京都大学霊長類研究所 年報
Vol.38 2007年度の活動
II 研究所の概要
資料
霊長類研究所が所蔵する資料は,骨格標本,液浸標本,化石模型などからなり,外部の研究者にも基本的にすべて公開されている.標本のほとんどはデータベース化されており,資料委員会の許可にもとづいて利用希望者に提供され,研究遂行上の必要に応じて貸し出しもおこなっている.他機関所蔵の資料との交換も受け入れている.
(1) 霊長類骨格資料(表1)
現在,資料委員会のデータベースに登録された霊長類骨格標本は表1の通りである.その数は7,000点を超え,大部分はマカク類を中心とした旧世界ザルの標本である.特にニホンザルの標本は飼育・野生由来個体を合わせて2800点以上を数え,世界的に見ても稀なコレクションである.その他に,新世界ザルの標本も約1,400点保有している.類人猿,および原猿類(+ツパイ)の標本は,それぞれ数十点ずつである.
(2) 霊長類以外の骨格標本(表2)
霊長類以外にも,哺乳類を中心に約1,400点近い骨格標本を所蔵している.内訳は,タヌキ,キツネ,ツキノワグマ,テン,イタチ,イノシシ,シカ,カモシカなど日本産哺乳類が多い.日本産の野生哺乳類が減っている現在,これらは貴重な資料である.
骨格標本はすべて研究所新棟4階と本棟地下の骨格資料室において移動式標本架にならべて保管されている.標本は種ごとに分類され,種内では標本番号にしたがって配列されている.利用希望者は,資料室に設置されたコンピューター上で骨格標本データベースを検索することができる.データベース上で利用できる情報は,標本番号,種番号,属名,種名,登録日,性別,体重,座高,前胴長などである.
(3) 液浸標本
本棟地下及び栗栖地区の液浸資料室に各種霊長類のフォルマリンもしくはアルコールで固定された液浸標本が数百点保管されており,共同利用研究者などを対象に,研究・教育目的で提供されている.これらについてもデータベース化が進められている.
(4) その他
以上の他に,被毛標本数十点が保有されている.
霊長類研究所資料委員会は国内外の多くの研究者がこれらの資料を利用して研究を進めることを希望しており,利用希望者の要請にできるだけ応えたいと考えている.そのため,上記のように研究所所蔵資料のデータベース化など利用環境の整備に努めており,毎年国内外の研究者らによって骨格標本や液浸標本が研究・教育用の資料として活用されている.標本の利用許可については,非破壊的な使用目的の場合は簡便な手続きで済むようにしているが,標本の破壊が必要だったり破損の恐れのある利用の際は資料委員会への充分な事前説明が必要である.
資料委員会は新しい標本の作製,受け入れもおこなっており,毎年標本数は増加している.資料を一層充実させるため,野外調査などの際に,霊長類その他の標本の採集にご協力いただきたい.
備考:資料委員会では,霊長類研究所資料室で登録・保管する他,霊長類標本に関するデータのみの登録も受け付けています.あるいは,標本管理者の移籍・退職などによって管理困難となった標本の取り扱いについても相談を受けます.霊長類研究所資料委員会までご連絡ください.
(平成21年度連絡先:西村剛 nishimur@pri.kyoto-u.ac.jp).
(文責:國松豊)
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