ENGLISH 京都大学
125周年
所長挨拶 概要 教員一覧 研究分野・施設 共同利用・共同研究 大型プロジェクト 教育,入試 広報,公開行事,年報 新着論文,出版 霊長類研究基金 リンク アクセス HANDBOOK FOR INTERNATIONAL RESEARCHERS Map of Inuyama
トピックス
お薦めの図書 質疑応答コーナー ボノボ チンパンジー「アイ」 行動解析用データセット 頭蓋骨画像データベース 霊長類学文献データベース サル類の飼育管理及び使用に関する指針 Study material catalogue/database 野生霊長類研究ガイドライン 霊長類ゲノムデータベース 写真アーカイヴ ビデオアーカイヴ

京都大学霊長類研究所
郵便番号484-8506
愛知県犬山市官林
TEL. 0568-63-0567(大代表)
FAX. 0568-63-0085

本ホーム・ページの内容の
無断転写を禁止します。
Copyright (c)
Primate Research Institute,
Kyoto University All rights reserved.


お問い合わせ

京都大学霊長類研究所 > 年報のページ > 2003年度 - III 研究活動 社会構造分野

京都大学霊長類研究所 年報

Vol.34 2003年度の活動

III 研究活動

社会構造分野

森明雄・大澤秀行・杉浦秀樹

研究概要
A) ヒヒ類の研究

森明雄・杉浦秀樹

サウジアラビア・タイフ市のダムとアル・ルーダフ公園を利用するマントヒヒの群で,個体群動態,行動学的,社会学的調査を行った.イヤー・タッグで標識した個体の生存と所属するユニットを調べて社会構造の分析を進めている.昨年度に引き続き,ユニットより上の社会構造の解明に努めた.昨年度見られたバンドの一つは,今年度の調査では,消失(移出)した.昨年,見られたクラン的ユニットの集まりは,今年度もよく集まっていた.しかし,昨年観察された,大きな2つのバンドは,ミックスされており,バンド構造はそれほど明確ではないと分かった.2000年に標識され,以後ほとんど確認できなかった個体が,隣接集団からダムサイト群に一時的に加わった.ダムサイト群は閉じられた系ではなく,近隣群との交流が重要な課題であると分かった. また,エチオピア南部アルシ州に生息するゲラダヒヒのポピュレーションの研究を引き続き行っている.

B) 中央アフリカ乾燥サバンナにおける霊長類の社会生態学的野外研究

大澤秀行

カメルーン北部でパタスモンキーの野外研究を1986年以来行っている.今年度は,昨年度末に行った野外調査の資料(群の所属個体の生存確認,新生個体の記録など,人口学および社会変動に関するもの)の分析と,調査地の生息哺乳類,鳥類のチェックリスト資料をもとにした長期環境変遷の分析を行った.

C) ニホンザルの個体群動態・生活史・繁殖とその生態学的決定要因の研究

森明雄・大澤秀行・杉浦秀樹・下岡ゆき子(非常勤研究員)・深谷もえ(大学院生)

高崎山の餌付け集団を対象に継続個体数調査を行い,得られた人口学的基礎資料をもとに人口学的諸変数を求め,個体群動態の研究を進めている.昨年度に引き続き,出産率と個体群密度,オトナ雌数の間の相関性を分析している(大澤).また宮城県・金華山,鹿児島県・屋久島西部海岸地域の野生群を対象に,個体群動態の継続調査を実施した(杉浦).宮崎県幸島では,主群を避けて島の片隅に生きる小さな分裂群の観察を前年度に引き続き行った.採食樹の秋の結実とサルによる利用の年変動を10月,11月に観察して検討している.本年度の秋の実りはよく,1999年の実りに類似していた(森).ニホンザルの採食場所の選択を,サルの利用と食物利用可能度の観点から分析した(深谷).また,思春期オスの群からの離脱が,年齢によって決まるのか,体重から見た成長で決まるのか検討している(森).

D) 移入タイワンザルの生息状況と交雑化の現状の研究

大澤秀行

和歌山市周辺に生息する移入タイワンザルの調査を1998年から行っている.調査は,研究所内の集団遺伝分野,ニホンザル野外観察施設の教官および所外の研究者と広く協力しながら行っている.今年度は,本集団のこれまでのセンサス資料と捕獲資料より個体数増加率の推定と今後の個体数の推定を行った.また,捕獲個体については昨年度に続き生態的資料収集(胃内容物検査,栄養状態の指標としての皮下脂肪測定)を行った.

