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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2007年度 - III 研究活動 社会構造分野

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.38 2007年度の活動

III 研究活動

社会構造分野

古市剛史 (教授, 2008年2月から), 半谷吾郎 (准教授), 杉浦秀樹 (助教,

2008年2月迄), 郷もえ, 鈴木真理子, 神田恵, 原澤牧子, 澤田晶子 (大学院生)

<研究概要>
A) チンパンジーとボノボの採食と遊動パターンの研究

古市剛史

コンゴ民主共和国ワンバ地区の野生ボノボを対象に,遊動時のグルーピングパターンや遊動速度が, 果実生産量の季節変化にともなってどのように変化するのかを調べた. また, そのような変化に,メスたちがどのように対応しているかを調べ, 父系社会であるにもかかわらずメスが集団の中核をなすボノボの社会構造の生態学的基盤を明らかにした. また, ウガンダ共和国カリンズ森林のチンパンジーを対象に, 果実樹の利用と遊動パターンについての研究を行った. 多くの果実がある樹木には, 多くのチンパンジーが集まって長い時間を過ごすが, そこでは毛づくろいなどの社会交渉に多くの時間を費やし, 一頭あたり, 時間あたりの採食量は減ってしまう. チンパンジーの採食遊動は,採食効率だけでなく, オス間の社会関係や, 交尾相手の探索など,さまざまな社会的要因によって決まっていることを明らかにした.

B) ヒト科の社会構造の進化についての研究

古市剛史

チンパンジー, ボノボ, ゴリラ, オランウータンなどの類人猿は, メスの出産間隔が延びることでメスの発情の頻度が下がり, 発情メス1頭あたりのオスの数 (発情性比) が極端に高くなる. このことは, 集団内のオス間の性的競合や, オスによる子殺し, ハラスメントを避けるためのメスの単独行動など,さまざまな問題を引き起こしていると考えられる. 類人猿各種は, この高くなりすぎた発情性比に対応するための様々な性的, 社会的方策を進化させており, それが類人猿の社会構造の進化, ひいてはヒトの誕生にもつながっているという仮説を立てて検証した.


C) ニホンザルの個体群動態とその生態学的決定要因の研究

半谷吾郎, 杉浦秀樹

鹿児島県・屋久島のニホンザル野生群を対象に, 個体群動態の継続調査を実施した. 屋久島の瀬切川上流域では, 森林伐採と果実の豊凶の年変動がニホンザル個体群に与える影響を明らかにする目的で, 調査を行い,識別された5つの群れの構成, 地域全体のニホンザルの集団密度, ニホンジカの発見頻度などの人口学的資料を集めた. 屋久島海岸部でも, 個体識別された10群程度の群れの構成と, 西部海岸全域での道路カウントを行った.

D) ニホンザルの行動生態学的研究

半谷吾郎, 杉浦秀樹, 鈴木真理子, 神田恵, 原澤牧子

屋久島では, 音声コミュニケーション, 群れの空間的なまとまりを維持する行動について研究を行うとともに, 上部域と海岸部の間で, 体温調節行動, 採食中の攻撃的交渉の頻度, 社会関係, 食物選択の化学的基準などを比較した. また, 幸島ではコドモの存在が母親の行動に与える制約について研究を行った. 霊長類研究所放飼場では, 毛づくろいでの交渉相手の選択について研究した.

E) 東南アジア熱帯林の霊長類群集生態学

半谷吾郎

 世界でもっとも生物多様性の高い森林である東南アジア・ボルネオ島の熱帯雨林での霊長類の共存のメカニズムを明らかにするため, マレーシア・サバ州ダナムバレー森林保護区での昼行性霊長類5種 (オランウータン,ミュラーテナガザル, クリイロコノハザル, カニクイザル, ブタオザル) の密度・食性・生息環境に関する総合的な調査を行った.

F) ニホンザルの消化率に関する研究

澤田晶子, 半谷吾郎

 霊長類研究所で個別飼育されているニホンザルを対象に, 消化率についての研究を行った. 本年度は, オトナオスを対象に, 繊維×低繊維, 多量×少量の4種類の人工飼料を与えて, 内容物の通過時間を化学マーカーを用いて調べた.

<研究業績>
原著論文 

1) Aiba S, Hanya G, Tsujino R, Takyu M, Seino T, Kimura K, Kitayama K (2007) Comparative study of additive basal area of conifers in forest ecosystems along elevational gradients. Ecological Research 22: 439-450.

2) Hanya G, Kiyono M, Hayaishi S (2007) Behavioral thermoregulation of wild Japanese macaques: comparisons between two subpopulations. American Journal of Primatology 69: 802-815.

3) Hanya G, Kiyono M, Takafumi H, Tsujino R & Agetsuma N (2007) Mature leaf selection of Japanese macaques: effects of availability and chemical content. Journal of Zoology 273: 140-147.

4) Hashimoto C, Cox D, Furuichi T. (2007) Snare removal for conservation of chimpanzees in the Kalinzu Forest Reserve, Uganda. Pan Africa News 14:8-11.

5) Mori A, Yamane A, Sugiura H, Shotake T, Boug A, Iwamoto T. (2007) A study on the social structure and dispersal patterns of hamadryas baboons living in a commensal group at Taif, Saudi Arabia. Primates 48(3): 179-189.

6) Muroyama Y, Shimizu K, Sugiura H. (2007) Seasonal variation in fecal testosterone levels in free-ranging male Japanese macaques. American Journal of Primatology 69(6): 603-610.

