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京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 > X 共同利用研究 3. 平成15年度で終了した計画研究

京都大学霊長類研究所 年報

 

Vol.34 2003年度の活動

X 共同利用研究

3 平成15年度で終了した計画研究

チンパンジー乳幼児期の認知行動発達の比較研究
  • (実施年度:平成13年度~15年度)
  • (推進者:松沢哲郎・友永雅己・小嶋祥三(平成13~14年度)・泉明宏(平成15年度)・濱田穣・田中正之)

本計画研究は,平成12年度に終了した計画研究『類人猿の認知行動発達の比較研究』の成果受けて,平成12年と平成15年に生まれ4個体のチンパンジー乳幼児を主たる対象として,類人猿の乳幼児期における認知・行動の発達を,形態学的,生理学的研究と関連させ幅広い視点ですすめてきた.特に,基礎的な知覚・認知や運動の発達,社会的認知,コミュニケーション,社会的知性どの発達を軸にチンパンジーを含む類人猿を特徴づける認知機能や行動の特性とその発達過程を他の霊長類種(小型類人猿やマカクザルなど)とも比較しつつ検討を進めてきた.

本計画の期間は,主たる対象となったチンパンジー乳児が満1歳から満4歳にいたる時期であった.認知機能を調べる検査方法も生後1年間に多用された対面場面での検査や選好注視法などから,母子共存場面での社会交渉の実験的生起や母親と同様のコンピュータによって制御された認知課題などの導入がはかられた時期でもあった.この3年間で行われた共同利用研究はこれらを反映して,バリエーションにとんだ方法で行われた.社会的認知の領域では,自己鏡映像認知の発現がヒトに比して明らかに遅いこと,母-子-ものが存在する場面での交渉のヒトとの相違点などが明瞭に観察された.計画研究全般としては,所内の研究者および共同利用研究員間の研究の進捗状況を共有することによって相互に連関をもたせながら進めていった.また,チンパンジーの認知発達の知見との比較のために,ニホンザル等のマカクザルの新生児・乳児を対象とした認知発達の研究も所内のマカクザル発達研究グループとの協力のもとすすめられ,興味深い知見が蓄積されていった.

これらの知見は平成15年2月と11月に開催された共同利用研究会において中間報告の形で発表され,計画に参加した研究者などの間での活発な議論がなされた.

本計画研究で行われた研究の題目と研究者は以下のとおりである.

  • <平成13年度>
  • 山口真美(中央大・文)・金沢創(淑徳大・社会):「チンパンジーとニホンザルにおける顔認識の発達過程の実験的検討」
  • 今田寛(関西学院大・文):「チンパンジー乳幼児における視空間認知の発達」
  • 石川悟(京都大・文・心理):「霊長類乳児における生物的運動の認識」
  • 岡本早苗(名古屋大・文):「チンパンジー乳幼児における社会的認知の発達」
  • 桑畑裕子(京都大・文・心理):「霊長類の乳児における顔図形認識」
  • 竹下秀子(滋賀県大・人間文化):「チンパンジー乳幼児の積木構成/配分行動の発達」
  • 関根すみれな(林原自然科学博物館):「乳幼児期から子ども期におけるチンパンジーの遊びの発達:物と関わる遊び・他個体と関わる遊び」
  • 渡辺茂(慶応大・文)・山崎由美子(慶応大・社会学研):「チンパンジー乳幼児における自己の名前概念の獲得」
  • 松村秋芳(防衛医大・生物):「チンパンジーの運動発達に関する機能形態学的研究:MRIの3次元解析によるアプローチ」
  • <平成14年度>
  • 小杉大輔(京都大・日本学術振興会):「霊長類乳幼児における生物・無生物の動きに関する認識」
  • 桑畑裕子(京都大・文):「霊長類乳児における顔図形認識」
  • 足立幾磨(京都大・院・文):「霊長類乳児における生物学的運動の認識と複数感覚様相を統合した種概念の発達」
  • 武田庄平(東京農工大・比較心理学):「チンパンジ-幼児の砂遊びにおける象徴的操作の実験的分析」
  • 竹下秀子(滋賀県立大・人間文化学),関根すみれな(林原生物化学研究所・類人猿研究センター):「対象操作の発達と物の属性の認知」
  • 水野友有(滋賀県立大・人間文化学)・岡本早苗(名古屋大・環境学):「チンパンジー乳児のコミュニケーション行動の発達-「他者」からの働きかけの認知と応答性について-」
  • 魚住みどり(慶応義塾大・社会学):「チンパンジー乳幼児における自己の名前概念の獲得と自己認知」
  • 森村成樹・不破紅樹・伊谷原一(林原自然科学博物館・類人猿研究センター):「チンパンジーにおける物の有無の理解」
  • <平成15年度>
  • 小杉大輔(京都大・文,:日本学術振興会)「物理的および社会的知識に関する比較認知発達的研究」
  • 足立幾磨(京都大・文):「霊長類乳児における生物学的運動の認識と複数感覚様相を統合した種概念の発達」
  • 武田庄平(東京農工大・農):「チンパンジー幼児の砂遊びにおける象徴的操作の実験的分析」
  • 水野友有(滋賀県大・人間文化),岡本早苗(名古屋大・環境):「チンパンジー幼児におけるコミュニケーション行動の発達」

