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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2013年度・目次 > 大型プロジェクト

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.43 2012年度の活動

Ⅴ. 大型プロジェクト

1. 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP-HOPE)

日本学術振興会の支援事業である。事業名「人類進化の霊長類的起源の解明に向けた若手研究者育成国際プログラム HOPE」、英文「International Training Program for Young Researchers : Primate Origins of Human Evolution (HOPE)」。平成 21-25 年度の 5 年間の事業の 4 年目である。

霊長類研究所は、霊長類研究における国内唯一のセンターとして、また国際的な研究拠点としての役割を果たしてきた。霊長類以外の動物に研究を展開するために 2008 年に野生動物研究センターを発足させた。京都大学霊長類研究所と野生動物研究センターの研究をもとに、「ワイルドライフ・サイエンス」と呼べる新たな学問領域の確立をめざしている。日本の霊長類学の世界におけるリーダーシップをより強固にするために、2004 年から始まった日本学術振興会先端研究拠点事業 HOPE プロジェクト(「人間の進化の霊長類的起源」の研究)によって、欧米で核となって霊長類学を推進する 6 つのパートナー機関との間で相互訪問や共同研究を行い、その成果を公表するための国際シンポジウムを日本で毎年開催してきた。

平成 24 年度の事業目標達成状況としては、過去 3 年間と同様に着実にパートナー機関との交流を深めることができた。3 つの特筆すべき点がある。

第1は、日本人の若手研究者によって、世界各地で霊長類およびその他の絶滅危惧の動物を対象とした野外研究が進展したことである。それにともなって若手研究者による学術論文等の成果が出始めた。

第 2 は、AS-HOPE と呼ぶ別途資金での 3 年間の助成(平成 22-24 年度合計で、31 カ国、合計 230 人、5505 人日の派遣)との相互補完的な相乗効果で、野外の研究基地が通年で運営されるような体制が整ってきたことである。とくに、ブラジルのアマゾンでの野外研究の端緒が開かれた。

第 3 は、国際集会の開催 3 件(4 月京都の野生チンパンジー、11 月ボルネオの野生オランウータン、12 月新祝園の国際高等研究所の主催による「心の進化的起源」)で、外国人研究者との交流が深まった。そうした国際化をもとに、外国人の大学院留学生の希望が増え、国際霊長類学・野生動物コースを受験して入学するものが増え、結果として大学院生および PD における外国人比率が 20%を超えるまでになった。

以上の成果をもとに、「ワイルドライフ・サイエンス」と呼べる新しい研究領域の展開が展望できるようになった。派遣実績は以下のとおりである。


平成 24 年度の合計は以上の、若手研究者 10 件および担当教職員 13 件の計 23 件である。派遣日数は、若手研究者 1,056 日および担当教職員 121 日の計 1,177 日となった。経費総額は、15,223,000 円だった。

(文責:松沢哲郎)

 

 

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2. 組織的な若手研究者等海外派遣プログラム(AS-HOPE)

事業名「人間の本性の進化的起源に関する先端研究」、英文は「The advanced studies on the evolutionary origins of human nature」、略称は AS-HOPE. 事業期間、平成 22 年 3 月 1 日から平成 25 年 2 月 28 日までの 3 年間。事業実施総額 77,819 千円。

本事業の実績として2つ挙げる。第1は、国際化した新しい霊長類学の創出である。国際霊長類学・野生動物系という大学院の受け皿を作って、英語で教育する英語コースを開設し、若手研究者を海外から呼び込むと同時に日本の若手研究者を多数海外に送り出すことができた。第2は、霊長類以外の野生動物を対象にした研究の推進である。平成 24 年度の特記事項としては、アマゾン合宿をおこなった。教員・大学院生がブラジルの国立アマゾン研究所と連携して、現地で野外調査と国際シンポジウムを開催した。

