大学大学院人間科学研究科) 嵐山集団のニホンザルにおける関係調整音声の用法とその発達

14:00-15:00 谷口 晴香(京都大学大学院 理学研究科) 離乳期のニホンザルのアカンボウにおける採食行動と伴食関係に生息環境が及ぼす影響

15:00-15:15 休憩

15:15-16:15 青木 孝平(東京都恩賜上野動物園) 動物園のニホンザル研究

コメンテーター:中道正之(大阪大学大学院 人間科学研究科)

16:15-17:15 島 悠希(京都大学大学院 理学研究科) 野生ニホンザルにおける休息時の接近行動と他個体間の親和的関係の理解 

コメンテーター:小川秀司(中京大学 国際教養学部)

17:15-18:30 ポスター発表

P-1 栗原 洋介(京都大学霊長類研究所) 屋久島西部林道におけるニホンザルの食物受け渡し行動

P-2 井上 光興(東京都調布市)・辻大和(京都大学霊長類研究所) 野生ニホンザルによるモリアオガエル泡巣の採食事例

P-3 橋本 直子(京都大学霊長類研究所) 飼育ニホンザルにおけるコントラフリーローディングにもとづく採食エンリッチメントの検討

P-4 寺山 佳奈(高知大学大学院総合人間自然科学研究科) 高知県中土佐町におけるニホンザルの環境選択

P-5 Lucie Rigaill (Primate Research Institute) Does female urine modulate male sexual behaviors in Japanese macaques ?

P-6 Julie Duboscq (Wildlife Research Centre, Kyoto University) Connecting the dots: linking host behavior to parasite transmission and infection risk

P-7 鈴木-橋戸 南美(京都大学霊長類研究所) 遺伝子解析からわかったニホンザル苦味感受性変異の拡散過程

P-8 水藤 春華、野中健一、鈴木義久、六波羅聡、西村和也、明石武美(サルどこネット)、田中哲哉(バーテックスシステム) 猿害対策にむけたサルどこネットの取り組みと課題

P-9 松原幹(中京大学国際教養部) 屋久島のニホンジカのサル糞食による糞中種子散布への影響

P-10 西栄美子・筒井圭・今井啓雄(京大・霊長研) ヒトとニホンザルにおける甘味感受性の比較

18:30-20:30 懇親会(於:霊長類研究所大会議室)


6月26日(日)

9:00-10:00​ 川添 達朗(京都大学大学院・理学研究科) ニホンザルのオスの生活史と社会関係について

10:00-11:00 川本 芳(京都大学霊長類研究所) ニホンザル地域個体群の歴史性と遺伝的連続性について


(文責:辻大和)



「アジア産霊長類の進化と保全」

期日: 2016年10月15~16日

会場: Sri Jayewardenepura 大学(スリランカ)


概要:

計画研究「アジア産霊長類の進化と保全」の3年目を迎え、これまでの共同利用研究の成果を中心に総括と今後の研究の課題と展望を議論することを目的に研究会をスリランカで開催した。国際共同研究の振興を目的とする計画課題研究であったため、海外の共同利用研究員を招き初めて国外で共同利用研究会を行った。日本学術振興会の二国間交流事業オープンパートナーシップセミナーを開催する計画があったため、研究会をこのセミナーとリンクさせた。参加者は30名で内訳は海外招待研究者が10名(うち5名は共同利用研究員)、日本人研究者が10名、地元スリランカの研究者が10名だった。プログラムの内容は以下であった。


October 17, 2016

10:00 - 10:10Opening RemarksYoshi Kawamoto (Kyoto Univ., Japan)

10:10 - 10:40Characteristics of Assamese monkeys in NepalMukesh Chalise (Tribhuvan Univ., Nepal)

10:40 - 10:50CommentYamato Tsuji (Kyoto Univ., Japan)

10:50 - 11:20Collaborative Research on Human Primates Conflict in Bhutan

Tshewang Norbu (Renewable Natural Resource Research Centre., Bhutan)

11:20 - 11:30CommentToru Oi (Ishikawa Prefectural Univ., Japan)

11:30 - 12:00Progress report from IndiaHimani Nautiyal (Kyoto Univ., Japan)

12:00 - 12:10CommentMichael Huffman (Kyoto Univ., Japan)

12:10 - 13:30Lunch

13:30 - 14:00Molecular Studies for the Conservation of Taiwanese Macaques

Hsiu-hui Su (National Pingtung Univ. of Science and Technology, Taiwan)

