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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 - III 研究活動 人類進化モデルセンター

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

III 研究活動

人類進化モデル研究センター

景山節 (教授・センター長併任, 2007年9月まで), 平井啓久 (遺伝子情報分野教授・センター長併任2007年10月より), 松林清明 (教授), 上野吉一 (准教授・2007年8月まで在職), 鈴木樹理 (准教授), 宮部貴子 (助教), 熊崎清則, 阿部政光, 釜中慶朗 (技術専門職員), 前田典彦,渡邉朗野, 森本真弓, 兼子明久, 渡邉祥平 (技術職員),小倉匡俊 (大学院生: 2007年8月まで)

 

霊長類研究所のプロジェクトとして推進しているリサーチ・リソース・ステーション (RRS) 計画について, 人類進化モデル研究センターは施設整備, ニホンザル毋群導入, 飼育・健康管理をおこなうとともに, これらのサルについての種々の研究を推進している. 2007年度にはグループケージ1棟建設の他に, 放飼場のセキュリティシステムなどの導入を行った. RRS計画は霊長類本来の特性を維持した多様な種を自然の生息環境に近い条件下で動物福祉に配慮して飼育し, 新たな霊長類研究の推進をおこなうものである. このため第6放飼場を中心に, 植物相調査,サルの行動・ストレス評価,採食調査, 水質環境調査など多項目の研究を進めた. RRS計画の中ではナショナルバイオリソースプロジェクトの一部であるニホンザルバイオリソース (NBR) 計画に, ニホンザルの繁殖と供給をおこなうことで協力している. 2007年度にはNBRのニホンザルは毋群総数141頭となり, 新たに25頭の繁殖がみられた.

 霊長類研究所では, ニホンザルを除いたサルの有償所外供給を, 昨年度より全国の研究者を対象としておこなうこととなった. その第2回目として, 本年度もコモンマーモセット2頭を大阪大学に供給した.

 2007年度は研究所本棟の耐震改修工事がおこなわれた. そのため飼育や実験中のサル類の大幅な移動があった. これを契機にして研究室区域とサル飼育区域のゾーニングが達成されたことにより, 今後サル類・ヒト共通感染症等の防御管理が, より確実に行えることが期待される.

 人事面では上野吉一 (准教授) が2007年8月に退職し東山動植物園に異動した. 非常勤職員には以下の異動があった. 任期付職員・西脇弘樹2007年1月17日?2007年12月28日の任期終了後, 2008年1月より教務補佐員に採用. 2007年3月チンンパンジー飼育担当として廣川類, 2007年4月サル飼育担当として須田直子, 尾鷲享子を技能補佐員に採用. またRRSに関する研究担当者として, 竹元博幸が引き続き非常勤研究員に採用された.

<研究概要>
A)生殖器系の進化に関する組織学的研究

松林清明

 主として大型類人猿を対象に, オス生殖器系の組織学的検索を通じて, 種ごとの生殖システムの進化の様態を検討している.

B) 環境共生型大規模放飼場におけるサル類の繁殖育成システムの開発研究

松林清明

第2キャンパスに造営されたリサーチリソースステーション (RRS) において, 樹木等の維持に必要な飼育方式やサル個体管理法の開発, セキュリティなどの試験と評価を進めている.

C) 胃ペプシノゲンの研究

景山節

 ペプシンの基質特異性が動物の進化にとともにどのように変化したのか明らかにするため, ヒトA型の部位突然変異体を遺伝子工学的に作成して研究を進めた.

D) サル類の疾病の遺伝子解析および飼育環境評価

景山節, 安江美雪

 疾病遺伝子に関する成果とりまとめをおこなうとともに, 飼育環境評価の一貫として放飼場およびRRS予定地の溜池・排水のpHとCOD測定, 細菌数測定, チンパンジー放飼場水の塩素濃度測定を継続した.