平成 24 年度の派遣実績は以下のリストのとおりである。



平成 24 年度の合計は以上の 65 件、延べ派遣日数の合計は 1,991 日、経費総額は 29,281,483 円(うち、1 件は一般管理費による派遣実績で、派遣日数 10 日、487,642 円)であった。3年間の事業期間中に、学生を含む若手研究者および担当教員 延べ人数 204 名が、延べ派遣日数 5,505 日間にわたり海外での研究を行った。

(文責:松沢哲郎)

 

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3. 最先端研究基盤事業:心の先端研究のための連携拠点(WISH)構築

事業名「心の先端研究のための連携拠点(WISH)構築)」。略称「心の先端研究 WISH 事業」。事業実施機関は京都大学(心理学・認知科学等を実施する大学等の 8 研究機関連携、事業代表者:松沢哲郎)。事業概要は、ヒト,チンパンジー等の比較認知実験等をおこなうネットワーク研究拠点を整備し,心理学,認知科学,脳科学や社会
科学の分野を超えた学際研究を行い,他者との相互作用による心のはたらきを解明するための先端研究を推進する。実施期間 3 年間、平成 22-24 年度。平成 24 年度の補助金額は 4 億円。本事業により、比較認知科学実験設備として、大型ケージ犬山 1 号機と犬山 2 号機を設置し 1 号機の運用を開始した。また熊本 1 号機の運用も開始し 2号機も年度末に設置した。合計 4 セットの大型ケージが設置されケージ間の連絡回廊もできた。これにより自由に離合集散する群れ全体を研究対象としつつ、顔認証システムの導入で 1 人ひとりを個体識別したうえでの社会交渉実験が可能になった。また遠隔地からの操作による実験を準備している。「ヒト・チンパンジー・ボノボのヒト科3種の比較認知科学実験」を実現する第一歩を踏み出せたといえる。なお人間を研究対象にした fMRI 設備については、平成 23 年度末に京大本部構内病院西地区にシーメンス社(3 テスラ)を導入し、こころの未来研究センターが運用を開始した。心の先端研究 WISH 事業を実施する中核組織として、京都大学に「心の先端研究ユニット」が発足し、心理学・認知科学を標榜する京大の 11 部局 67 名の教員が参加した(平成 24 年度のユニット長:教育学研究科・子安増生)。なお詳細は、以下の HP を参照されたい。http://www.kokoro-kyoto.org

(文責:松沢哲郎)


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4. アジア・アフリカ学術基盤形成事業:ヒト科類人猿の環境適応機構の比較研究

事業の目的

チンパンジー(Pan)属のチンパンジーとボノボは熱帯多雨林からサバンナウッドランドにいたる多様な環境に生息しており、それぞれの地域で様々な社会構造や道具使用を発達させて食物環境とその年変動・季節変動に対応している。これらの種の環境適応戦略の進化を地域間の比較を通じて解明することは、類人猿の進化の解明にとどまらず、Pan 属との共通祖先から派生してより乾燥した地域で生き残り、そこから世界のあらゆる環境に進出したヒトの進化の出発点を探る上でも、きわめて重要である。京都大学霊長類研究所は、その教員が代表を務める Pan 属の長期調査地をギニア共和国のボッソウ、コンゴ民主共和国のワンバ、ウガンダ共和国のカリンズと 3 カ所ももつ。この研究交流の目標は、これら 3 国の 6 つの拠点機関との人的交流と共同研究によって共同研究のネットワークを確立し、Pan 属の生態学的・進化学的な研究の世界的な核を形成することにある。

平成 24 年度の研究交流成果

研究協力体制の構築状況

霊長類研究所で 10 月 26 日~11 月 14 日まで 23 日間にわたって「霊長類個体群の保全に関する研究手法」というワークショップを開催し、6 つの拠点機関から 6 名と欧米人専門家 2 名を招へいしたほか、他費により 3 つの拠点機関から 3 名の代表者と欧米人専門家 2 名を招へいし、本研究プロジェクトを推進するための様々なレクチャーを行うとともに、今後の共同研究の進め方や最終的な目標であるアフリカ霊長類学会の設立に向けた取り組みなどについての議論を重ねた。2013 年 1 月に実施した交流プログラムでは、ウガンダ及びギニアの 4 拠点の研究者 4 名をコンゴ民主共和国の 2つの拠点に派遣し、研究活動の視察と相互の研究成果の報告、共同研究に向けた討論等をおこなった。