14:00 - 14:10CommentYoshi Kawamoto (Kyoto Univ., Japan)

14:10 - 14:40Present Situation and Conservation of Non-human Primates in Myanmar

Aye Mi San (Mawlamyine Univ., Myanmar)

14:40 - 14:50CommentHiroyuki Tanaka (Kyoto Univ., Japan)

14:50 - 15:40Break

15:40 - 16:10Progress report from Sri LankaCharmalie A D Nahallage (Sri Jayewardenepra Univ., Sri Lanka)

16:10 - 16:20CommentMichael Huffman (Kyoto Univ., Japan)

16:20 - 16:50Development of a Mitochondrial marker for Conservation Genetics in the Slow Loris

Hiroyuki Tanaka (Kyoto Univ., Japan)

16:50 - 17:00CommentYoshi Kawamoto (Kyoto Univ., Japan)


October 18, 2016

09:00 - 09:30Hybridization between exotic species and native macaque species: Morphological indicator for the decision of hybridization Yuzuru Hamada (Kyoto Univ., Japan)

09:30 - 09:40CommentTsuyoshi Ito (Kyoto Univ., Japan)

09:40 - 10:10Conservation Genetics of the Japanese Macaque: Toward the Conservation and Management of the Local Population Yoshi Kawamoto (Kyoto Univ., Japan)

10:10 - 10:20CommentToru Oi (Ishikawa Prefectural Univ., Japan)

10:20 - 10:40Break

10:40 - 11:30General Discussion


発表ごとに共同利用研究対応者あるいは関係する研究者がコメントを加えた。話題となったアジアの霊長類生息国は10カ国(日本、台湾、ヴェトナム、タイ、インドネシア、ミャンマー、ブータン、ネパール、インド、スリランカ)で、調査成果(分布、生態、行動、人との摩擦、系統進化など)を話題に活発に議論が行われた。

共同利用研究期間中にトピックスとなった研究テーマを大別すると、①種の多様性と系統あるいは系統地理、②多様な環境における個体群生態、③人との摩擦および保全管理、④外来種および雑種への対策、であった。総合討論ではこれらの話題を整理し、共同利用研究の成果として、①課題を共有して得られた知見や技術の利用が進んだこと、②成果の公表が進んだこと、③研究者のネットワークが広がりこれからの協力に有益な基盤がつくれたこと、を確認した。

最期に参加者からこうした計画研究をさらに継続するよう強い要望があり、2017年度以降に新たな計画を立てて研究所に申請し実施することにした。


(文責:川本 芳)



「霊長類の食性の進化」

日時:2017年2月4日(土)・5日(日)

場所:京都大学霊長類研究所 大会議室(参加人数:44人)

世話人:半谷吾郎

本研究会の目的は、それぞれの種の霊長類の持っているどのような形質が、その 種特有の食性の特徴を形成しているのかを、明らかにすることである。野生の霊長類はさまざまな食物を採食し、「果実食者」「葉食者」のような特定のカテゴリー に当てはめることはほとんど無意味にも思える場合もある。一方で、消化管や歯の構造に、厳然と種差が存在し、それが一見そのようなカテゴリーわけに対応しているように見えることもある。感覚遺伝子、腸内細菌、消化システム、 歯や下顎の形態学、ロコモーションなど、採食に関連するさまざまな生物学的特質が、どのように進化してきたのかを論じ、それらの知見を統合し、霊長類が、 どのような形質を進化させることで、種固有の食性の特徴を獲得するにいたったのかを議論した。

<プログラム>

2/4(土)

10:57-11:00 挨拶 半谷 吾郎(京都大学 霊長類研究所)

11:00-11:40 半谷吾郎(霊長研)「霊長類の食性の進化: 種内変異と種固有の食性の特徴」

11:40-12:20 小薮大輔(東京大)「コロブス亜科における三次元頭蓋形態の系統パターンと食性パターン」

12:20-13:20 昼食

13:20-14:00 清水大輔(京都大)「化石から見たコロブスの採食適応」

14:00-14:40 中川尚史(京都大)「パタスモンキーの食性と長肢化」

14:40-14:50 休憩

14:50-15:30 島田卓哉(森林総合研究所)「植物二次代謝物質に対する哺乳類の適応: 野ネズミとタンニンを例に」

15:30-16:10 松田一希(中部大)「コロブス類の消化機構:テングザルの反芻行動などを例に」

16:10-16:20 休憩

16:20-17:00 澤田晶子(霊長研)「ニホンザルの食性と腸内細菌叢における季節変動」

17:00-17:40 牛田一成(京都府立大学)「野生動物の生存を助ける腸内細菌: 分離培養と全ゲノム解析から見える世界」


2/5(日)