E) テナガザル類の生物地理学的ならびに医生物学的研究

平井啓久, 宮部貴子, Hery Wijayanto (ガジャマダ大学講師), Dyah Perwitasari-Farajallah (ボゴール農科大学講師)

 インドネシア・中央ジャワの動物園においてシャーマンおよびボルネオシロヒゲテナガザル (合計14個体) の血液採取, 染色体標本作製, DNA抽出ならびに血液生化学的分析を行った. 麻酔の質の向上を目指した方法の検討 (麻酔薬の併用, 麻酔効果の評価) も予備的に行った. 個体の外部形態および毛色撮影写真から種を同定し, 現在遺伝的解析を行っている.

F) マダガスカル原猿類の染色体進化

平井百合子, 平井啓久

 アイアイの全染色体の染色体顕微切断法を用いて彩色プローブを作製し, マダガスカル原猿類 (ワオキツネザル, チャイロキツネザル, シファカ, ネズミキツネザル, イタチキツネザル) および外群としてオオギャラゴの染色体分化を, 染色体彩色解析法で分析した.

G) ヨザルの染色体分化の解析

平井百合子, 森本真弓, 兼子明久, 釜中慶朗, 平井啓久

 ヨザルで発見した血液キメラの発生機序を, 血液培養, 皮膚培養, 染色体顕微プローブ作製法, ならびに蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法を用いて解析した. その結果, マーモセット亜科に見られる胎児間血液キメラとは異なり, ヨザル個体内の血液幹細胞で自然発症的に起った染色体変異の定着による血液キメラと推測した.

H) コモンマーモセットのてんかんモデル開発についての検討

宮部貴子, 森本真弓, 兼子明久, 釜中慶朗, 平井百合子,平井啓久

 てんかん様症状を呈するメス個体の行動をビデオ撮影し, 発症状況の態様から真性てんかんと診断した. 本個体に繁殖させ, てんかん家系を作製中である. てんかん関連遺伝子を含むヒトBACクローンを用いて, コモンマーモセットの染色体上の相同部位をFISH法によって確認した.

I) マカクのエイジングの生理学的研究

鈴木樹理, 濱田穣 (形態進化分野)

 マカクの生理的な加齢変化を明らかにするために, 放飼場で飼育されているニホンザルおよびアカゲザルについて毎年同一個体を採材する縦断的方法によって,血中の代謝関連ホルモンの定量を行った.

J) サル類のストレス定量および動物福祉のための基礎研究

鈴木樹理

実際の飼育環境でのストレス反応を定量することとその軽減策の検討のために, 昨年確立した糞中コーチゾル測定系を用いてマカクの糞中コーチゾルの定量を行った. 更に, 短期間のストレス負荷を定量するために,尿中コーチゾル定量について検討している.

K) マカクの麻酔法に関する研究

宮部貴子, 兼子明久, 西脇弘樹, 増井健一 (防衛医科大),金澤秀子 (慶応義塾大)

飼育下ニホンザルを対象に静脈麻酔薬プロポフォールの単回投与後の鎮静度, 呼吸循環動態および血中薬物動態の解析をおこなった. プロポフォール持続投与による維持麻酔を検討している.

L) 脳波モニタを用いた麻酔下チンパンジーにおける意識消失度の評価

宮部貴子, 鈴木樹理, 熊崎清則, 前田典彦, 渡邉朗野, 兼子明久, 渡邉祥平, 西脇弘樹, 廣川類, 友永雅己, 松沢哲郎

麻酔下チンパンジーにおいて, 脳波から意識消失度を評価するモニタであるBISモニタを用い, その有用性を検討している.

M) サル類の疾病に関する臨床研究

宮部貴子, 渡邉朗野, 兼子明久, 西脇弘樹, 鈴木樹理

飼育下のサル類の自然発症疾患に関して, レトロスペクティブおよびプロスペクティブに臨床研究を行っている. 特に呼吸器系疾患および消化器系疾患に焦点を当ててている.