学術面の成果

コンゴ民主共和国のルオー保護区のボノボとウガンダ共和国のカリンズ森林保護区のチンパンジーを対象として、孤立個体群の遺伝的多様性の劣化とヒトから類人猿の感染する感染症の調査のための糞尿サンプルを、組織的かつ継続的に収集した。さらに、これらのサンプルの分析によって、ボノボの生息域全域にわたる遺伝子型の分布様式と、孤立集団における遺伝的多様性の劣化を明らかにした論文を発表した。研究・保護活動が類人猿の保護にどのように貢献しているかを分析する世界の多くの研究者との共著論文を出版した。

若手研究者養成

日本人若手研究者については、3 名が 3 カ国に出張し、アフリカ側研究者および現地調査補助員と協力して遺伝的多様性と人獣共通感染症のモニタリングのためのサンプル収集を行った。また、霊長類研究所で行ったワークショップには、アフリカ 6 拠点から 6 名の若手研究者が参加したほか、日本側参加研究者も含めて多数の日本人若手研究者が参加し、近年の研究の動向に関する知見を深め、遺伝子分析や地理情報システム(GIS)の利用法のトレーニングを積んだほか、国際感覚の育成、会議等運営のノウハウの習得等多くのことを学んでもらうことができた。

社会貢献

本研究プロジェクトの一環として、国際自然保護連合によるボノボの保護のアクションプラン作りに参加し、2013 年 1 月に出版した。
1973 年以来野生ボノボの研究を進めてきたルオー学術保護区に隣接する地域に、African wildlife foundation、Foret de Bonobo(ローカル NGO)との協力で、あらたにイオンジ・コミュニティー・ボノボ保護区を設立した。

(文責:古市剛史)

 

 

 

 

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5. 環境省 環境研究総合推進費:高人口密度地域における孤立した霊長類個体群の持続的保護管理に関する研究

本研究では、20 年後の世界に多くの霊長類種が将来にわたって存続可能な状態で残っていることを究極の目的とし、孤立個体群の存続のリスク要因に関する学術的な研究と保護政策への提言を、これまで日本人研究者が深く関わってきたアフリカ、アジア、日本のフィールドで実施してきた。3 年計画の最終年度である本年度の成果は以下の通りである。

1) 最小存続可能集団の定義にむけた孤立個体群の生態学的・集団遺伝学的研究

・GIS を用いたボノボの生息地評価を行い、保護区としてカバーされていない生息適地を割り出した。そのひとつであるイオンジ地区については、これまでの活動の結果、2012 年 4 月にイオンジ・ボノボ・コミュニティ・リザーブの設立がコンゴ民主共和国環境省によって認可された。

・糞サンプルから抽出する DNA の分析により、個体群間の交流、個体群の成立過程、個体群の適応度が遺伝子多型の地域分布におよぼす影響を解析する手法を開発した。

・ボノボの生息域全域にわたる 7 つの地域個体群を対象に、遺伝子変異の分布と個体群内の遺伝的多様性を調べた。これにより、ボノボの遺伝子変異の分布が 3 つのコホートに分けられること、他から孤立した個体群では遺伝的多様性の低下が見られることがわかった。

2) 孤立個体群における人獣共通感染症のリスクアセスメントとサーベイランス

・前年度に引き続き、類人猿の各生息域における感染流行状況のサーベイランスを継続するとともに、ウエスタンブロット法による確定検査法を確立・実施した。

・ボノボの野生個体群で、きわめて多くの個体がヒト由来の呼吸器感染症ウイルスに感染していることを初めて明らかにした。また、抗ウイルス抗体保有率に大きな地域差があることを明らかにした。これらの情報をもとに、感染拡大防止のための研究者や研究補助者、観光客等による観察方法に関するガイドラインについて検討を進めた。

