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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2005年度 > X 共同利用研究・研究成果-施設利用 32~36 京都大学霊長類研究所 年報Vol.36 2005年度の活動X 共同利用研究2 研究成果 施設利用 31~3631 高崎山ニホンザル雌の栄養状態の把握について栗田博之(大分市教育委員会) 対応者:大澤秀行 本研究は,高崎山ニホンザル餌付け群の保護管理のため,繁殖母体である成熟雌の栄養状態を,雌自身の体格指数と子どもの離乳開始時体重を求めることによって把握しようというものであり,2002年から継続している.体格指数はMori(1979)の方法による9月時の体長とKurita et al. (2002)の方法による10月時の体重より求めた.子どもの離乳開始時体重は180日齢時体重(10月から3月までのくり返し測定に基づく推定.算出方法の詳細については省略)とした.体長については,2005年生まれの幼児を持つ雌23個体と幼児を持たない雌23個体の計46個体についてデータを取ることができたが,現在2002年からの蓄積データの分析途中である. 10月時体重については,幼児を持つ雌24個体と幼児を持たない雌24個体について測定し,前者の平均±標準偏差が8,440±814g,後者のそれは7,990±836gであった.また前者の24個体中23個体で,子の180日齢時体重を推定できた.その結果,平均±標準偏差は1390±157gであった.今後は,標本数を増やし,2002年からのデータと合わせてさらなる分析を進める予定である 32 チンパンジーにおけるヒトの疾患感受性に関わる遺伝子多型の検討日野田裕治(山口大・医・臨床検査医学) 対応者:平井啓久 ヒトの疾患感受性と遺伝子多型の関連は,主として分子疫学的方法により検討されている.しかし報告者により結果が異なり結論に至らないことが極めて多い.様々な要因が指摘されているが,候補遺伝子における遺伝子多型の選択基準がないこともその1つと推測される.一方,ヒトと霊長類での遺伝子多型の比較は,ヒト固有の疾患,とりわけ生活習慣病において有用な情報を提供し得ることがApoE遺伝子多型などで明らかにされてきた.今回我々は,霊長類との差異が遺伝子多型選択の手がかりになるかを明らかにする目的で,生活習慣病の1つであるがんとの関連が検討されている遺伝子多型について,チンパンジーとの比較を行った. チンパンジー血液サンプル数が現時点で4と少ないため,がんとの関連が分子疫学的に報告されているshort tandem repeat 多型(n = 8)について検討した.その結果,次の3群に分けることが可能と思われた:1)リピート数の分布がヒトとチンパンジーで完全に異なる(n = 3),2)一部重なる(n = 3),3) ほぼ重なる(n = 2).これらの遺伝子多型のうち,生体内での機能的意義が確立されたものは1つだけであるが,それは1群に分類された.がんとの関連性では,文献的に比較的強いエビデンスは1および2群に認められる傾向にあるが,さらにサンプル数と遺伝子多型数を増加して検討する必要がある. 33井上慎一(かずさDNA研究所) サンプル提供がなく本研究計画は未実施 34 他者の否定的な情動に対するチンパンジーの反応赤木和重(三重大・教育) 対応者:松沢哲郎 他者が恐怖という否定的情動を提示した際のチンパンジーの反応を,社会的参照行動の有無という点から検討した.具体的には,霊長類研究所に所属するチンパンジー幼児3個体,成人3個体を対象に,日常使用している箱を他者(ヒト)が開けた際に恐怖を表出する状況を設定した.「他者が何に恐怖を提示しているのか明瞭でない」という場面を設定することで,社会的参照行動を生起させようとした.その結果,以下の2つの事実が明らかになった.1つは,全てのチンパンジーが,他者の恐怖提示後15秒以内に,箱と他者を交互注視したことである.2つは,いずれのチンパンジーも,箱に対して警戒的な行動をとったことである.これらの結果から,先行研究に比べ不確実な状況においても,社会的参照行動がみられることが示された.このことは,チンパンジーにおける社会的参照行動が頑健なものであることを示唆している. 35 サル類骨密度に関する比較動物学的研究田中愼(国立長寿医療センター加齢動物育成室) 対応者:鈴木樹理 霊長類研究所所蔵の,年齢と性の異なるニホンザルMff428,Mff349,Mff949の右側大腿骨晒骨の貸し出しを受け,DXA測定し,骨塩量・骨面積・骨密度について以下の結果を得,標本を返却した.
BMDは,年齢や性で大きく異なるようである. この結果は,Measurement of the Japanese monkey femur by DCS-600EX-IIIR,ALOKA.という題で,Exp Animへ投稿準備中である. 36 サルにおける葉酸リセプターβ発現の検索松山隆美,永井拓(鹿児島大・感染防御・免疫病態制御) 対応者:中村伸 背景・目的:葉酸リセプターβはヒト各種組織のマクロファージにて発現し,特に関節リウマチ滑膜にて高発現する.これより,炎症疾患に対する治療法として葉酸リセプターβ発現マクロファージの選択除去の有効性が期待される.本研究ではアカゲザル各組織における葉酸リセプターβの発現を明らかにする. 方法:アカゲザルの肺,肝臓,脾臓,皮膚,腸の凍結切片を作成し,ヒト葉酸リセプターβに対する2種類のマウスモノクローナル抗体(36b, IgG2および94b, IgG1)に対する反応性を免疫染色にて検討した. 結果・考察:36b抗体は皮膚,腸管との反応性が見られた.肺,肝臓,皮膚では反応性が見られず,94b抗体はいづれの組織においても反応性が見れなかった.これより,アカゲザルにおける葉酸リセプターβの存在が確認できた.また,94b抗体の反応性が見られなかったことから,ヒトとアカゲザル間におけるエピトープの相違が示唆された. このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会 |