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京都大学霊長類研究所 年報
Vol.37 2006年度の活動
V HOPEプロジェクト
日本学術振興会先端研究拠点事業HOPE
2004年2月1日から,日本学術振興会先端研究拠点事業として,HOPEプロジェクト(「人間の進化の霊長類的起源」の研究)が始まった.先端研究拠点事業は,我が国と複数の学術先進諸国における先端研究拠点間の交流を促進することにより,国際的な先端研究ネットワークを構築し,戦略的共同研究体制を運営するものである.平成18年度からは国際戦略型に移行し,より活発な国際共同研究システムとして機能している.
1. 先端研究拠点事業HOPEの事業計画
独立行政法人・日本学術振興会(JSPS)は,学術の国際交流に関する諸事業の一環として,我が国において重点的に研究すべき先端分野における,我が国と複数の学術先進諸国の中核的研究拠点をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより,21世紀の国際的な先端研究ネットワークを形成,それを戦略的に運営することを目的とした事業を平成15年秋に開始した.これが先端研究拠点事業と呼ばれるものである.対象分野は,我が国の各学術領域において先端的と認められる分野であり,かつ,交流相手国においても先端的と認められている分野である.尚,共同事業の対象国は,米国,カナダ,オーストリア,ベルギー,フィンランド,フランス,ドイツ,イタリア,オランダ,スペイン,スウェーデン,スイス,英国,オーストラリア,ニュージーランドの15ヶ国に限定されている.京都大学霊長類研究所とマックスプランク進化人類学研究所の共同事業であるHOPEプロジェクトが,その第1号に選ばれた.
HOPE事業は,霊長類研究所の観点から言えば,文部科学省(当時文部省)のCOE拠点形成事業(竹中修代表,平成10-14年度)の基礎のうえにたって,後継の21世紀COEプログラム(平成14-18年度)と連動して,先人の努力を後継発展するものと位置づけられる.こうした国際的研究拠点の創出は,中期計画・中期目標(平成16-21年度)にそって全所的に取り組む課題と認識されている.そのため,事業の採択通知を受けて,所内に「HOPE事業推進委員会」を発足して,「事業計画の指針」を検討立案し,協議委員会に報告して了承された.
その指針に基づき,「拠点形成促進型」(平成16年度から17年度)を終了した.そして,平成18年度より「国際戦略型」への移行計画を立て,日本学術振興会に採択されて,以下の事業をおこなうこととした.
1)共同研究事業の実施
共同研究(野外研究を含む)の実施を通じて,先端的研究領域を開拓する.国際的共同研究の実施打ち合わせならびにその予備調査をおこなう.共同研究のために若手研究者を長期に派遣したり招聘したりする.研究基盤としての海外研究拠点の形成・育成を図る.
人材の有効な交流のため,日本人若手研究者の国際 会での発表や情報交換,ポスドクならびに大学院生等の若手研究者の海外で研究成果を発表支援している.また,マッチングファンドに則るが,外国人研究者に研究所での実習や情報交流の機会を与える.
2)セミナー・国際集会事業の実施
共同研究の成果発表や情報国缶のためのセミナー・レクチャー・ワークショップ・シンポジウム等を企画実行する.開催地は国内外を問わない.他の事業・企画と連携して,我が国における研究拠点としての役割を果たす.こうした国際集会のための海外渡航費用を支援する.平成18年度はHOPEに関連した研究集会は20以上に及び,なかでも霊長類研究所において開催された「自然史科学と認知科学」(アラン・C・カミル博士),「バングラデシュの霊長類の現状,分布,生態に関する概論」(モハマド・モスタファ・フィーロッツ博士),「ドイツ霊長類研究所の概要」(エバーハルト・フクス博士)は,多数の参加者を呼び,研究交流に大きな成果を収めている.
3)若手向けプログラムの実施
HOPEは本体事業とは別に行われる若手向けプログラム開催事業を運営している.これは国内外から講演者を招き,おもにフロアの若手を対象に議論を進めるという集会を開催する事業である.平成18年度は,11月6日に名古屋市において,「人間の進化の霊長類的起源」を開催,多数の若手研究者との有効な交流の場となった.今後も引き続き開催を計る.
4)出版・ネットワーク関連事業
すでに霊長類研究所に常置されているHOPEホームページは国内外の霊長類研究の情報発信的機軸として機能し,多くの利用者に親しまれている.また,例年数十件の原著論文,総説など,研究成果の出版が進んでいる.今後はHOPEの成果を集大成した書籍出版の支援をHOPEによって進める予定である.
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