3) 孤立個体群の現状分析と生息地の維持・回復のための生態学的・社会学的研究 

・データベースで得られたパラメーターを用い、下北半島のニホンザルをモデルにした存続予測分析を行い、観察値とうまく合致することを確認した。 

・下北半島のニホンザルの個体数の将来予測を行い、現在の保護管理計画による個体数調整(個体群の 3.5%を除去)の効果を推定した。 

以上の研究成果をもとに、国際自然保護連合のワークグループに参加し、ボノボの保護に関するアクションプランを作成して出版した。 

(文責:古市剛史) 

 

 


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6. 頭脳循環プログラム

「人間らしさの霊長類的起源をさぐる戦略的国際共同研究」

最先端研究開発戦略的強化費補助金による,若手研究者の人材育成と国際共同研究の有機的連携による事業の推進として実施される,頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラムである。平成22年度10月から開始された通算1年以上滞在する長期派遣事業であり,平成25年3月31日までの3年度実施されたものである。平成22年度6,100,000円,23年度14,330,000円,24年度16,541,000円,2年半で合計36,971,000円が措置された。

本プログラムは,イギリス、オランダ、ドイツ、マダガスカル、ウガンダにおいて、長期滞在派遣事業として、実験室研究ならびにフィールド観察をより深化させることを目的に、「人間らしさ」の研究に関連する3件の課題を推進した。

(1)意識のメカニズム:麻酔効果実験ならびにデータの理論的解析を用いてヒトを含む霊長類における麻酔薬の薬物動態、薬力学的基盤をさぐる。派遣者の宮部貴子は英国リンカーン大学で動物行動評価と意識評価の解析を行った。オランダ・フローニンゲン大学医療センター(UMCG)では術中の麻酔薬の量を調節する方法として,脳波を指標としたBISモニター法を習得し,より的確な麻酔技術を確立した。また,NONMEMという薬物動態解析ソフトウェアを用いて、プロポフォールの量と効果の関係についてのモデルを作成する技術を習得した。そのパラメータとBIS値データを組み合わせて各個体の最適な麻酔動態モデルを作り上げることができるようになった。

(2)ヒトの音声言語の起源:人間社会の重要なコミュニケーション手段である音声の霊長類的基盤をさぐる。派遣者の香田啓貴は派遣先の英国セントアンドリューズ大学の連携機関であるエディンバラ動物園において共同研究をおこなった。エディンバラ動物園で混合飼育されているフサオマキザルとリスザルの「混群」を対象とし,異種間コミュニケーションについて解析をおこなった。キャンベルズモンキーの解析では,ヒトの会話とヒト以外の霊長類のコミュニケーションに共通した会話ルールの存在とその後天的な学習のプロセスの共通性について系統的な連続性を示した。ニホンザルのフードコールの実験では,同所的に生息するシカがサルのフードコールを利用している「盗聴」の例を発見した。すなわち同じ採食メニューを利用するために異種間コミュニケーション(シカがニホンザルのフードコールに反応)を利用していることを明らかにした。派遣事業の最終段階では,フサオマキザルのコミュニケーションのなかでとくに新しい音声の利用法について観察をおこなった。

(3)母系・父系社会の発生機序:霊長類の原点ともいえる原猿類の社会構造を行動生態学的・分子集団遺伝学的に解析し,その社会進化の特徴を明らかにする。派遣者の市野進一郎は,20年以上の長期観察において蓄積した,マダガスカルのベレンティ保護区におけるワオキツネザルの社会行動のデータから,社会構造,社会組織,および配偶システムの解析を進め、以下の結果を得た。①ワオキツネザルの雌は生涯を通して繁殖をおこなう。②出産および幼児の生存は群れのサイズに正の影響を受ける。③雌の追い出しは大人雌の数に正の影響を受ける。④アカビタイキツネザルは大きい群れの方が繁殖上の不利益があり,追い出しもおきやすい。⑤ワオキツネザルでは繁殖への雄の関与は,優位雄に偏っている。また,父系社会の発生機序の解析において,担当研究者の橋本千絵は,ウガンダ・カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーM集団を対象に野外調査を行った結果,移入したばかりの若い未経産雌において,妊娠とそれに続く流産が起きていることを初めて明らかにした。