9:00-9:40 辻大和(霊長研)「アジアにおける、同所的に生息する霊長類の食性」

9:40-10:20 河村正二(東京大)「新世界ザル色覚・嗅覚・味覚遺伝子のターゲットキャプチャーと採食果実の物性分析」

10:20-10:30 休憩

10:30-11:10 鈴木南美(霊長研)「旧世界ザルの苦味受容体の遺伝的多様性と食性との関係」

11:10-11:50 早川卓志(霊長研)「霊長類の苦味受容体遺伝子レパートリーの進化と生態適応」

11:50-12:30 総合討論


(文責:半谷吾郎)




「集団的フロネシスの発現と創発のメカニズム解明を目指して」

日時:2017年3月17日(金)13:30 ~ 3月18日(土)16:40

場所:京都大学 霊長類研究所 大会議室

研究会世話人:高田昌彦


平成28年度に実施された共同利用・共同研究プロジェクトの計画研究「集団的フロネシスの発現と創発に関する研究」では、集団として行動する場合に集団を形成する個の多様性や役割分担がどのように発生し、それが集団的フロネシスと呼ばれる集団における叡智の発現と創発にどのように関与するかを、ヒトとサルを対象とした集団および個体レベルの多面的解析により探究することを目的としている。本研究会では、ヒトを含む霊長類、さらにはげっ歯類を用いて、高次脳機能や精神・神経疾患に関する多様な研究を意欲的に展開している研究所内外の研究者(特に中堅・若手研究者)を対象にして、最新の研究成果の紹介と霊長類脳科学研究に関わるさまざまな情報交換、意見交換をおこなった。プログラムは以下のとおりである。


<プログラム>

3月17日(金)

13:30~13:40開会挨拶 高田 昌彦

13:40~14:10宋 文杰(熊本大学大学院生命科学研究部)「脂質代謝による聴覚機能維持とそのメカニズム」

14:10~14:40上園 志織(京都大学霊長類研究所) 「マーモセット帯状皮質への大脳基底核および小脳からの多シナプス性入力様式」

14:40~15:10橋本 亮太(大阪大学大学院医学系研究科)「精神疾患の認知機能障害」

15:10~15:40西村 幸男(京都大学大学院医学研究科)「腹側中脳は一次運動野を介して脊髄運動ニューロンの興奮性を促通する」

15:40~16:10植木 孝俊(名古屋市立大学大学院医学研究科)「霊長類におけるadult neurogenesisの脳内動態及び機能の解析」

16:10~16:30ブレイク

16:30~17:00宇賀 貴紀(山梨大学大学院医学工学総合研究部) 「柔軟な判断に関連するLIP野ニューロン活動のケタミン全身投与による活動変化の解析」

17:00~17:30礒村 宜和(玉川大学脳科学研究所) 「脳領域間スパイク・コミュニケーションを探る」

17:30~18:00星 英司(東京都医学総合研究所) 「脳と心と科学少年」


3月18日(土)

9:30~10:00関 和彦(国立精神・神経医療研究センター神経研究所) 「感覚ゲーティングの脳内機構の探求」

10:00~10:30田中 真樹(北海道大学大学院医学研究科) 「大脳皮質下ループによる高次運動調節」

10:30~11:00筒井 健一郎(東北大学大学院生命科学研究科) 「内側前頭葉の情動調節機能」

11:00~11:30小山内 実(東北大学大学院医学系研究科) 「qAIM-MRI によるパーキンソン病モデルマウスの全脳神経活動解析」

11:30~12:00小林 和人(福島県立医科大学 医学部生体機能研究部門) 「特定神経回路の機能制御を可能とする高頻度逆行性導入ウイルスベクターの開発」

12:00~13:00ブレイク

13:00~13:30松本 正幸(筑波大学医学医療系生命医科学域) 「黒質-線条体ドーパミン神経路による行動抑制の制御」

13:30~14:00南本 敬史(量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所) 「化学遺伝学イメージングによるサル脳科学研究の展開」

