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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > Vol.45 > Ⅲ. 研究教育活動 Ⅲ. 研究教育活動 1. 研究部門及び附属施設 長期野外研究プロジェクト <研究概要> A) 東南アジア熱帯林の霊長類の社会生態学的研究 松田一希, 半谷吾郎 (生態保全分野), 大谷洋介 (生態保全分野) 2005年より、マレーシアサバ州のスカウ村、アバイ村を拠点とした霊長類(特にテングザル)の長期観察プロジェクトを行っている。本プロジェクトでは、テングザルの社会生態、採食生態、行動生態の観点から研究を進めている。また、テングザルと同所的に生息している他の昼行性霊長類(オランウータン、テナガザル、カニクイザル、ブタオザル、シルバーラングール)や地上性哺乳類(ヒゲイノシシ、サンバー、マメジカなど)の基礎的な生態・社会の研究も同時に行っている。特にテングザルとブタオザルについては、GPS内蔵の発信機の装着を行い、移動パタンと食物資源量の関係性をさぐる研究を昨年度から継続して行っている。また、霊長類の腸内細菌叢と食性の関係性を探る研究を開始した。腸内細菌叢の研究に関連して、特にテングザルにおいては前胃内の微生物叢の同定とその起源を探る研究も昨年度から継続して行っている。また本年度から、アジア産コロブスの詳細な消化機構を解明するため、飼育下のコロブス類を対象に消化実験を開始した。 B) カリンズ森林保護区に棲息する野生霊長類の研究 田代靖子,松田一希,橋本千絵(生態保全分野),古市剛史(社会進化分野),松尾ほだか(社会進化分野) ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する霊長類の研究を行った。グエノン類3種の行動学的データ、遺伝学的試料、植物試料を収集した。2012年より行っているゲレザの生態調査と、対象群の移動範囲内の植物フェノロジー調査を本年も継続して行った。加えて、本種の食物選択性(特に葉の選択性)を明らかにするため、葉の栄養分析、強度の測定を行った。また集めた葉を粉砕し、牛のルーメン液と混ぜて発生するガスを計測することで、ゲレザの前胃内における葉の消化効率を見積もるための実験も行った。ゲレザの腸内細菌叢の季節変異を明らかにするため、定期的に糞の収集も行った。また、チンパンジー2集団を対象に、集団間の出会いの交渉、社会行動の違い、採食行動についての長期的データを収集した。果実量についても月1回データをとった。人獣共通感染症の研究を進めるために、糞試料による寄生虫の調査を行ったほか、感染の履歴を調べるための糞・尿試料を収集した。さらに、エコツーリズムの影響を調べるために、観光客に対するチンパンジーの行動のデータを収集した。 C) ボノボの社会構造・集団間関係と地理的行動変異の研究 坂巻哲也, 古市剛史(社会進化分野) コンゴ民主共和国、ルオー学術保護区、ワンバ地区のボノボ調査を継続した。個体識別された隣接する2集団を日々追跡し、社会関係、活動時間配分、採食、遊動、集団間交渉、個体の移籍などの長期的データを収集した。これら対象2集団に隣接する集団の調査を断続的に行ない、人づけと個体識別を進めた。ルオー学術保護区と隣接するイヨンジ・コミュニティ・ボノボ保護区においては、1集団の人づけを継続し、ワンバ地区のボノボと比較する、行動の地理的変異の調査を継続した。両調査地の間で、ボノボの肉食行動における地理的変異が明らかになり、それと関係しうる哺乳類相のセンサスを両地域で行った。
<研究業績> 原著論文 1) Matsuda I, Tuuga A, Hashimoto C, Bernard H, Yamagiwa J, Fritz J, Tsubokawa K, Yayota M, Murai T, Iwata Y, Clauss M (2014) Faecal particle size in free-ranging primates supports a “rumination” strategy in the proboscis monkey (Nasalis larvatus). Oecologia,174,4,1127-1137. 2) Terada S, Nackoney JR, Sakamaki T, Mulavwa MN, Yumoto T, Furuichi T (2015) Habitat use of bonobos (Pan paniscus) at Wamba: selection of vegetation types for ranging, feeding and night-sleeping. American Journal of Primatology 77: 701–713. 3) Furuichi T, Sanz C, Koops K, Sakamaki T, Ryu H, Tokuyama N, Morgan D (2015) Why do wild bonobos not use tools like chimpanzees do? Behaviour 152: 425–460. 4) 坂巻哲也(2015)「出会いの挨拶を考える:チンパンジーとボノボのはざ間で」『動物と出会うⅠ:出会いの相互行為』(木村大治編、ナカニシヤ出版)pp. 185-187. 5) 坂巻哲也(2014)「ボノボとチンパンジーのロコモーションと生態」バイオメカニズム学会誌、Vol.38, No.3, 181-186. 6) 坂巻哲也(2014)「ボノボ」『アフリカ学事典』(日本アフリカ学会編、昭和堂)pp. 462-463. 