↑このページの先頭に戻る

E) ウガンダのカリンズ森林におけるチンパンジーと他種霊長類の生態学的研究

橋本千絵(教務補佐員)・田代靖子(研究機関研究員)・深谷もえ(大学院生)

食物生産量と社会的因子がチンパンジーの集団編成パターンにどのような影響を与えるかを調査し,さらに哺乳類コミュニティの中でチンパンジーの占める生態的地位について調査・解析を行った.また霊長類とその他の哺乳類の採食生態と環境利用に関するデータを分析した(橋本・田代)同所的に生息しているレッドテイルモンキーとブルーモンキーに着目し,2種がいつどこで混群を形成するのか,そのプロセスを明らかにするための予備調査ならびに解析を行った(深谷).

F) コンゴ森林における野生ボノボの社会及び行動の研究

橋本千絵(教務補佐員)・田代靖子(研究機関研究員)

コンゴ民主共和国(旧ザイール)ジョル地区ルオ保護区ワンバ森林のボノボの継続調査を行っている.過去に収集された資料に基づき行動の分析を行った.さらにコンゴ人研究者と共同で,現地調査を再開した.

G) グルーピングの研究

下岡ゆき子(大学院生)・杉浦秀樹

コロンビア・マカレナ地域の野生ケナガクモザルについて,過去に収集した資料に基づいて,離合集散の動態の解析を行った(下岡).ニホンザルの群の空間的な広がりや,サブグルーピングにについてデータの収集と解析を行った(杉浦,下岡).

↑このページの先頭に戻る

H) 発達の研究

上野有理(大学院生)

霊長類研究所のチンパンジーを対象に,採食行動の発達と母子間伝播を研究した.

I) 雄ニホンザルにおけるホルモンと行動の関連

Gordon M. Barrett(大学院生)

雄ニホンザルにおけるホルモンと行動の関連を,生理学的な手法を用いて研究した.

J) 協力行動の研究

中山桂(大学院生)

飼育下のフサオマキザルを対象に,餌をめぐる個体間の競合と協力行動の成立について検討した.8組のフサオマキザルで「棒を引くことで餌を引き寄せる課題」をおこなった.協力的問題解決にいたるサルの戦略および, 認知的プロセスについての分析をおこなった.

↑このページの先頭に戻る

研究業績
論文
  1. Agetsuma, N., Sugiura, H., Hill, D.A., Agetsuma-Yanagihara, Y., Tanaka, T. (2003) Population density and group composition of Japanese sika deer (Cervus nippon yakushimae) in an evergreen broad-leaved forest in Yakushima, southern Japan. Ecological Research 18 (5): 475-483.
  2. Furuichi, T., Hashimoto, C. (2004) Sex difference in copulation attempts in wild bonobos at Wamba. Primates 45 (1): 59-62.
  3. Hanya, G., Matsubara, M., Sugiura, H., Hayakawa, S., Goto, S., Tanaka, T., Soltis, J., Noma, N. (2004) Mass mortality of Japanese macaques in a western coastal forest of Yakushima. Ecological Research 19 (2): 179-188.
  4. Hashimoto, C., Suzuki, S., Takenoshita, Y., Yamagiwa, J., Basabose, A.K., Furuichi, T. (2003) How fruit abundance affects the chimpanzee party size: a comparison between four study sites. Primates 44 (2): 77-81.
  5. Mori, A., Belay, G., & Iwamoto, T. (2003) Changes in unit structures and infanticide observed in Arsi geladas . Primates 44 (3): 217-223.
  6. Mori, A., Watanabe, K. (2003) Life history of male Japanese macaques living on Koshima Islet. Primates 44 (2): 119-126.
  7. Nakagawa, N., Ohsawa, H., Muroyama, Y. (2003) Life history parameters of a wild group of West African patas monkeys (Erythrocebus patas patas). Primates 44 (3): 281-290.
  8. Ohsawa, H. (2003) Long term study of social dynamics of patas monkeys (Erythrocebus patas): group male supplanting and changes to the multi-male situation. Primates 44 (2): 99-107.
  9. Shimooka, Y. (2003) Seasonal Variation in Association Patterns of Wild Spider Monkeys (Ateles belzebuth belzebuth) at La Macarena, Colombia. Primates 44: 83-90.
  10. Yamane, A., Shotake, T., Mori, A., Boug, A., Iwamoto, T. (2004) Extra-unit paternity of hamadryas baboons (Papio hamadryas) in Saudi Arabia. Ethology Ecology & Evolution 15: 379-387.