14:00~14:30平林 敏行(量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所) 「化学遺伝学と機能イメージングの融合によるマカクザルにおける大域ネットワーク変容機序の解明」

14:30~15:00小林 康(大阪大学大学院生命機能研究科) 「眼球・PPTgニューロン活動計測、一次運動野rTMS」

15:00~15:30磯田 昌岐(自然科学研究機構・生理学研究所) 「集団的フロネシスの発現と創発の解明を目指して」

15:30~16:00郷 康広(自然科学研究機構・新分野創成センター) 「マーモセット脳における時空間的遺伝子発現解析」

16:00~16:30南部 篤(自然科学研究機構・生理学研究所) 「大脳基底核23の問題」

16:30~16:40閉会挨拶 高田 昌彦


(文責:高田昌彦)


「第46回ホミニゼーション研究会 性的二型とホミニゼーション 家族と育児・養育の霊長類基盤」

日時:2017年3月24日(金)~25日(土)

場所:霊長類研究所大会議室(参加人数:約50人)

世話人:平崎鋭矢、古市剛史、大石高生、橋本千絵、西村剛、中務真人(理学研究科)

ホミニゼーションは、サル段階からヒト科への進化、およびヒト科の中でのサピエンスへの進化ととらえられてきた。ただ、昨今の類人猿研究の進展や相次ぐ重要なヒト科化石の発見とともに、ヒト科の定義は揺れ、ヒト科系統の多様性も明らかになってきた。現生大型類人猿とヒト化石種についての最新の知見を俯瞰し、ホミニゼーションの意味を再考すべき時期が来ているのかもしれない。今回は、手始めとして、形態と社会構造や生態・繁殖戦略を繋ぐリンクであり、進化史を知る重要な鍵となる性的二型を軸に、ホミニゼーションを考えた。研究会では、以下のプログラムに示す多様な研究成果が報告され、現生類人猿やヒト化石種における性的二型が持つ意味、関連遺伝子やホルモンについての最近の研究成果、性的二型の進化のメカニズム、さらには、性的二型性とともに変化する繁殖戦略や育児戦略にまで踏み込んだ活発な議論が交わされた。



<プログラム>

3月24日(金)

13:00-13:10 趣旨説明 平崎 鋭矢(京都大学・霊長類研究所)


1.ヒト祖先の性的二型と社会の進化 座長:西村 剛(京都大学)

13:10-13:40 五十嵐 由里子(日本大学)「出産・育児の観点からみた人類進化」

13:40-14:10 菊池 泰弘(佐賀大学)「1500万年前のアフリカ産化石類人猿・ナチョラピテクスの性差について」

14:10-14:50 諏訪 元(東京大学)「初期人類の性差」

14:50-15:20 古市 剛史(京都大学)「アフリカのヒト科の行動と社会の進化」


2.性的二型の分子基盤 座長:大石 高生(京都大学霊長類研究所)

15:35-16:05 太田 博樹(北里大学)「性皮膨張メカニズムの解明に向けて~ニホンザルのメンス前血中ホルモン濃度変動と相関する血球の発現変動遺伝子の検出~」

16:05-16:35 塚原 伸治(埼玉大学)「哺乳類における性的二型核の比較と性差形成機構」


3.育児行動とホルモン 座長:中務 真人(京都大学理学研究科)

16:50-17:20 齋藤 慈子(武蔵野大学)「マーモセットの養育行動と内分泌機構」

17:20-17:50 黒田 公美(理化学研究所)「子育て行動の脳内機構:げっ歯類とマーモセットでの知見」


3月25日(土)

4.現生霊長類の行動の性差、育児・養育 座長:橋本 千絵、平崎 鋭矢(京都大学)

09:00-09:30 橋本 千絵(京都大学)「野生ボノボにおける出産後の発情再開について」

09:30-10:00 香田 啓貴(京都大学)「霊長類の行動の性差および養育関連行動の研究」

10:15-10:45 久世 濃子(国立科学博物館)「オランウータンの雄の二型成熟とライフヒストリーの多様性」

10:45-11:25 竹ノ下 祐二(中部学院大学)「ゴリラのオスの繁殖戦略と養育行動」

5.討論 座長:古市 剛史(京都大学霊長類研究所)

11:40-12:30コメンテーター: 蔦谷 匠(京都大学)、國松 豊(龍谷大学)、田島 知之(京都大学)、

中務 真人(京都大学)、森本 直記(京都大学)


(文責:平崎鋭矢)