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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.46 > Ⅰ. 巻頭言


Ⅰ. 巻頭言

平成29年6月1日に京都大学霊長類研究所は、創立50周年の記念日を迎えます。平成28年度には、この50年の霊長類研究所の歩みを総括すべく記念シンポジウム「ホミニゼーション研究の過去・現在・未来」などの事業を準備しておりますが、それに先立ってここに平成27年度の成果報告書である年報を上梓いたします。

国立大学、とりわけ附置研究所・研究センターを取り巻く環境は決して楽観できる状況ではありません。国からは大学改革・機能強化の推進の指示が強く示されています。そのうちの改革のひとつとして全国86国立大学を3つの区分に分けて重点支援をおこなうというものが挙げられています。端的に言えば、第1のグループは「地域に貢献する教育研究の推進」、第2のグループは「世界ないし全国レベルの教育研究の推進」、第3のグループは「海外の卓越大学と伍した教育研究の推進」です。京都大学は、第3の重点支援を選択しています。「海外の卓越大学と伍した教育研究の推進」にふさわしい大学の機能強化の方針が示され、その方針に沿った各部局の概算要求の内容等が確定されています。その一環として一昨年度の後半から京都大学の22の研究所・センターを一括りにした「京都大学研究連携基盤」組織の実施が概算要求で認められました。「京都大学研究連携基盤」を推進する未踏科学研究ユニットという構想が進んでいます。霊長類研究所も他の7部局と連携して、「ヒトと自然の連鎖生命科学研究ユニット」を組織し、新たな教育研究の窓を開けようとしています。

これらの改革に対応する形で、平成27年度、研究所の部門改編をおこないました。4部門を5部門とし、各部門に2分野を配置して、5部門10分野2附属施設の体制としました。これは部門内の分野構成を所外からわかりやすくするための措置です。組織を見やすくした上で学際的・国際的・人際的教育研究を積極的に推進していきます。全学レベルでも教育組織の改革が進められ、学問体系の括りを明確にして教育の推進や人事をガラス張りにするという組織(学域・学系)が設置され、これらの改革は第3期中期目標・中期計画に合わせて平成28年度から新しい組織が本格的に始動を始めました。霊長類研究所は野生動物研究センターと2部局で「霊長類野生動物学系」を組織して、教授・准教授・講師等の人事を行っていくことになりました。

大学の組織が大きく見直されようとしていますが、研究所の研究体制はよい方向に進展していると自負しています。例えば、国際化の推進の指標に使われる国際共著論文の比率は47%を超えています。これは、先達たちが推進してきた海外フィールドならびに研究拠点の開発に加えて、共同研究・共同利用拠点の国際化や大学院生の国際競争力増強の賜物と思われます。さらに、論文数が年平均160編前後に落ち着いています。これは教員1人当たり4編に相当します。ジャーナルの評価のひとつの指数であるインパクトファクターの3ポイントを超える論文が2割7分になっています。さらに科研費やその他補助金の獲得率は教員数(特定教員を含む)41の平均1.6件の採択数(採択率57.4%)で、獲得金額は1人平均11.9百万円(合計487,071千円)となっています。これらは比較的高い獲得率・額といってもよいでしょう。しかし、運営費交付金の毎年削減が継続されることを鑑みれば、このことに満足することなく、各教員や研究者はさらに外部資金等の研究費の獲得に邁進することが必要です。

大学のシステムが大きく見直されることを考えれば、研究所も将来を見据えた将来構想が必要です。それを進展させ支えるには皆様からのお力添えが必要です。本年報を研究所の自己点検資料として評価していただき、さらなるご指導ならびにご鞭撻を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

所長 湯本 貴和