7) Oyakawa C, Koda H, Sugiura H. (2007) Acoustic features contributing to the individuality of wild agile gibbon (Hylobates agilis agilis) songs. American Journal of Primatology 69(7): 777-790.

8) Sugiura H. (2007) Adjustment of temporal call usage during vocal exchange of coo calls in Japanese macaques. Ethology 113(6): 528-533.

9) Sugiura H. (2007) Effects of proximity and behavioral context on acoustic variation in the coo calls of Japanese macaques. American Journal of Primatology 69(12): 1412-1424.

総説 

1) 古市剛史 (2007) ヒト科における攻撃性の進化: チンパンジーとボノボの比較から見えてくること. 生物科学 59: 2-13.

著書 (分担執筆) 

1) Furuichi T, Mulavwa M, Yangozene K, Yamba-Yamba M, Motema-Salo B, Idani G, Ihobe H, Hashimoto C, Tashiro Y, Mwanza N. (2008) Relationships among Ranging Speed, Party Size and Composition, and Fruit Abundance for bonobos at Wamba. (In: The Bonobos: Behavior, Ecology, and Conservation) (ed. Furuichi T, Thompson J.) p.135-149 Springer, New York.

2) Hashimoto C, Tashiro Y, Hibino E, Mulavwa M, Yangozene K, Furuichi T, Idani G, Takenaka O. (2008) Longitudinal Structure of a Unit-group of Bonobos: Male Philopatry and Possible Fusion of Unit-groups. (In: The Bonobos: Behavior, Ecology, and Conservation) (ed. Furuichi T, Thompson J.) p.107-119 Springer, New York.

3) Idani G, Mwanza N, Ihobe H, Hashimoto C, Tashiro, Y, Furuichi T. (2008) Changes in the status of bonobos, their habitat, and the situation of humans at Wamba, in the Luo Scientific Reserve, Democratic Republic of the Congo. (In: The Bonobos: Behavior, Ecology, and Conservation) (ed. Furuichi T, Thompson J.) p.291-302 Springer, New York.

4) Mulavwa M, Furuichi T, Yangozene K, Yamba-Yamba M, Motema-Salo B, Idani G, Ihobe H, Hashimoto C, Tashiro Y, Mwanza N. (2008) Seasonal Changes in Fruit Production and Party Size of Bonobos at Wamba. (The Bonobos: Behavior, Ecology, and Conservation) (ed. Furuichi T, Thompson J.) p.121-134 Springer, New York.

5) 半谷吾郎 (2007) 温帯の霊長類の生態学的適応. 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編)

  p.103-114 京都大学学術出版会.

6) 杉浦秀樹, 下岡ゆき子 (2007) 霊長類の群れのかたち. 「霊長類進化の科学」 (京都大学霊長類研究所編) p.91-103 京都大学学術出版会.

学会発表等 

1) 古市剛史 (2007) チンパンジーとボノボに見る性の進化と社会. 第10回SAGAシンポジウム/ HOPEシンポジウム (2007, 東京).

2) 古市剛史, 橋本千絵 (2007) カリンズ森林のチンパンジーの食物パッチの利用パターン:生態学的要因と社会学的要因の検討. 第23回日本霊長類学会大会 (2007, 大阪).

3) 神田恵, 室山泰之, 杉浦秀樹 (2007) ニホンザルのグルーミング交渉における交渉相手選択―交渉直前の近接が交渉相手選択に与える影響―. 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07, 彦根).

4) 神田恵, 室山泰之, 杉浦秀樹 (2007) ニホンザルのグルーミング交渉における交渉相手選択の流れ―交渉直前のやり取りが交渉相手選択に与える影響について―. 第26回日本動物行動学会大会 (2007, 京都).

5) 中川尚史, 杉浦秀樹, 松原幹, 早川祥子, 藤田志歩, 鈴木滋, 下岡ゆき子, 西川真理 (2007) ヤクシマザルにおけるオスの交尾戦術:交尾パタンの分析から. 日本哺乳類学会2007年度大会 (2007/09, 東京都府中).

6) 中川尚史, 杉浦秀樹, 松原幹, 早川祥子, 藤田志歩, 鈴木滋, 下岡ゆき子, 西川真理 (2007) ヤクシマザルにおける性交渉パタンの多様性(第1報). 第23回日本霊長類学会大会 (2007/07, 彦根).

7) 鈴木克哉,川合伸幸,杉浦秀樹,柴崎全弘,友永雅己,室山泰之. (2007) 行動に随伴した嫌悪刺激の呈示によるニホンザルの行動制御. 野生生物保護学会第13回大会 (2007/11, 流山).

8) 藤田志歩, 杉浦秀樹, 清水慶子 (2008) 野生ニホンザルの交尾行動―メスの配偶者選択とオス間競合―. 日本生態学会第55回全国大会 (2008/03, 福岡).

9) 杉浦秀樹, 下岡ゆき子, 辻大和 (2008) ニホンザルの群れの空間的な広がりとその変化. 日本生態学会第55回全国大会 (2008/03, 福岡).

講演

1) 古市剛史 (2007) 猿人類ボノボの観察からみる

  性の進化, ヒトの進化. リコー三愛会.

2) 半谷吾郎 (2007) サルと暮らした自然の森-わたしの霊長類野外研究-. 第3回 ニホンザル 公開連続講座: 第23回日本霊長類学会大会プレ企画(2007/06).

3) 半谷吾郎 (2008) 働く人の話を聴く会. 犬山市立城東中学校 (2008/03, 犬山).

4) 杉浦秀樹 (2007) ニホンザルの“会話” 京都大学霊長類研究所東京公開講座.

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