学会発表 1) Furuichi T, Sanz C, Koops K, Sakamaki T, Ryu H, Tokuyama N, Morgan D. (2014) Why do wild bonobos not use tools for foraging?A comparison between bonobos at Wamba and chimpanzees in the Goualougo Triangle. The 25th Congress of the International Primatological Society, Hanoi, Vietnam, August 2014. (Aug 14, oral presentation) 2) Ryu H, Sakamaki T, Yamamoto S, Furuichi T. (2014) Mothers make alpha males: Mother-dependent dominance changes among male bonobos at Wamba. The 25th Congress of the International Primatological Society, Hanoi, Vietnam, August 2014. (Aug 13, oral presentation) 3) Sakamaki T, Mulavwa M, Ryu H, Takemoto H, Tokuyama N, Yamamoto S, Yangozene K, Furuichi T. (2014) Intergroup relationships in bonobos at Wamba: Chronological variations in a long-term study. The 25th Congress of the International Primatological Society, Hanoi, Vietnam, August 2014. (Aug 14, oral presentation) 4) Tashiro Y (2014) "Hunting Craze" by blue monkeys (Cercopithecus mitis) in the Kalinzu Forest, Uganda. The 25th Congress of International Primatological Society (2014/8, Ha Noi (Vietnam)) 5) Tashiro Y (2014) Research on guenons and colobus in the Kalinzu Forest, Uganda. JSPS Core-to-Core Program Symposium: Ecology and Conservation of Great Ape Populations (2014/12, Kampala (Uganda)) 6) 五百部裕, 田代靖子 (2014) ウガンダ共和国カリンズ森林における中・大型哺乳類の生息密度. 第30回日本霊長類学会大会 (2014/7, 大阪) 7) 田代靖子, 五百部裕 (2014) アロマザリング(代理母)行動は母親の利益になるか? ーロエストモンキーの事例報告-. 日本アフリカ学会第51回学術大会 (2014/5, 京都) 8) 松田一希 (2014) アフリカ産オナガザル類を研究する意義. 日本アフリカ学会第51回学術大会(2014/5). 9) 松田一希 (2014) Nocturnal activity in a flooded forest primate – the proboscis monkey. XXV International Primatological Society Congress(2014/8). 10) 松田一希 (2014) Usage of riverine forest by two species of macaques, in Borneo. XXV International Primatological Society Congres(2014/8)s. 11) 松田一希 (2015) サルはなぜ川岸で眠るのか:ボルネオ島に生息する霊長類複数種の河岸林利用形態. 日本生態学会第62回全国大会(2015/3). 講演 1) 松田一希 (2015) 自動撮影カメラによる動物観察:ボルネオ島の塩場に集まる動物たち. 京都大学霊長類研究所共同利用研究会『豪雪地域におけるニホンザルの洞窟利用』.(2015/3). 2) 松田一希 (2015) Proboscis Monkey - Mysterious Monkey in Borneo. Biological Colloquium in University of Veterinary Medicine Hannover.(2015/1). 3) 松田一希 (2014) Following the Trail of the Elusive Proboscis Monkey in Borneo. Biological Colloquium in Institut Pluridisciplinaire Hubert Curien, Université de Strasbourg.(2014/12). 4) 松田一希(2014) Phylognetic relationships of Trachypithecus cristantus and Trachypithecus obscurus in Malaysia. (2014/8). |