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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2005年度 > X 共同利用研究・研究成果-自由研究 21~30

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.36 2005年度の活動

X 共同利用研究

2 研究成果 自由研究 21~30

21 マカク属における骨形態形成要因の解明

菊池泰弘(佐賀大・医・生体構造機能)

対応者:濱田穣

マカク属12種(地上性傾向のアカゲザル,樹上性のカニクイザル,他マカク10種の3群)を対象に,橈骨遠位部・断面形状の定量比較分析を行った. pQCT(末梢部定量的 X 線断層撮影装置)を用いて,全338個体を対象に下橈尺関節部位を撮像し,得られたCT画像から外部輪郭形状を抽出し,外輪郭上の5つの部位の長さをそれぞれ隣接する腱や骨の発達指標とした.それぞれの指標値を従属変数に,橈骨長・骨断面積・皮質骨断面積を独立変数として対数変換グラフ化し,重回帰分析および回帰係数の差の検定を用いて種問比較分析を行った.分析の結果,カニクイザルがアカゲザルを含めた他のマカク種に比ペ,長・短橈側手根伸筋と伸筋群に相当する腱溝が相対的に大きい傾向が見出された.長・短橈側手根伸筋は手首を橈側に屈曲(外転)する作用がある.樹上歩行時,橈骨手根関節が尺側に屈曲した状態で着手する場合,着手直前,手首を前方に向け掌を着手接地面に向けるために,通常より橈側手根伸筋が大きく働くことが予測される.また,カニクイザルは地上傾向の強いマカク属に比べ,枝をしっかり握るために,着手前の動作としてしっかり指を広げる必要性も不可欠であり,この動作が伸筋群の大きさに影響していると示唆される.これらの筋活動が腱溝に反映し,カニクイザルが相対的により大きな長・短橈側手根伸筋と伸筋群の腱溝を持つのではないかと考えられる.

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22 マカクザル乳児における生物に関する初期知識

堤清香(京都大・文)

対応者:友永雅己

昨年度に引き続き,ニホンザル乳児の生物知識とその発達について調べた.これまでに,1ヶ月児は生物モデルと非生物モデルを弁別しないが,3ヶ月児では生物モデルと非生物モデルに対して異なる反応を示すこと,及び,3ヶ月児は,生物の特徴として,眼の存在よりも毛の存在のほうに着目しやすいことが分かっている(Tsutsumi et al, submitted).このことから,1ヶ月児では生物概念がまだ形成されていないが,3ヶ月児では生物と非生物の区別ができており,生物らしさを規定する要因としては眼よりも全体のテクスチャー(毛がありふわふわしている)のほうが重要であることが示唆される.一方で,眼への敏感性は多くの霊長類で指摘されている要素であり,これが生物らしさを規定する要因としてニホンザル乳児に組み込まれていないのだとしたら,眼への敏感性はコザルの物理的・社会的環境認識においてどのような意味をもつのかを調べていくことが重要であると思われる.これに注目し,生物モデルの眼の属性,とくに眼の個数を様々に変化させて,サルの注視反応を測定したところ,生物として可能な眼の個数である1個または2個に比べて,3個の眼がついた生物モデルに対する注視時間が長い傾向がみられた.これは,生物らしさを規定する属性として,眼の有無よりは眼の個数のほうが重要である可能性を示唆する.

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23 霊長類における社会的文脈での推論研究

高橋真(京都大・文)

対応者:上野吉一

他個体からの情報は,直接他個体が当該個体に向けて環境情報を直接発している場合と,他個体が意図して発していない情報を当該個体が自己の知識と照らし合わせし,間接的に環境情報を推論して得る場合の両方がある.本研究では後者の場合の推論を,フサオマキザルが行えるかどうかを比較検討した.本研究では以下のような場面を模した.当該個体にとって既知な2箇所の餌場がある.その個体が餌場に行く前に,同種他個体が一方の餌場に行くのを見る.このとき,他個体の選択した餌場には餌がないことを推論するならば,他個体が選択していない餌場に行くはずである.ただし,この場面のみでは当該種が生得的に持つ行動傾向(他個体に常に追従する,他個体を常に避ける)により,結果に影響を与える可能性がある.そこで,統制条件として,常に餌場の餌が補充される餌場で同じテストを行った.この統制条件では,他個体の行動により2つの餌場の価値に差が生じないため,当該種の持つ生得的な傾向が調べることができる.この統制条件と実験条件を比較した.

その結果,4個体中3個体が実験条件では他個体とは異なる餌場にいく傾向が強かったのに対し,統制条件ではその逆であった.この結果は,フサオマキザルが他個体からの情報を利用して推論できることを示す.

