<研究概要>
飼育チンパンジーとボノボを対象とした比較認知科学的研究
狩野文浩、平田聡(京都大学野生動物研究センター)
熊本サンクチュアリのボノボとチンパンジーを対象に、最新技術を用いた認知と感情の心理研究をおこなった。アイ・トラッキング(視線追跡技術)によって、彼らがヒトと同様に一回きりの出来事を記憶して(エピソード記憶)、その後、同じ出来事を正しく予測できることを発見した。また、他個体に対する視線の向け方、とくに目を見つめる時間について、ボノボとチンパンジーの種間に有意な差があることを発見した。これらの結果から、類人猿の心理機能について理解を深め、また新たな手法を開発することができた。成果は論文、学会、メディアで公表した。
<研究業績>
原著論文
1) Kano, F., Hirata, S., Deschner, T., Behringer, V., & Call, J. (2016).
Nasal temperature drop in response to a playback of conspecific fights in
chimpanzees: A thermo-imaging study. Physiology & Behavior, 155, 83-94.
2) Kano, F., & Hirata, S. (2015). Great apes make anticipatory looks based
on long-term memory of single events, Current Biology, 25, 2513-2517.
3) Kano, F., Hirata, S., & Call, J. (2015). Social attention in the two
Species of Pan: Bonobos make more eye contact than chimpanzees. PLoS ONE 10,
e0129684. doi:10.1371/journal.pone.0129684
学会発表
1) 狩野文浩. Great apes make anticipatory looks based on goals,
memories, and beliefs. 日本心理学会第79回大会,
名古屋国際会議場, 2015年9月22日
2) 狩野文浩. Social attention in great apes; eye contact, gaze following,
and ostention. 日本心理学会第79回大会, 名古屋国際会議場, 2015年9月24日