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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2005年度 > X 共同利用研究・研究成果-施設利用 22~31

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.36 2005年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 施設利用 22~30

22 ニホンザルにおけるMHC遺伝子多型解析に関する基礎研究

松原幹(京都大・理・人類進化)

対応者:松林清明

霊長研のニホンザルを対象に免疫系を規定するMHC-DRB遺伝子の多型解析を行った.嵐山A・B,若桜A・B,高浜,小豆島由来(岡崎・有珠)の放飼場で飼育されるニホンザルを対象に,血液からDNAを抽出し,PCR-DGGE法でMHC-DRBを分離,ダイレクト・シークエンシング法で塩基配列を確認した.145頭から27タイプの対立遺伝子を確認した.小豆島由来の2群で個体差が極めて小さく,個体あたり3-4タイプの対立遺伝子を保持し,その内の3タイプは全個体で確認された.次に多様性が低い群れは若桜由来の2群で,16タイプの対立遺伝子のうち,若桜特有のタイプが5タイプみられた.高浜群では21タイプのうち2タイプが高浜群特有であった.また,今回確認されたニホンザル由来DRB遺伝子と他の霊長類のDRB遺伝子の系統関係をみると,ニホンザルと同じfascicularis系統のアカゲザルとカニクイザルのDRB遺伝子と相同性が極めて高く,100%一致するタイプが4タイプみられた.種を超えた(trans-species)類似性はMHC遺伝子の特徴の一つであり,本研究は生息地が完全に分離された種間で高い一致性を示す報告となった.

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23

小野裕剛(慶応義塾大・法)

サンプル提供がなく本研究計画は未実施

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24 霊長類網膜の3D培養技術の確立と網膜神経節細胞の軸索再生促進法の検討

渡部眞三(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所), 市川優寛,松井宏恵(名古屋大・医)

対応者:林基治

【目的】ネコ網膜で確立した3D培養法を霊長類網膜に適用し,網膜神経節細胞の軸索(視神経線維)の再生を促進するROCK 阻害剤の作用を検証する.

【方法】摘出した眼球から無菌下で網膜を剥離し,0.5 mm 角の細片にし,細片をコラーゲンゲル内に埋入して,Dulbecco MEM(無血清)で14日間培養した.培養液中に新規ROCK 阻害剤のY39983を,1 µM から100 µM添加した.14日目にパラフォルムアルデヒドで固定し,神経突起を特異的に識別する抗TUJ-1抗体(Alexa fluor 488,緑色),グリア突起を特異的に識別する抗GFAP抗体(Cy3,赤色)で,二重染色を行った.

【結果と考察】本年度は8日令のマカックザルから,1眼提供された.突起伸展の促進は,Y39983の濃度が1 µMの培養から認められた.Y39983濃度が3 µMから10 µMで突起伸展が最も顕著で,20 µMで抑制され,100 µMで完全に阻止された.この結果はネコ網膜の培養と同様であった(ネコ網膜では30 µMで完全抑制されるが,今回は検証しなかった).しかし無添加およびY39983の濃度1 - 10 µMの培養において,培養後24時間ですでに網膜からの突起伸展が認められ,7日後から突起が認められるネコ網膜と異なっていた.これらの突起がTUJ-1陽性の神経突起かどうか,さらに成体の網膜でも同様に24時間で突起進展が認められるかどうかは,検証できなかった.さらにY27632を添加した場合の,突起伸展の挙動も今後の課題である.

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25 野生チンパンジーメスの育児中の遊動と社会交渉の分析

浜井美弥

対応者:M.A.Huffman

タンザニア,マハレ山塊国立公園に生息する野生チンパンジー,M集団のオトナメスを対象とした個体追跡観察データの分析を行なった.一般的な傾向として,離乳が完全に終わっていない子どもは,母親が長距離を速く移動しようとした場合,自力ではそれについて行くことができず,誰かに運搬される必要がある.そのため,子どもの体重が増加するにつれて,母親の負担は増加し,遊動速度は低下する傾向がある.また子どもが親から離れて遊ぶ,採食するなど,独立して活動する時間割合が増えるにつれて,母親の移動開始とタイミングを合わせることが困難になり,母子間で葛藤が生じることも多くなる.このような場面に姉,兄,母親と親しい未経産メスなどが居合わせ,一時的に子どもの運搬を手伝うことがあり,そのことで母親の負担はかなり軽減されていると考えられる.個体による差が大きいため,性別,年齢による違いをはっきりと出せてはいないが,兄よりも姉のほうが運搬により大きく貢献する傾向が見受けられ,母親の負担もより小さくなっている可能性がある.

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26 テングザルの社会構造に関する論文作成と音声の研究

村井勅裕(北海道大・地球環境)

対応者:渡邊邦夫

研究の成果

Mating Behaviors of Proboscis Monkey Nasalis larvatus American Journal of Primatology (in press) Tadahiro Murai

Female transfer between one-male groups of proboscis monkey (Nasalis larvatus)Primates (accepted) Tadahiro Murai, Maryati Mohamed, Henry Bernard, Patrick Andau, Rashid Saburi, Seigo Higashi

Rumination behavior of proboscis monkey Nasalis larvatusAmerican Journal of Primatology (submitting) Tadahiro Murai, Tomomi Yamada, Ikki Matsuda, Seigo Higashi

現在,テングザルのオスの交代,性行動の季節性,社会構造に関する論文も準備中である.