(文責:友永雅己)

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霊長類における色覚の特性とその系統比較の研究
  • (実施年度:平成13年度~15年度)
  • (推進者:三上章允・竹中修・上野吉一・後藤俊二・脇田真清)

本計画研究課題では,色覚とその進化を主として遺伝子レベル,生理レベル,行動レベルで検討した.3年間に研究の対象とした霊長類は,ショウガラゴ,スローロリス,ブラウンレムール,ニシメガネザル,ヨザル,リスザル,オマキザル,クモザル,ニホンザル,チンパンジーである.竹中直美は,ヨザルのY染色体上にある視物質遺伝子を解析し,この遺伝子がX染色体上の視物質遺伝子と完全に同じ配列を保っており,Y染色体上の視物質遺伝子も機能している可能性を示した.久保寺直也は,原猿の青視物質遺伝子を解析し,ブラウンレムールとニシメガネザルで青視物質遺伝子が正常に機能しており,偽遺伝子化しているショウガラゴ,スローロリスとは異なることを示した.平松千尋は,野外で遺伝子判定した後に行動観察することを想定し,糞から色覚型判定を行う非侵襲的遺伝子解析手法の開発を行った.霊長類研究所で飼育しているリスザルで手法の信頼性をテストした後,中米の野生オマキザルとクモザル群を対象として糞サンプルを取得し,日本に持ち帰って解析し色覚型の判定に成功した.小池智は,竹中修の保有する血液サンプルおよび三和化学熊本霊長類パークから入手したサンプルを用いチンパンジーのX染色体上の視物質遺伝子を解析した結果,中波長視物質遺伝子と長波長視物質遺伝子のハイブリット遺伝子を持つ個体を3頭発見した.そのうち1頭の遺伝子型が色弱に相当すること判定した.伊藤和夫は,ニホンザルを用い,色覚情報処理に関与する神経回路のトレースを行った.その結果,従来色情報処理が優位であるといわれてきたVP野(第3次視覚野腹側部)と第2次視覚野の結合が従来考えられたように,第2次視覚野の色情報処理領域(チトクローム酸化酵素で濃く染まる細い縞)のみでなく,明るい縞にもつながることを示した.斎藤慈子は,視物質遺伝子の型を判定したオマキザルとチンパンジーで行動実験を行い,色手掛かりを用いた図形識別の行動テストの結果が,遺伝子型と良く対応することを示した.また,2色型色覚に有利であろうと推定されるカラーカモフラージュ条件での図形弁別は3色型個体で成績の低下することを示した.一連の研究で,遺伝子レベルの判定方法の確立が実現し,それらの方法を用いて判定された遺伝子型と行動レベルでのテストがよく対応することが示された.この計画研究の成果から提起される今後の課題は,①それぞれの遺伝子型の個体が野外でどのような行動をするか,②それぞれの遺伝子型に対応した脳内の情報処理がどうなっているか,③正常な個体の脳内の色情報処理がどのように行われるかである.

