京都大学霊長類研究所 年報
Vol.38 2007年度の活動
I 巻頭言
所長 松沢哲郎
2007年度 (平成19年度) の研究所の年報をお届けします. 年報は, 当該年度の教育と研究ならびに社会貢献の活動を網羅したもので, 自己点検報告書としての位置づけをしています. なお既刊の年報については, 研究所のホームページで公開しています.
本年度は, 04年度 (平成16年度) に国立大学法人化されて4年目にあたります. 同時に始まった, いわゆる中期目標・中期計画の6年間でいえば, ちょうど後半に入ったことになります.
霊長類研究所の掲げる中期目標・中期計画の最重要課題であった「リサーチ・リソース・ステーション (RRS) 」の第一期工事が06年度末に竣工しました. 「自然の里山を生かした環境共存型飼育施設」で, サル類の飼育繁殖と多様な霊長類研究を支援します. それを祝して, 尾池和夫総長や藤木審議官ならびに多数の関係者のご列席のもと07年5月に竣工式を明治村で執り行いました. 引き続いて6月1日には, 霊長類研究所創立40周年の記念式典を京大時計台で開催しました.
07年度に, 本棟の耐震改修工事がおこなわれました. 本工事によって建物の耐震機能が向上し, 念願であった人間とサル類の同居を解消した「ゾーニング」が果たされました. 工事期間中に退去を余儀なくされた全所員の理解と協力に感謝します.
寄附講座が新たに追加されました. 株式会社三和化学研究所の寄附講座「福祉長寿研究部門」が8月1日に発足しました. 動物福祉の実践研究と健康・長寿・加齢に関わる研究を推進します.
本年度から始まったグローバルCOE事業に採択されました. 生物科学専攻に所属する動物学・植物学・生物物理学・霊長類学の4系 (生態学研究センターを加えた5部局) の事業で, 21世紀COEプログラムから継続しての採択になります.
また, 絶滅の危惧される野生動物の研究と教育, 保全, および動物園・水族館との連携を視野に入れた「野生動物研究センター」が, 霊長類研究所を母胎として, 08年度当初に発足しました. これを機に, 霊長類研究所のニホンザル野外観察施設を廃止してその業務を新センターに移管し, 幸島と屋久島の観察所と技術職員も移しました. 霊長類研究所のさらなる発展の姿とご理解いただければ幸甚です.
07年11月に, 尾池総長の勧めで霊長類研究所から発議して, ジェーン・グドールさんに京大の名誉博士号が授与されました. 利根川進さん以来3年半ぶりの栄誉です.
2008年に, 日本の霊長類学は誕生60周年を迎えます. 今西錦司と2人の学生 (伊谷純一郎と川村俊蔵, のちにともに京大教授) が, 宮崎県の幸島で初めて野生ニホンザルの観察を始めたのが1948年12月3日でした. こうした節目の年を, 新しい建物と, 新しい組織と, 清新なスタッフで迎えています. さらにいっそうの飛躍を誓い, 霊長類学の研究拠点として国内外の期待に応えていきたいと思います. 今後とも, 霊長類研究所の活動を温かく見守っていただきますよう, よろしくお願いいたします.
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