また,テングザルの音声に関する研究も現在準備中である.

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27 チンパンジー幼児における心理的因果性の認識

小杉大輔(静岡理工科大)

対応者:田中正之

チンパンジー幼児3個体(アユム,クレオ,パル)における対象の動きの因果的認識について実験的に調べた.PCモニタに,2つの図形(三角形と円)が随伴的に(例:三角形が円を追いかける)あるいは非随伴的に(2つの図形の動きに時空間的関連性がない)動く映像(それぞれ8秒)を提示し,被験体の注視時間を分析した.各被験体に対し,随伴的/非随伴的事象のいずれかを提示する試行が3-4試行ずつ繰り返された.いずれの事象も1試行につき10回提示されたが,6-8回目の提示から図形の配置を交代させた.このとき,随伴的な映像では因果的役割が交代するが,非随伴的な映像ではこのような役割の交代はない.注視反応の分析では,随伴的/非随伴的事象への選好の有無と因果的役割の交代への敏感性に注目した.同じ事象を繰り返し提示すると馴化がおこるが,因果的役割の交代を検出すれば,その時点で注意が回復すると予想した.分析の結果,まず,被験体全体において,随伴的事象への有意な選好が見られ,2種類の事象を区別したことが示唆された.一方,被験体が因果的役割の交代を検出した証拠は得られなかった.このような認識の発生について,今後,さらに検討していきたい.

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28 霊長類の社会的コミュニケーションの発達とその神経機構

中村俊(国立精神・神経センター)

対応者:林基治

平成17年10月12日,施設利用を開始するにあたり,霊長類研究所において行われた講習会に参加した.所内施設の見学を行い,飼育担当の方々から健康管理や群れのなかでの個体の管理などについてお話をうかがった.見学の後,飼育,取り扱い,麻酔方法などについてビデオを視聴し,最後に試験をうけ,はれて飼育及び非侵襲的実験についてのライセンスを頂くことができた(2008年3月まで有効).これと前後するように,国立精神・神経センターにおいても総合動物棟の落成にともない,霊長類施設が整備され,マーモセットの飼育が開始されたため,行動観察など上記課題に関する一連の実験を行うことが可能となり,この講習会以降,霊長類研究所での実験は行っていない.国立精神・神経センターにおける研究の立ち上げに際して,貴施設における講習の経験は有意義であり,機会を与えて頂いた,林先生をはじめ,研究助成の方々に感謝したい.霊長類研究所では,マーモセットに限らず,多様な霊長類が飼育されており,とくに野外研究との連携が深いため,今後,研究上の必要が出来た場合に,貴施設を利用させて頂きたいと考えている.

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29 新世界ザルの日内活動パターン解析

サチタナンタン・スリカンタ(岐阜大・連合獣医)

対応者:鈴木樹理

Sleep quantitation data on the Neotropical primate species, apart from the squirrel monkey, are still sparse. As such, we have quantitated sleep in the common marmosets (Callithrix jacchus), cotton top tamarins (Saguinus oedipus) and squirrel monkeys (Saimiri sciureus) reared at the PRI facility simultaneously, by non-invasive actigraphy. The range in total sleep time/24 hr measured for male adult common marmosets, cotton top tamarins and squirrel monkeys were 713-793 min (n=4), 707-889 min (n=4) and 459-475 min (n=2) respectively. The range in sleep episode length /12 hr dark phase for marmosets, tamarins and squirrel monkeys were 21-52 min (n=3), 10-28 min (n=4) and 9-15 min (n=2) respectively. Since vigilance is a critical evolutionary adaptive feature of predator avoidance among Callitrichid monkeys and squirrel monkeys, the shorter ranges in sleep episode length recorded, even under captivity, in this study could be interpreted as probable indicators of such vigilance behavior during the rest phase. These findings have been accepted for publication in the Comparative Biochemistry and Physiology journal, and has appeared in the online version of the journal in April 2006.

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30 霊長類の胎盤における非古典的MHCクラスI分子の発現について

石谷昭子,下嶋典子(奈良県立医科大・法医)

対応者:清水慶子

HLA非古典的クラスI遺伝子,HLA-E,-F,-G分子はすべてヒト胎盤に発現しており,HLA-Eおよび-Gは,妊娠の維持に重要な機能を持っている.HLA-Fについては,ほとんど解明されておらず,通常,細胞表面には発現しないとされていたが,我々が作製した抗HLA-Fモノクロナル抗体を用いて,HLA-Fが母体脱落膜に侵入している胎児のトロホブラスト細胞の細胞表面に発現していることを明らかにしてきた.また,この抗体はRhesus macaque,Pigtailed macaque,Long tailed macaque,Baboon等のリンパ球とも反応することを確かめてきた.今回,年度途中で「施設利用」に採択され,このHLA-F分子の機能解析を目的として,霊長類の胎盤におけるHLA-Fホモログの検索を行った.これまでに,Long tailed macaque2頭の胎盤が採取でき,これらの胎盤トロホブラスト細胞に抗HLA-F抗体が反応していることが確認できた.すなわち,Long tailed macaqueも胎盤トロホブラスト上にHLA-Fホモログが発現していることが明らかになった.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会