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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2013年度・目次 > ナショナルバイオリソースプロジェクト

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.43 2012年度の活動

Ⅵ. ナショナルバイオリソースプロジェクト

1. ナショナルバイオリソースプロジェクト(ニホンザル)の活動

平成14年度から文部科学省により開始されたナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の一環である。自然科学研究機構生理学研究所を中核機関、京都大学霊長類研究所を分担機関として、安全で健康なニホンザルを日本のさまざまな研究機関に供給することを目的として実施している。平成24年度より、第3期(5年計画)に入った。現在、350?400頭のニホンザルの3分の2を小野洞キャンパス(第2キャンパス)内で、3分の 1 を官林キャンパス(第1キャンパス)内で飼育している。

平成24年度より、新たに中村克樹を分担機関の代表者として実施した。また、事業の円滑な実施のために霊長類研究所内に推進室を設けた。

実績は以下の通りである。第1の実施項目「ニホンザルの飼育繁殖」に関しては、新たに NBR 専属の獣医師を雇用し、さらに充実した飼育・繁殖体制にするよう努めた。平成24年度末の実績として、母群総数が222頭、繁殖育成群が132頭である。ここ数年問題となっていたサルレトロウィルス(SRV)も沈静化でき、現在年間50頭供給可能な体制が確立できたと考えられる。第2の実施項目「ニホンザルの供給実施」に関しては、47頭を研究用ニホンザルとして供給した。より質の高いニホンザルの供給に向けて、供給前の検査の見直し等も行った。また、ライセンス講習会とそれに続く実習を霊長研内で行った。第3の実施項目「ニホンザルの疾病対策と健康管理」に関しては、飼育全頭を対象とした定期健康診断を含む健康確認を実施した。また、SRV を原因とするニホンザル血小板減少症の発症メカニズムを解明するための研究を専属の研究員を中心として実施した。また、分担機関で飼育しているニホンザルだけではなく、中核機関の飼育ニホンザルも含め全頭を対象とした SRV 検査を実施した。出荷検疫における SRV の検査も行った。第4の実施項目「父子判定」に関しては、ニホンザルでは通常分からない父子の関係を、マイクロサテライトを用いた父子判定を実施することにより同定し、付加情報として研究者に提供した。また、今年度より新たに分担機関として広報活動の一部も担うこととした。第5の実施項目「広報活動」に関しては、包括脳夏のワークショップ・日本神経科学学会・日本霊長類学会・日本分子生物学会等でのポスター展示、公開シンポジウム等を行った。

さらに本事業の将来的計画の一環として、供給対象研究分野の拡大、供給形態の多様化、その他繁殖や供給に関連するいくつかの問題を検討し、解決方法をプロジェクト全体として検討した。

(文責:中村克樹)

2. ナショナルバイオリソースプロジェクト(GAIN)の活動

GAIN:大型類人猿情報ネットワークの展開

GAIN:大型類人猿情報ネットワークの展開
本事業は、平成 14 年度に文部科学省の主導で発足したナショナルバイオリソースプロジェクトの一環である。

事業の正式名称「情報発信体制の整備とプロジェクトの総合的推進」(大型類人猿情報ネットワークの展開)。英文名称を Great Ape Information Network、英文略称を GAIN とする。GAIN 事業は、平成 24 年度も、京都大学霊長類研究所と野生動物研究センターの両部局の共同運営事業と位置づけた.平成 24 年度に措置された交付金額は年額960 万円で前年度と同額である。落合知美、綿貫宏史朗の 2 名の研究員を雇用して実務にあたっていただいた。また親事業である「情報」を統括する国立遺伝学研究所(小原雄治所長)ならびに責任者である系統情報研究室の山崎由紀子先生から厚いご支援をいただいた。事業代表者(課題管理者)は松沢哲郎、経理担当者は上垣泰浩。

平成 24 年度の事業内容としては、大型類人猿の死亡や出生に応じて適宜データベースを更新した.平成 25 年 5月 11 日現在で、チンパンジー326 個体(51 施設),ゴリラ 24 個体(9 施設),オランウータン 47 個体(20 施設)、テナガザル類 121 個体(38 施設)が国内で飼養されている.個体ごとの生年月日や家系情報に加えて,DNA 情報・行動情報についても整備をすすめている.グローバル COE プログラム(生物の多様性と進化研究のための拠点形成―ゲノムから生態系まで:京都大学・阿形清和リーダー)と協力して,「霊長類ゲノムデータベース」を作成・公開している.また 3 次元骨格標本(CT 画像)を GAIN 由来の類人猿個体分について「デジタル形態博物館(霊長類研究所資料委員会)」で公開している.死体由来・生体由来(非侵襲)資料の配布については、共同利用・共同研究制度と連携して促進する体制が確立している.事業参加者である西村剛、郷康弘、今井啓雄の 3 名の教員らが中心となって、非侵襲資料の共同利用研究を推進した。日本霊長類学会大会、日本分子生物学会年会、第 15 回SAGA シンポジウムで、研究者や動物園関係者に GAIN 事業の広報をした。国内でチンパンジーを最も多く飼育している京都大学野生動物センター熊本サンクチュアリ(KS)は、平成 24 年度末に旧林原類人猿研究センターから8 個体を引き取り 61 個体のチンパンジーを保有している。なお、平成 24 年 5 月 15 日に民間医学研究施設から 3個体が KS に引き取られた。これをもって、日本の医学感染実験チンパンジーはゼロになった。今後は、ナショナルバイオリソース事業の第 1 期(平成 14-18 年度)と第 2 期(平成 19-23 年度)の成果を引き継ぎ、飼育施設と研究者を結ぶネットワークや個体情報データベースのさらなる充実をめざす。詳細は、以下の HP を参照されたい。http://www.shigen.nig.ac.jp/gain/

(文責:松沢哲郎)

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