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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2013年度・目次 > 巻頭言

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.43 2012年度の活動

Ⅰ. 巻頭言


山中教授のノーベル賞受賞は、大学の運営や研究の昨今の状況に光明を与えてくれました。学内の同僚の受賞は感激ひとしおです。一般の方の研究への再認識としても、とても意義深いものでした。受賞対象となった iPS 細胞は医学研究に輝かしい道を開きました。iPS 細胞の利用法は医療分野だけに限らず、霊長類研究にも新たな視点を与えてくれます。たとえば、希少種や付加価値をもった個体の iPS細胞を作製し、保存しておくことによって、貴重な遺伝子資源を半永久的に保存することができます。失うと二度と戻らない進化の産物を保存できるのです。また、実験に必要となる細胞や組織や臓器を iPS細胞から作製すれば、それぞれのモデルを提供することができます。すなわち、個体の消耗の削減、苦痛の軽減などにつながります。我々もチンパンジーのiPS細胞の作製に成功しました。共同利用・共同研究拠点事業の賜物です。

また、過去になくなった個体や資・試料を保存し、研究に供することも極めて重要です。霊長類研究所にはそのような標本が多く保存されていますし、最近では MRIや CT画像データも蓄積されています。これらを全所的に集中管理することは、貴重な財産である資・試料を散逸させないために真剣に検討するべき課題です。死亡個体の細胞も冷凍庫に保存しておけば、数年後・数十年後に再び甦らせることもできます。共同利用・共同研究拠点事業にとっても極めて利用価値の高い試料となります。昨年度から具体的な資・試料センター化の計画を始めました。

現在、2件の特別経費(プロジェクト分)が走っています。「人間の進化:人間の進化の霊長類的基盤に関する国際共同先端研究の戦略的展開」と「新興ウイルス:新興ウイルス感染症の起源と機序を探る国際共同先端研究拠点」です。前者はヒト科3種(ヒト、チンパンジー、ボノボ)を比較研究し、ヒトの進化を解明するものです。後者は新興ウイルスに対する対処法ならびにウイルスの進化をウイルス研究所との連携事業として解析するものです。昨年度の科学研究費の新規採択率は 50%でした。継続を含めると、現職の教員(特定を含む)の 77%が科研費を獲得しています。研究費の面では良い方向に進んでいるといえます。しかし、研究所の基盤を支える運営費が大幅削減されました。削減率は 17%にもなります。研究室や研究者に対する受益者負担や委員会の縮小等、大幅な経費見直しが必要です。この苦境を乗り切るには外部資金のこれまで以上の獲得でしょう。特に、より大型の外部資金を獲得する必要があります。そのためには、より良い、より多くの論文を執筆し、積極的に外部資金の獲得に挑戦する必要があります。この数年平均 150 編の原著論文(共著を含む)が出版されています。大学院生を含む研究者の人数で割りますと、1人平均 1.4 編の執筆です。さらに少なくとも 0.6 ポイント増やす必要があるでしょう。

平成22年度に始まった共同利用・共同研究拠点制度は、霊長類学の最新動向や研究者コミュニティーの要望を知る上で、また研究のネットワークを拡充する上で、極めて重要な事業です。特に大学院生をはじめとする若手研究者にとっては優れた研究経験の場でもあります。現在、拠点事業の中間評価を受けています。その事業を維持発展させるためには、各種霊長類の繁殖・育成・健康管理、資・試料の維持管理、実験室の整備が重要です。これらの向上のために、技術職員を筆頭に不撓不屈の精神で望み、全所的に対応しています。拠点事業をさらに発展させるためには、付加価値をもったモデルを提供することも重要と考えます。そのため、これまでのものに加えて行動モデルや細胞モデルを構築し、それを拠点事業に提供できるようにするた めの基礎研究を推進していく所存です。上に触れましたような内容の詳細が、この年報に綴られています。年報は昨年度一年の各種情報の整理と報告をおこなうことで、自己評価のひとつと位置づけています。今年も本年報をお届けいたします。研究所の評価の資料としてご利用いただければ幸に存じます。今後とも研究所に対するさらなるご指導、ご鞭撻をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

所長 平井啓久

 

このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会