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27 モダリティ表現を用いた誤信念課題の理解と発達の神経発達心理学的研究

三浦優生(国際基督教大・院・教育)

対応者:正高信男

他者の心を理解する能力である心の理論の発達をはかるものとして,誤信念課題が代表的な手法として用いられてきた.本研究では,他者信念を理解する際の発話による影響を調べることを目的とし,従来の誤信念課題に,話し手の確信度に関わるモダリティ表現を取り入れ,幼児の他者信念の理解への影響を観察した.被験者である3歳児には,誤信念を持つ人物による発話の有無・種類が異なる以下の3条件下でSally-Ann課題が与えられた:(1)従来のSally-Ann課題に基づくもの(誤信念保持者による発話の無いもの),話し手の誤信念が発話によって明示され,その文の最後に確信度に差のある終助詞(2)「よ」および(3)「かな」が伴う条件.一連の場面は,パペットによる劇を用いて提示され,実験者により質問が与えられた.実験の結果,発話を伴わない誤信念課題には正解できない子供でも,話し手の強い確信度を示す「よ」条件では正解率が有意に上昇し,一方話し手の確信が弱い「かな」条件では,「よ」条件より有意に低い正解率を示した.これらの結果は,誤信念理解が発達途上にある幼児において発話刺激の影響が認められること,更に彼らがモダリティ表現に示された確信度の差を既に理解し始めていることを示している.尚,本研究では当初目的としていた光トポグラフィーを用いた検証には到らなかったが,今後より年下の幼児も対象として他者理解の能力の神経学的な基盤を検討していきたい.

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28 マイクロサテライトDNA解析によるワオキツネザルの繁殖構造の研究

市野進一郎(京都大・アジア・アフリカ地域研究)

対応者:川本芳

マダガスカル共和国ベレンティ保護区に生息するワオキツネザルの繁殖構造を解明するために,マイクロサテライトDNA解析を行った.昨年度の研究では,交尾行動を観察した群れ(1群)を対象に,マイクロサテライトDNA多型を用いた父子判定をおこない,成果を得た.今年度は,この研究を発展させ,個体識別ができている6群の群れメンバーの遺伝子プロフィールを決定することを目的とした.実験には,1999年の捕獲調査(代表者:小山直樹)で採集された血液から調製したゲノムDNAを用いた.まず,昨年度に引き続き,先行研究を参考にDNA多型の検索をおこなった.その結果,昨年度の実験で多型を確認できた6座位に加え,新たに5座位で多型を確認できた.次に,これら11座位について,134個体の遺伝子型を決定する実験をおこなった.現在のところ,結果を解析中であるが,今後は,この結果を用いて,群内,群間の遺伝子分布の特徴,集団の文節化,遺伝子近縁度の状況を検討する予定である.

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29 カニクイザルの顎頭蓋形態と飼育環境との関連に関する研究

高橋昌己(日本大・松戸歯・第一解剖)

対応者:高井正成

ヒトにおいて,環境の変化によって,頭蓋骨,歯のサイズが変化するという報告がある.タ験動物として多く扱われている,カニクイザルの頭蓋骨標本を用いて,頭蓋骨形態を調査した.材料は京都大学霊長類研究所所蔵のカニクイザルの乾燥頭蓋骨(オス23体,メス62体)を用いた.また,グループ間の比較として,(財)日本モンキーセンター所蔵のカニクイザルの乾燥頭蓋骨(メス30体)を使用した.計測項目は,頭蓋,歯列弓,四肢骨を含めた33項目である.計測はデジタルノギスを使用した.性差,グループ間の比較検定は,Studentのt検定を用いた.

検定の結果,男女間において有意差がみられ,メス同士のグループ間でも有意差がみられた.また,同じグループ内において四肢骨(上腕骨,大腿骨)のサイズの変化に対して頭蓋骨のサイズの変化は計測項目ごとにばらつきがみられた.

今後の調査でグループ間に差が生じた要因を検討するとともに,全身の成長に対する顎頭蓋骨のアロメトリーについても検討していくつもりである.また,カニクイザル以外のマカク属についても同様の傾向があるか,調査していくつもりである.

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30 霊長類毛色遺伝子の多様性と変異解析

山本博章,築地長治,上原重之(東北大・院・生命科学)

対応者:川本芳

脊椎動物色素細胞は,紫外線防御だけではなく,婚姻色の発現やカムフラージュを可能にし,正常な視聴覚に必須であり,またエネルギー変換体としての機能等々,多様な機能を果たしている.このシステムは,生物集団の生存戦略に深く関わってきたものと推察される.このシステムの形成に関わる遺伝子の中で特に毛色や皮膚色発現に深く関わる遺伝子群を野生霊長類からクローニングし,その構造解析を元に各個体のアリル解析を行うことが本研究の目的である.

今年度はニホンザルから次のタンパク質をコードする遺伝子断片のクローニングに成功した.

チロシナーゼ:メラニン産生の鍵酵素であり,この酵素活性の低下はアルビノ(完全に欠損した場合)やヒマラヤン(温度感受性の活性を持つ場合)などの原因となる.

Mitf (Microphthalmia-associated transcription factor, 小眼球症遺伝子):哺乳動物の全ての色素細胞発生(細胞そのもの)に必須の転写因子であり,分化した色素細胞内では前記チロシナーゼ遺伝子の発現を亢進する.

その他数種の関連遺伝子の断片もクローニングできた.

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このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会