京都大学霊長類研究所 年報
Vol.38 2007年度の活動
XI 本棟改修工事について
背景
第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画 (平成18-22年度) に基づく教育研究基盤施設の再生計画の推進のため, 京都大学でも老朽施設の再生整備が進められている. 学内の耐震診断の結果, 犬山地区では本館(建築年: 1968年) と共同研究員宿泊施設 (建築年: 1969年) の構造耐震指標が低い値を示し, 緊急に耐震改修が必要と判断された. 一方, 研究所は中期目標・中期計画(平成16-21年度) で本棟・共同利用棟・サル施設棟の耐震改修と機能強化を掲げ, その実現を計り, 概算要求で予算獲得を進めていた. こうした背景から, 平成18年度の補正予算により本館他の改修が実現されることになった.
目的
上記の背景から耐震補強が改修の主目的となったが,機能改修も当初から検討され, 特にゾーニング (動物を利用する区域とそれ以外の区域の分離) の整備, ならびにセキュリティ向上が重点目標となった.
計画概要
本館 (以下本棟と呼ぶ) および類人猿行動実験棟の利用状況を調査し, 耐震補強とともにゾーニングのレイアウトを検討した. この結果, 本棟では地階以外の階すべてから生きた動物を利用する部屋を類人猿行動実験棟に移動させ, 動線も見直してゾーニングを達成する目処がついた. さらに, 各部屋の利用状況を点検し, 分野施設や院生室の集約性や機能性を高めることも計画した. また, これまで不備であったバリアフリー対策など安全性向上も計画に盛り込んだ.
開始と完了
本部施設環境部との折衝により, 平成19年の年明けから設計をはじめとする工事の実施計画の検討が進んだ. また, 同時に工事中の移転先や動物飼育施設, 実験施設等の運用方法を検討した. 設計には後藤建築・環境設計事務所が参加し, 施設環境部に同行してヒアリングを重ねた. この過程で強度の見直しも進み, 最終的な耐震補強工事の形が決定した.
工事中の移転では, 岐阜大学旧大学病院 (岐阜市司町), 名古屋経済大学 (犬山市内久保), オリムパス製絲株式会社犬山工場 (犬山市大字上野字石塚), 財団法人日本モンキーセンター旧研究所 (犬山市栗栖) を借用させていただくことが決まった.
「京都大学 (犬山) 霊長類研究所本館等改修その他工事」の名称で入札により工事担当は施工管理が大建建設株式会社, 建築が林本建設株式会社, 設備が川崎設備工業株式会社, 電気が白川電気土木株式会社と決定した. 契約日は平成19年7月19日, 着工日は同7月20日であった. 完成期限は当初契約で平成20年3月7日であったが, 途中で3月31日に延長された. また, 完成検査は平成20年3月27日に実施された.
経過
工事は2期に分けて実施された. 第1期工事では, ゾーニング達成と工事中の研究活動継続のため, 生きた動物を実験利用する本棟の研究室を類人猿行動実験棟に移した. 第2期工事では, 本棟の全面改修を行った.
移転では, 所内外に居室や実験室を配置するとともに, 倉庫を確保して資料, 機械, 什器等を保管した. 所内では類人猿行動実験棟, 共同利用宿泊棟, サル施設棟を利用した. 所外では, 岐阜大学旧大学病院を倉庫に,名古屋経済大学・オリムパス製絲株式会社犬山工場・栗栖旧研究所を居室に, そして栗栖旧研究所を実験室に利用した.
所外への移転をはじめたのは6月5日であった. 第1期工事が完了し, 第2期工事 (本棟全面改修) がはじまったのは10月上旬であった. 所外からの移転は工事完成を前に3月3日にはじまり, 3月末に完了した.
付記
工事に際しては多くの方々からご協力を得た. 特に, 工事中の移転では, 犬山市, 岐阜大学, 名古屋経済大学, オリムパス製絲株式会社, 財団法人日本モンキーセンターから多大のご援助をいただいた.
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写真: 耐震補強のため壁に付設された鉄骨 (本棟正面玄関付近)
(文責: 建物委員会 川本芳)
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