以上のように,2年半の事業展開における派遣者の努力によって,多くの新知見を得ることができ,また国際共同研究の推進の基盤を盤石なものにした。これらの成果は参加した若手研究者の今後の研究の発展と,国際共同研究ネットワークの拡充に多いに寄与するものと思われ,優れた派遣事業であったといえる。

(文責:平井啓久)

 


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7. 人間の進化

京都大学ブータン友好プログラム

特別経費事業「人間の進化」

特別経費(プロジェクト分)事業名「人間の進化の霊長類的基盤に関する国際共同先端研究の戦略的推進―人間の本性と心の健康を探る先端研究―」、事業代表者:松沢哲郎、担当教員:平井啓久、高田昌彦、中村克樹、古市剛史、岡本宗裕、濱田穣、友永雅己。事業実施期間:平成 23 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで(7 年間)

平成 24 年度の事業成果は以下の通り。本事業は、人間の進化を明らかにする目的で、世界初となるヒト科 3 種(人間とチンパンジーとボノボ)の心の比較を焦点とした霊長類研究を総合的に推進し、人間の「心の健康」を支えている進化的基盤を解明するものである。「ヒト科 3 種の比較認知科学研究」という新機軸を打ち立て、こころ、からだ、くらし、ゲノムという霊長類学の多様な研究分野で、日本固有の国際的な貢献を不動なものとする。第 2 年度となる平成 24 年度は、最先端研究基盤支援事業(平成 22-24 年度)と連動して、霊長類研究所のチンパンジー研究施設を充実させ、京都など遠隔地からの利用を可能にした。また京大野生動物研究センター・熊本サンクチュアリのチンパンジー研究施設も整備して、希少種の保全と研究の連携体制を構築した。これと平行してチンパンジーとボノボの野外研究をアフリカ(コンゴ民主共和国とウガンダ)でおこなった。また補完するものとしてアジアの霊長類研究(テングザルほか)を継続実施した。こうした国際連携事業のために、教員(3 名:平田・山本・松田)、外国人研究員(1名)、外国に常駐する研究員(2 名)、外国語に堪能な職員(2 名)等を配置して、英語による研究教育を充実させた。こうした研究基盤を支援するものとして、人類進化モデル研究センターに霊長類実験研究用大型設備(マカク用グループケージ第 3 号)を導入し、霊長類研究所が保有する 13 種 1200 個体のサル類の健康管理を追及する検査体制を確立した。具体的な研究成果としては、チンパンジーの注意や感情の比較認知科学研究が進んだ。またチンパンジー14 個体の全ゲノム解析をすすめ 3 個体を完了し、感覚遺伝子等について大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)でデータベース公開した。北米からのボノボの導入交渉も進んでおり、平成 25 年度中に導入する見通しで、事業はほぼ順調に推移している。

なお本事業の一部として、京都大学ブータン友好プログラムの主宰部局としての役割を果たしている。平成 24年度は、全学経費ならびに京都大学教育研究振興財団の支援をあわせて、派遣2 隊と初めての招聘2 隊を実施した。王立ブータン大学長のペマ・ティンレイ氏一行を平成 24 年 9 月に京都に招き、松本紘総長との面談が実現した。平成 25 年 5 月に大学間交流協定を締結する運びとなった。なお、西澤和子研究員を平成 23 年度に引き続き王立ティンプー病院に派遣している。活動の詳細は以下のホームページで確認されたい。http://www.kyoto-bhutan.org/

(文責:松沢哲郎)

 

 

 

 

 

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