<研究業績>
原著論文 

1) Kawakami K, Takai-Kawakami K, Tomonaga M, Suzuki J, Kusaka T, Okai T. (2007) Spontaneous smile and spontaneous laugh: An intensive longitudinal case study. Infant Behavior and Development 30: 146-152.

2) Nishimura T, Mikami A, Suzuki J, Matsuzawa T. (2007) Development of the laryngeal air sac in chimpanzees..International. Journal of Primatology 28: 483-492.

3) Higashino A, Yonezawa S, Kageyama T. (2008) Establishment of an ELISA system for the determination of Japanese monkey calreticulin and its application to plasma samples in macaques. Journal of Medical Primatology 37: 340-346.

4) Kawamoto Y, Kawamoto S, Matsubayashi K, Nozawa K, Watanabe T, Stanley MA, Perwitasari-Farajallah D. (2008) Genetic diversity of longtail macaques (Macaca fascicularis) on the island of Mauritius: an assessment of nuclear and mitochondrial DNA polymorphisms. Journal of Medical Primatology 37(1): 45-54.

5) Nishimura T, Oishi T, Suzuki J, Matsuda K, Takahashi T (2008) Development of the superlaryngeal vocal tract in Japanese macaques: Implications for the evolution of the descent of the larynx. American Journal of Physical Anthropology 135(2): 182-194.

6) Yonezawa S, Hanai A, Mutoh N, Moriyama A, Kageyama T. (2008) Redox-dependent structural ambivalence of the cytoplasmic domain in the inner ear-specific cadherin 23 isoform. Biochemical and Biophysical Research Communications 366: 92-97.

 著書 (分担執筆)

1) 景山節 (2007) 酵素の機能多様性と進化 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編) p.465-476 京都大学学術出版会.

2) 松林清明, 榎本知郎 (2007) 大型類人猿の雄性生殖器の進化 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編) p.337-346 京都大学学術出版会.

3) 宮部貴子 (2007) 霊長類と麻酔 -作用機序の解明と質の向上を目指して- 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編) p.371-383 京都大学学術出版会.

4) 鈴木樹理 (2007) 霊長類の成長に関する内分泌学的研究 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編) p.361-371 京都大学学術出版会.

 

著書 (翻訳)

1) 宮部貴子, 田川雅代, 林典子, 鈴木茜, 斉藤久美子, 三輪恭嗣 訳 (2007) 小動物臨床のための5分間コンサルトシリーズ ウサギとフェレットの診断・治療ガイド (Oglesbee B著, The 5-Minute Veterinary Consult: Ferret and Rabbit) pp.488 インターズー.

  

その他の執筆

1) 林美里, 渡邉祥平, 宮部貴子 (2007) チンパンジーの介護. 「科学」77: 1332-1333.

2) 宮部貴子, 兼子明久, 渡邉祥平, 林美里 (2008) 寝たきりになったチンパンジー, レオ. 「科学」78 : 34-35.

学会発表

1) Miyabe T, Morimoto M, Suzuki J, Muroyama Y, Suzumura T, Kanchi F, Tanaka H, Hayakawa S, Hamada. (2007) Immobilization with a combination of Ketamine Hydrochloride and Medetomidine in wild Japanese monkeys (Macaca fuscata fuscata). American College of Veterinary Anesthesiologists (ACVA) (2007/09, ニューオーリンズ, アメリカ).

2) Suzuki J, Matsubayashi N, Hashimoto C, Watanabe A, Kaneko A, Miyabe T, Nishiwaki K, Goto S. (2007) Three decades’ collected cases of bloat in the macaques. Joint meeting of the 3rd meetingof ASVP, AAVS, and the 2nd Asian Conservation Medicine/Wildlife Pathology Workshop (ASZWM) (2007/08, Taiwan).

3) Sakai T, Mikami A, Nishimura T, Toyoda H, Miwa T, Matsui M, Tanaka M, Tomonaga M, Matsuzawa T, Suzuki J, Kato A, Matsubayashi K, Goto S, Miyabe T. (2008) Development of brain and temporalis in chimpanzees First step: Development of brain in chimpanzees. The 1st International Symposium of the Global COE Project “from Genome to Ecosystem” (2008/03, Kyoto).

