京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2006年度 > X 共同利用研究 2. 概要
京都大学霊長類研究所 年報
Vol.37 2006年度の活動
X 共同利用研究
1 概要
平成18年度の共同利用研究の研究課題は以下の三つのカテゴリーで実施された.
1.計画研究
2.自由研究
3.施設利用
共同利用研究は,昭和57年度に「計画研究」と「自由研究」の2つの研究課題で実施された.昭和62年度からは「資料提供」(平成14年度から「施設利用」と名称を変更)を,また平成6年度からは「所外供給」(平成14年度から「所外貸与」と名称を変更し,平成15年度で終了)を新設し,現在に至っている.それぞれの研究課題の概略は以下のとおりである.
「計画研究」は,本研究所推進者の企画に基づいて共同利用研究者を公募するもので,個々の「計画研究」は3年の期間内に終了し,成果をまとめ,公表を行う.
「自由研究」は,「計画研究」に該当しないプロジェクトで,応募者の自由な着想と計画に基づき,所内対応者の協力を得て,継続期間3年を目処に共同研究を実施する.
「施設利用」は,資料(体液,臓器,筋肉,毛皮,歯牙・骨格,排泄物等)を提供して行われる共同研究である.
平成18年度の計画課題,応募並びに採択状況は以下のとおりである.
(1) 計画課題
(課題推進者のうち下線は代表者)
1.チンパンジーの認知や行動とその発達の比較研究
実施予定年度:平成16年度~18年度
課題推進者:松沢哲郎,濱田穣,友永雅己,田中正之
チンパンジーをはじめとする類人猿の認知や行動について,形態学的・生理学的研究と関連させ,発達的変化にも着目した幅広い視点で研究する.基礎的な知覚・認知機能,姿勢・運動機能,コミュニケーション,社会的知性などを他の霊長類と比較しつつ検討する.
2.アジアに生息する霊長類の生物多様性と進化生物学
実施予定年度:平成16年度~18年度
課題推進者:平井啓久,正高信男,渡邊邦夫,田中洋之,高井正成
マカクならびにテナガザルをはじめとするアジア霊長類の生物多様性を,遺伝・生態・行動・形態・生理の領域から多角的に分析し,種分化に関わる進化生物学的考察を行う.
加えて,保全計画に資する生命資源の確保と技術革新を目的として,精子および遺伝子試料を収集し,その保存および利用に関する研究も推進する.
尚,当該計画研究は平成16年度に発足した流動研究分野が進める研究に連携して行われる.
3.哺乳類のマクロ形態学と神経生理学を統合した個体レベル比較生物学の確立
実施予定年度 平成18年度~20年度
課題推進者:遠藤秀紀,大石高生,脇田真清,鈴木樹理,毛利俊雄
哺乳類を対象に,個体と外界との相互関係の検討からマクロ形態形質を扱い,体内環境を理論化する視点から神経・内分泌メカニズムを検討する.両手法のデータをもとに,形態学と生理学を,進化学,行動生態学,考古・古生物学などの周辺領域を含めて統合し,個体レベル生物学の確立を目指す.
4.霊長類の分子生理・分子病理学的特質に関する研究
実施予定年度 平成18年度~20年度
課題推進者:中村伸,林基治,淺岡一雄,清水慶子
霊長類の生理的および非生理的状態における生体反応,細胞機能あるいは器官調節について,分子,細胞,組織および生体レベルからの比較解析を通じて,霊長類の生理・病理学的特質を明らかにすると共に,それらの適応性や疾病感受性などについても検討する.
5.霊長類コミュニケーションの進化と言語の起源
実施予定年度 平成18年度~20年度
課題推進者:松井智子,杉浦秀樹,室山泰之,香田啓貴
ヒトを含む霊長類のコミュニケーションを研究し,言語の起源を探る.個体発生的な観点からヒトの言語および社会認知発達を検証する一方,系統発生的観点からニホンザルやテナガザルなどの音声コミュニケーションを言語的および社会的見地から分析する.
(2) 応募並びに採択状況
平成18年度のこれらの研究課題について,82件(110名)の応募があり,共同利用研究実行委員委員会(平井啓久,田中正之,遠藤秀紀,M.A.Huffman)において採択原案を作成し,協議員会(平成18年2月8日)の審議・決定を経て,運営委員会(平成18年3月2日)で了承された.その結果,81件(109名)が採択された.また平成17年度から開始された施設利用随時募集に対し,20件(28名)の応募があり,19件(25名)が採択された.
各課題についての応募・採択状況は下記のとおりである.
課題 |
応募 |
採択 |
計画研究1 |
11件(11名) |
11件 (11名) |
計画研究2 |
4件 (9名) |
4件 (9名) |
計画研究3 |
9件 (10名) |
9件 (10名) |
計画研究4 |
4件 (6名) |
4件 (6名) |
計画研究5 |
4件 (4名) |
4件 (4名) |
自由研究 |
32件(48名) |
32件(48名) |
施設利用 |
38件(50名) |
38件(50名) |
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