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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.46  > Ⅲ. 研究教育活動


Ⅲ. 研究教育活動

1. 研究部門及び附属施設

進化系統研究部門

進化形態分野

<研究概要>

A) マカクの系統地理学研究
濱田穣、川本芳(人類進化モデル研究センター)、平﨑鋭矢、田中洋之(人類進化モデル研究センター)、Nguyen Van Minh
インドシナにおけるアカゲザル(Macaca mulatta)とカニクイザル(M. fascicularis)の交雑に関して形態学的・遺伝学的に検討した。クラ地峡以北のカニクイザルにアカゲザルからの強度の異なる遺伝子浸透が認められ、尾長、頭顔部の毛並みやひげ、および体色にその影響が認められる。またカニクイザルの基亜種(M. f. fascicularis)とミャンマーカニクイザル(M. f. aurea)はタイの中南部でアンダマン海側でもタイ湾側でも分布を重ねていること、さらに交雑していることを見出した。東南アジアからインド北東地方、バングラデシュまでの地域でアカゲザル(M. mulatta)、ベニガオザル(M. arctoides)、ヒガシアッサムモンキー(M. a. assamensis)、キタブタオザル(M. leonina)は分布を重ねている。これらの種の間での競合回避のメカニズムを、それぞれのマイクロハビタット、植生、および個体間関係(社会構造)の点から検討した。

B) マカクの頭顔部と尾臀部の形態変異とコミュニケーション行動
濱田穣、若森参
マカクにおいて尾長は変異性が高い。その要因に関して、系統発生、生息地の気候、位置的行動、個体間相互作用(コミュニケーション)の面から検討している。中程度の尾長をもち、分布域が重なっているキタブタオザル、ヒガシアッサムモンキーとアカゲザルの間でこれらの要因を検討した。これらは異なる種群にあり、生息地が常緑広葉樹林、急傾斜地や岩崖を含む山林、二次林や乾燥した疎林などと異なり、位置的行動における尾の機能で異なる。さらに尾のコミュケーション機能の面で、アッサムモンキーでは尾の腹面から大腿後面にかけての部分は、アカゲザルやキタブタオザルに比べてずっと視覚的刺激(赤い性皮とその周囲の白毛などのコントラストと鮮やかさ)が少なく、社会的場面で尾を挙げるなどの行動がアカゲザルに比べると頻度が低く、また社会的順位との関係が異なっている。アッサムモンキーの社会は平等主義的であり、接触をともなう行動によるコミュニケーションが発達している。一方、キタブタオザルとアカゲザルは対照的に専制的社会をもち、距離をおいて視覚的コミュニケーションをとる。これらの要因と尾椎形態との関係を検討した。

C) アカゲザルとニホンザルの交雑個体の形態学的検討
濱田穣、毛利俊雄、Nguyen Van Minh, 若森参
千葉県、房総地方で発生しているニホンザルとアカゲザルの交雑は、相当の広がりを示し、かなりの世代にわたっている。アカゲザルと交雑個体の排除にむけて、親種個体とさまざまな程度の交雑度をもつ個体の尾長、体色パターン、毛並、相貌によって、写真計測法や統計比較から、交雑度を推定する方法を検討している。

D) マカクの成長・加齢変化研究
濱田穣、毛利俊雄、Nguyen Van Minh
マカクの身体加齢変化を、身体サイズ、骨形態、骨密度、および変形性骨関節症の進行に探っている。骨の密度や関節症に影響される胴長のような身体サイズは、若成体期より年齢にともなって減少するが、オスではメスよりも早く減少が開始する。この性差に関して、生殖における性差との関連性が示唆される。メスは性成熟から閉経まで、比較的コンスタントに生殖活動を行うが、オスではその社会的順位によって生殖成功が異なり、また、生殖活動は10-20才の間にピークをもつ。これは性ホルモン分泌の年齢変化となり、身体加齢の性差要因となっていることが示唆される。閉経にともなって、エストロゲンの分泌がごく少なくなり、骨密度の減少が著明になるように、性ホルモンが身体加齢に強く影響することは知られている。繁殖の季節性のあるニホンザルとないカニクイザルで、分泌の季節性パターンに伴って骨の変化があるかどうかを検討した。ニホンザルでは両性で性ホルモンの分泌は季節性を示したが、影響が顕著であろうとの予想されたメスでは、骨密度に季節性が示されない。一方、オスでは骨密度に季節性を示した。

E) 足内筋の配置からみた足の機能軸に関する解剖学的研究
平崎鋭矢、大石元治(日本獣医生命科学大)
真猿類の骨間筋の配置から足の機能軸の位置を推定する試みを継続中である。27年度はゴリラ1頭とオランウータン1頭、について調査を行った。