4) Sakai T, Mikami A, Nishimura T, Toyoda H, Miwa T, Matsui M, Tanaka M, Tomonaga M, Matsuzawa T, Suzuki J, Kato A, Matsubayashi K, Goto S, Miyabe T. (2008) Mapping of prefrontal development during infancy and childhood in chimpanzees. The 85th Annual Meeting of the Physiological Society of Japan (2008/03, Kyoto).

5)  花本秀子, 中野まゆみ, 松林清明, 榎本知郎 (2007) 霊長類の血液精巣関門―Claudinを指標にして―. 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07/15, 彦根).

6)  東濃篤徳, 景山節 (2007) ELISA法によるニホンザルCalreticulinの組織分布と血中濃度. 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07, 彦根).

7)  兼子明久, 宮部貴子, 西脇弘樹, 鈴木樹理 (2007) 老齢ザルの健康管理 -飼育から治療まで-. 第16回サル疾病国際ワークショップ (2007/12, つくば).

8)  宮部貴子, 森本真弓, 鈴木樹理, 室山泰之, 鈴村崇文, 冠地富士男, 田中洋之, 早川清治, 濱田穣 (2007) 幸島のニホンザルにおける血清生化学検査. 第23回霊長類学会 (2007/07, 彦根).

9) 宮部貴子, 兼子明久, 西脇弘樹 (2007) ニホンザルにおけるプロポフォールの静脈内単回投与の効果. 第75回獣医麻酔外科学会 (2007/12, 仙台).

10) 宮部貴子, 兼子明久, 西脇弘樹, 渡邉朗野, 渡邉祥平, 前田典彦, 熊崎清則, 森本真弓, 廣川類, 鈴木樹理, 林美里 (2007) 四肢不全麻痺で寝たきりになったチンパンジー, レオの長期療養. SAGA10 (2007/11, 東京).

11) 宮部貴子, 兼子明久, 西脇弘樹, 渡邉朗野, 鈴木樹理, 磯和 弘一 (2007) 非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic SteatoHepatitis; NASH)と類似した病理所見を呈した肥満ニホンザルの一例. 第16回サル疾病国際ワークショップ (2007/12, つくば).

12) 中野まゆみ, 松林清明, 花本秀子, 榎本知郎 (2007) ヒトの精子形成サイクルの再検討. 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07, 彦根).

13) 酒井朋子, 三上章允, 西村剛, 豊田浩士, 田中正之, 友永雅己, 松沢哲郎, 鈴木樹理, 渡邉朗野, 松林清明, 後藤俊二, 宮部貴子 (2007) チンパンジーの前頭前野の発達過程;核磁気共鳴断層画像法(MRI)を用いて. 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07, 彦根).

14) 須田直子, 熊崎清則, 木村俊治, 熊谷かつ江, 津川則子, 松林清明 (2007) 新施設リサーチリソー スステーション -施設紹介とエンリッチメントの取り組み-. SAGA10 (2007/11, 東京).

15) 鈴木樹理, 後藤俊二, 渡邉朗野, 兼子明久, 磯和弘一 (2007) 老齢アジルテナガザルにおける膵炎を背景に発症したDICを伴う全身性炎症反応症候群. 第16回サル類疾病国際ワークショップ (2007/12, つくば).

16) 竹元博幸, 大沼学, 山内志乃, 千田友和, 須田直子, 松林清明 (2008) ニホンザルによる放飼場内植生の樹皮食と選択性. 第55回日本生態学会 (2008/03, 福岡).

講演

1) 鈴木樹理 (2007) サル類の急性鼓脹症の病態とそ

  の対応について. 滋賀医科大学 大津.

その他

1) 景山節 (2007) 京都大学霊長類研究所のリサーチ・リソース・ステーション (RRS) 計画. NBR Newsletter 4: 6-7.

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