本計画研究課題は,霊長類の色覚とその進化の解明を目指し,期間内に以下の共同利用研究が行われた.

  • <平成13年度>
  • 竹中直美(東京大・新領域・先端生命):「新世界ザル視物質レパートリーの生成と消滅に関する研究」
  • 伊藤和夫(岐阜大・医・神経高次機能):「マカクザル視覚皮質VP野の色認識への関与」
  • 小池智・細沼美樹・寺尾健一(東京都神経科学総研)・大西曉士(京都大・理):「旧世界霊長類の錐体視物質遺伝子の多様性に関する研究」
  • 齋藤慈子・長谷川寿一(東京大・総合文化):「新世界ザルにおける色覚の個体差と行動」
  • <平成14年度>
  • 久保寺直也(東京大・新領域・先端生命):「原猿類視物質レパートリーの生成と消滅に関する研究」
  • 平松千尋(東京大・新領域・先端生命):「新世界ザル排泄物からの色覚型判定法の確立」
  • 小池智(東京都神経研):「旧世界霊長類の錐体視物質遺伝子の多様性に関する研究」
  • 齋藤慈子(東京大・院・総合文化研究科):「色覚異常チンパンジーの行動分析」
  • <平成15年度>
  • 平松千尋(東京大・新領域・先端生命):「非侵襲的遺伝子解析による色覚型判定法の確立」
  • 齋藤慈子(東京大・院・総合文化研究科):「色覚異常チンパンジーの行動分析-色覚異常の有利性について」

(文責:三上章允)

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ニホンザルの生活史に関する研究
  • (実施年度:平成14年度~15年度)
  • (推進者:大澤秀行・森明雄・上原重男・杉浦秀樹・マイケル・ハフマン)

ニホンザルの生活史を,繁殖,社会関係,環境利用など多くの側面から追求しこれまで欠落していた部分を補いながら,生活し研究の今日的な再構成を試みようとした.不明な点の多い性成熟後のオスの生活史や,雌雄のコドモ期の発達や成体~老齢期における年齢に伴う変化の研究等を焦点とした.

応募のあった研究は,おもに社会関係の発達や維持に関するもので,新生児の社会関係に影響する母親の順位の研究,雄グループの形成過程における個体間の関係の研究,コドモの遊びの萌出と発達の再考などが行われた.また幼児成長の性差の研究は,計測資料の基礎的収集分析ではあったが,ニホンザルの生活史戦略という観点のなかで見直されたものであった.

各研究はそれぞれ,これまでの社会関係研究,発達研究と関わりながらも,その欠落した部分または不十分であった部分の研究という色彩が強く,その意味では本計画研究の初期目的の一つは満たされた.それらをどのように展開するかという点が今後の課題ではあったが,当初の参加研究者の数名が,それぞれの個別の理由で研究を中断したため,本計画研究は2年でうち切らざるを得なくなった.

  • <平成14年度>
  • 柏原将(京都大・霊長研):「ニホンザルの子どもの社会関係の発達に影響を及ぼす社会的要因の研究」
  • 金森朝子(宮城教育大):「野生ニホンザル・群れ外オスのグループ形成過程の研究」
  • 安藤知子(京都大・理):「ニホンザルのオトナオスとコドモの社会関係」
  • 栗田博之(大分市・企画):「高崎山ニホンザルにおける幼児成長の性差について」
  • <平成15年度>
  • 金森朝子(宮城教育大):「野生ニホンザル・群れ外オスのグループ形成過程の研究」
  • 西村宏久(京都大・霊長研):「ニホンザルのコドモの遊びに関する地域比較」

(文責:大澤秀行)

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