サル類に自然発生する加齢性病変を病理学的に解析しその背景データを蓄積することは,サルの生物学的特性を把握する上で重要である.本年度は2例のサル(アカゲザルとパタスザル/ミドリザルのハイブリッド)について病理学的に検査し,アカゲザル(26歳)には後天性の水腎性萎縮腎と卵巣の血管腫をみつけた.また,ハイブリッドザル (32歳)には,胃と子宮に平滑筋腫が見出された.また,以前提供を受けた老齢の雌ニホンザル(28.5歳)に見出された悪性中皮腫について今年度詳細な解析を行った.この中皮腫は組織学的には,腫瘍性の中皮細胞が乳頭状~結節状に増殖し,一部粘液を含有する印環細胞様細胞が混在した.卵巣・消化管由来の腺癌と鑑別するために癌胎児性抗原(CEA)に対する免疫染色を行ったところ,陰性となり腺癌とは明らかに区別された.サル類の中皮腫としては心膜原発の1例が報告されているが,腹膜原発例としては本例が初発となる.なお,この内容は短報として発表する[1].サル類はバイオメデイカル研究における動物モデルとして近年注目されている.今後さらに種々の加齢性病変を解析する予定である.[1] Yamate J, Tomita A, Kuwamura M, Mitsunaga F, and Nakamura S. 2007. Spontaneous peritoneal malignant mesothelioma in a geriatric Japanese macaque (Macaca fuscata). Exp Anim (Tokyo) (in press).