F) ニホンザルのロコモーションに関する実験的研究
平崎鋭矢、濱田穣、鈴木樹理(人類進化モデル研究センター)、萩原直道(慶応義塾大)
ニホンザル歩行の運動学的分析を継続中である。27年度には8歳と6歳の2個体について、段差歩行中の床反力データおよび運動学データを収集した。

G) Structure from Motion法を用いた運動解析法の開発
平崎鋭矢、William Sellers(マンチェスター大)
複数の高精細ビデオ映像から、被験体の体表面形状をポイントクラウドとして再構築する手法を開発した。27年度は、放飼場の霊長類を用いた体表面形状の再構築を継続するとともに、実験室条件においてオマキザルおよびクモザルの手の把握動作の分析を行った。

H) チンパンジーのポジショナル行動の非侵襲的3次元計測
平崎鋭矢、友永雅己(思考言語分野)
屋外運動場で自由に行動するチンパンジーを5台のビデオカメラで撮影し、Structure from Motion法を応用した新たな無標点3次元運動解析法によって、ナックルウォーキング時の手足の動きなどを分析中である。

I) 位相振動子を用いたニホンザル四足歩行モデルの作成
平崎鋭矢、長谷和徳(首都大学東京)
位相振動子をニホンザルの神経・筋骨格モデルに適用し、霊長類特有の四肢の運び順を自律的に生成できる四足歩行運動シミュレーションを作成中である。実測データとの比較を行いつつ、シミュレーションモデルを改良中である。

J) 霊長類の頭蓋学
毛利俊雄
 霊長類の頭蓋骨の研究を終了した。

<研究業績>

原著論文

1) Hamada Y, San AM, Malaivijitnond S (2016) Assessment of the Hybridization between Rhesus (Macaca mulatta) and Long-Tailed Macaques (M. fascicularis) Based on Morphological Characters. Amer. J. Phys. Anthropol.,159,189-198.

2) Ito T, Kawamoto Y, Hamada Y, Nishimura TD (2015) Maxillary sinus variation in hybrid macaques: indications for the genetic basis of craniofacial pneumatization. Biol. J. Linnean Soc.,115,333-347.

3) Nguyen Van Minh, T. Mouri, Y. Hamada (2015) Aging-related Changes in the Skulls of Japanese Macaques (Macaca fuscata). Anthropological Science,123,2,107-119.

4) Srichan Bunlungsup, Hiroo Imai, Yuzuru Hamada, MichaeD. Gumert, Aye Mi San, Suchinda Malaivijitnond (2015) Morphological Characteristics and Genetic Diversity of Burmese Long-Tailed Macaques (Macaca fascicularis aurea). American J. Primatology,78,4,441-455.

5) 山田博之、濱田穣、國松豊、中務真人、石田英實 (2015) 大型類人猿4種の犬歯形態と性的二型. Anthropol. Science (Japanese series),123,2,93-109.

6) 平崎鋭矢 (2015) テナガザルのブラキエーション. 体育の科学,65,491-495.

学会発表

1) Andrada E, Sutedja Y, Hirasaki E, Blickhan R, Ogihara N (2015) Bipedal locomotion of the Japanese macaques: interactions between trunk, legs and self-stability. International Society of Biomechanics. (2015/07)

2) Aru Toyoda, Takeshi Furuichi, Yuzuru Hamada, Suchinda Malaivijitnond, and Tamaki Maruhashi (2015) Rare Case Report of Infant Carrying on Stump-tailed Macaques (Macaca arctoides) in Khao Krapuk Khao Taomo, Thailand. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015 /12, Bangkok).

3) Hikaru Wakamori and Yuzuru Hamada (2015) Tail Tells the Adaptation of Macaques: Length, Inter-Transverse Process width and Caudal Vertebrae Body Moprphology. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015 /12, Bangkok).

4) Janya Jadejaroen, Yuzuru Hamada, Yoshi Kawamoto, and Suchinda Malaivijitnond (2015) Sexual Behaviors of Hybrids between Rhesus Macaca mulatta and Long-tailed M. fascicularis Macaques. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015 /12, Bangkok).

5) Porrawee Pmochote, Tadashi Sankai and Yuzuru Hamada (2015) Influence of Physical Activity on Vertebral Osteoarthritis in Captive and Free-ranging macaques. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015 /12, Bangkok).

6) Porrawee Pomchote, Tadashi Sankai, Yuzuru Hamada (2015) Age-related and reproductive aging-related changes in bone mass and osteoarthritis in female Japanese and cynomolgus macaques. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

7) Sellers WI, Brassey CA, O'Mahoney T, Yoxhall A, Hirasaki E (2015) Measuring 3D primate finger movements: the application of video photogrammetry. The Anthropology of Hand Conference. (2015 /06)

8) Srichan Bunglungsup, Yuzuru Hamada, Hiroo Imai, Suchinda Malaivijitnond (2015) Subspecific hybridization between Macaca fascicularis fascicularis and Macaca fascicularis aurea. 第31回日本霊長類学会大会(2015 /07, 京都市).

