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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2004年度 - III 研究活動 社会構造分野 京都大学霊長類研究所 年報Vol.35 2004年度の活動III 研究活動社会構造分野森明雄,大澤秀行,杉浦秀樹 研究概要A) ヒヒ類の研究森明雄,杉浦秀樹 サウジアラビア・タイフ市のダムとアル・ルーダフ公園を利用するマントヒヒの群で,個体群動態,行動学的,社会学的調査を行った.イヤー・タッグで標識した個体の生存と所属するユニットを調べて社会構造の分析を進めている.今年度も,ユニット構造の変化を記録することができた.新たな発見としては,2003年1月に標識された2ユニットのメス達が,2003年8月,9月の44日間の調査期間中には調査地から消失していたが,2004年8月に,2つのユニットはまとまって調査地に帰ってき,毎日観察された.ダムサイト群は閉じられた系ではなく,近隣群との交流が重要な課題であると分かった.この観察は,マントヒヒの特徴的社会構造であるクラン構造の存在に疑いを呈する観察である.また,エチオピア南部アルシ州に生息するゲラダヒヒのポピュレーションの研究を引き続き行っている. B) 中央アフリカ乾燥サバンナにおける霊長類の社会生態学的野外研究大澤秀行 カメルーン北部でパタスモンキーの野外研究を1986年以来行っている.今年度は,社会変動の研究を基に,単雄群から複雄群への社会進化のモデル作成に取りかかった.調査地の生息哺乳類,鳥類のチェックリスト資料をもとにした長期環境変遷の分析も引き続き行っている. C) ニホンザルの個体群動態・生活史・繁殖とその生態学的決定要因の研究<森明雄,大澤秀行,杉浦秀樹,深谷もえ(大学院生) 高崎山の餌付け集団を対象に継続個体数調査を行い,得られた人口学的基礎資料をもとに人口学的諸変数を求め,個体群動態の研究を進めている.昨年度に引き続き,出産率と個体群密度,オトナ雌数の間の相関性を分析している(大澤).また宮城県・金華山,鹿児島県・屋久島西部海岸地域の野生群を対象に,個体群動態の継続調査を実施した(杉浦). 宮崎県幸島では,主群を避けて島の片隅に生きる小さな分裂群の観察を前年度に引き続き行った.採食樹の秋の結実とサルによる利用の年変動を10月,11月に観察して検討している.2004年度の秋の実りは過去6年間の調査で1番悪く,この時期に葉を主食としているのを観察した(森).ニホンザルの採食場所の選択を,サルの利用と食物利用可能度の観点から分析した(深谷). D) 移入タイワンザルの生息状況と交雑化の現状の研究大澤秀行 1950年代に野生化したと思われる和歌山市周辺のタイワンザル集団の調査を1998年から行っている.調査は,集団遺伝学,保全生態学,形態学,獣医学の研究者らと広く協力しながら行っている.今年度は,和歌山県による本集団の大量捕獲の後の生息状況,分布,個体数調査をタイワンザルワーキンググループの名の下に行った.これに基づき個体数増加率の再推定と今後の個体数の推定を行ない,日本霊長類学会のホームページに速報として掲載した. E) 東南アジアにおけるマカク属の分布の現状の研究大澤秀行 平成16年度文部科学省科研費により,タイ国西部・北部のマカク属各種の分布状況とその生息環境の現地調査を行った.マカク属5種の生息地を踏査し,群の分布,生息地の環境,交雑個体の出現状況などの資料を得た. F) ウガンダのカリンズ森林におけるチンパンジーと他種霊長類の生態学的研究田代靖子(研修員),深谷もえ(大学院生),下岡ゆき子(非常勤研究員) 霊長類の採食生態と環境利用に関するデータを分析した(田代).レッドテイルモンキーとブルーモンキーがどのように混群を形成しているのかを明らかにするために,2種の遊動パターンを調査・解析した.また同所的に生息している同属のロエストモンキーと上記2種の遊動を比較するために,ロエストモンキーの遊動パターンを調査した(深谷).チンパンジーは離合集散する社会をもち,食物の分布は離合集散における個体の動態に大きな影響を与えると考えられている.チンパンジーが,採食樹において食物の質や量についての情報を音声によって他個体に伝達しているのかを明らかにするために,野生チンパンジーの行動観察を行い,2種の音声:パントフートとフードグラントの発声と採食樹の質・量との関連を検討した(下岡). G) コンゴ森林における野生ボノボの社会及び行動の研究田代靖子(研修員) コンゴ民主共和国(旧ザイール)ジョル地区ルオ保護区ワンバ森林のボノボの継続調査を行っている.今年度は,ワンバ村におけるボノボの生息状況について調査を行い,対象群の遊動域変化と環境要因の関係についての資料を収集した.また,個体識別用のDNA試料を採集した. H) グルーピングの研究下岡ゆき子(非常勤研究員),鈴木真理子(大学院生),杉浦秀樹 コロンビア・マカレナ地域の野生ケナガクモザルを対象に,離合集散の動態を研究した(下岡).屋久島に生息するヤクシマザルを対象に,群れとしての空間的まとまりがいつ,何によって保たれているかについて予備調査,解析を行った(鈴木).ニホンザルの群の空間的な広がりや,サブグルーピングにについてデータの収集と解析を行った(杉浦,下岡). I) 協力行動の研究中山桂(大学院生) 昨年度に引き続き,2頭のサルが棒をひいて餌をとる課題をおこなった.今年度は,協力関係の成立したペアを対象に,協力がどのような条件でおこるのか,またどういった要因が協力関係の維持に影響するのかを検討した. 研究業績論文
報告
学会発表等
講演
その他
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