9) Srichan Bunlungsup, Hiroo Imai, Yuzuru Hamada, Kazunari Matsudaira and Suchinda Malaivijitnond (2015) Genetic Diversity of Long-tailed Macaque and the Impact of Gergraphical Barrier on Hybridization. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015 /07, Bangkok).

10) Suchinda Malaivijitnond, Yuzuru Hamada (2015) Who Is the Real Culprit behind Macaque Hybridization in Thailand? Vth International Wildlife Management Congress (2015 /07, Sapporo).

11) Yuzuru Hamada (2016) Brain Development and somatic growth: what supported the evolution of brain? International Symposium "How Humans Evolved Supersized Brains: The growth of the brain" (2016 /03, Toyama).

12) Yuzuru Hamada (2015) Morphological Cues to Determine Hybridization Rate between Exotic and Japanese Macaques. Vth International Wildlife Management Congress (2015/07, Sapporo).

13) Yuzuru Hamada, Hiroyuki Tanaka, Yoshi Kawamoto, Hikaru Wakamori, and Suchinda Malaivijitnond (2015) Evolutionary geography of macaques (Macaca spp.) in Asia. International Symposium on Primate Diversity in East and Souteast Asia (2015/12, Bangkok).

14) 加賀谷美幸、青山裕彦、濱田穣 (2015) 肩甲骨・鎖骨の立体配置と上腕の可動域:旧世界ザルと新世界ザルの4種比較. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

15) 山田博之、濱田穣、國松豊、中務真人、石田英實 (2015) チンパンジーの乳犬歯形態. 日本人類学会第69回大会(2015/10, 東京都).

16) 若森参、濱田穣 (2015) アッサムモンキーの尾の使い方. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

17) 酒井朋子、三上章允、小牧裕司、畑純一、松井三枝、岡原純子、岡原則夫、井上貴司、佐々木えりか、濱田穣、鈴木樹里、宮部貴子、松沢哲郎、岡野栄之 (2015) ヒト、チンパンジー、コモンマーモセットにおける脳梁発達の比較研究:ヒト特異的な脳構造の発達機構の解明に向けて. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

18) 小川秀司、Mukesh Kumar Chalise, Suchinda Malaivijitnond, Mayur Bawri, 濱田穣 (2015) ネパールとタイとインドのアッサムモンキーの調査地. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

19) 川本芳、白井啓、直井洋司、萩原光、白鳥大祐、川本咲江、濱田穣、川村輝、杉浦義文、丸橋珠樹、羽山真一 (2015) 房総半島におけるニホンザルと外来アカゲザルの交雑状況評価. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

20) 伯田哲矢,長谷和徳,平崎鋭矢,林祐一郎 (2015) 環境を考慮したニホンザルの四足ロコモーションモデル.第36回バイオメカニズム学術講演会. (2015/11 )

21) 平崎鋭矢、矢野航、RAE Todd (2015) Colobus属とPresbytis属の近縁2種間における半規管サイズの比較.第69回日本人類学会大会. (2015 /10)

22) 平崎鋭矢,大石元治 (2016) 形態分析と運動分析から見た霊長類の足の機能軸について. 第121回日本解剖学会総会・全国学術集会.(2016 /03)

23) 澤野啓一、横山高玲、吉川信一朗、田中健、加藤隆弘、百々幸雄、鈴木敏彦、澤田元、中務真人、濱田 穣、萩原浩明、井上登美夫、川原信隆 (2015) 隣接する異質な臓器へ血液供給する2本の基幹動脈は、どのような走行分岐様式を取るか? 「総頚動脈系」と「腹腔動脈・上腸間膜動脈系」との比較検討(その1) 人類進化の観点から. 日本人類学会第69回大会(2015/10, 東京都).

24) 濱田穣、Nguyen Van Minh、Porrawee Pomchote (2015) ニホンザル(Macaca fuscata)身体のオトナ期における年齢変化. 日本人類学会第69回大会(2015/10, 東京都).

25) 濱田穣、川本芳 (2015) アッサムモンキー(Macaca assamensis)とその近縁分類群の系統発生学と分類. 第31回日本霊長類学会大会(2015/07, 京都市).

講演

1) 濱田穣 (2015) ヒトの進化:脳と寿命と家族と脂肪.奈良県立奈良高等学校SSH事業まほろば・けいはんなSSHサイエンスフェスティバル.(2015/10/31)

2) 濱田穣(2015) 霊長類の生息地と保護. 横浜国際高校.(Supr Grobal Highschool).(2015/6/15)