↑このページの先頭に戻る

報告
  1. 橋本千絵, 古市剛史 (2003) ウガンダ・カリンズ森林の野生チンパンジーに見られた高頻度の交尾について. 霊長類研究 19 (1): 17-22.

↑このページの先頭に戻る

その他雑誌
  1. 大澤秀行 (2003) アフリカゾウ[アフリカ]民族博物誌111. 月刊みんぱく 27 (11): 20-21.
  2. 大澤秀行 (2003) アフリカの原野にサルを追う.霊長研フォーラム. 広報いぬやま (923): 8.
  3. 下岡ゆき子 (2003) チンパンジーとクモザルにみる父系社会 特集・文化と社会性の起源ー進化の隣人に探る. エコソフィア 12: 41-48.

↑このページの先頭に戻る

分担執筆
  1. 橋本千絵 (2003) チンパンジー、ボノボにおける集団間移籍と近親交配の回避. “人間性の起源と進化” : 153-171, (西田正規, 北村光二, 山極寿一 編) 昭和堂, 京都.
  2. 大澤秀行 (2003) 霊長類, グルーミング. “生態学事典” : 128-129, 566-568, (巖佐庸, 松本忠夫, 菊沢喜八郎, 日本生態学会 編) 共立出版, 東京.

↑このページの先頭に戻る

学会発表等
  1. Hashimoto, C., Furuichi, T. (2004) Comparison of sexual behaviors between chimpanzees and bonobos. International symposium: African Great Apes Evolution, Diversity, and Conservation. (Mar. 2004, Kyoto, Japan).
  2. Shimooka, Y. (2004) Long call and its effect on grouping patterns in wild spider monkeys. African Great Apes: Evolution, Diversity, and Conservation (Mar. 2004, Kyoto, Japan).
  3. 古市剛史, 橋本千絵 (2003) ボノボの雌雄の交尾に対する態度の違いと性周期の関係について. 第19回日本霊長類学会大会 (2003年6月, 仙台市).
  4. 橋本千絵, 古市剛史 (2003) ウガンダ・カリンズ森林のチンパンジーにみられた高頻度の交尾について. 第19回日本霊長類学会大会 (2003年6月, 仙台市).
  5. 森明雄, 庄武孝義, 山根明弘, 岩本俊孝 (2003) サウジアラビアのマントヒヒの社会構造. 第19回日本霊長類学会大会 (2003年6月, 仙台市).
  6. 室山泰之, 田中俊明, 杉浦秀樹, 藤田志歩, 飯田景子, 浅岡一雄 (2003) ニホンザルにおける嫌悪条件付け-桂皮酸アミドを利用した経口投与の可能性-. 日本哺乳類学会2003年度大会 (2003年9月, 盛岡).
  7. 中川尚史, 大沢秀行, 室山泰之 (2003) カメルーン・サヘルのパタスモンキー:その高い繁殖率を支えるもの. 第40回日本アフリカ学会学術大会 (2003年5月, 松江).
  8. 大澤秀行 (2003) パタスモンキー(Erythrocebus patas)の社会変動研究:群れの雄交代と複雄群状態への移行. 第19回日本霊長類学会大会 (2003年6月, 仙台).
  9. 下岡ゆき子 (2003) 野生クモザルのロングコールの発声について.第19回日本霊長類学会大会 (2003年6月, 仙台).

↑このページの先頭に戻る

講演
  1. 橋本千絵 (2003) 類人猿の子供の行動発達~コンゴの森で野生ボノボの成長を追う~. 愛知県立明和高校PTA研修会 (2003年11月, 名古屋).
  2. 大澤秀行 (2003) 霊長類研究から探る人間社会の原型. 日本人材マネジメント協会 講演会 (2003年7月, 東京).
  3. 下岡ゆき子 (2003) ヒトの社会と霊長類の社会―南米アマゾンにおけるクモザルの社会構造の研究. 名古屋弁護士会弁護実務修習 (2003年9月, 犬山).
  4. 杉浦秀樹 (2003) 西部林道のサル(とサル研究者). 第5回屋久島フィールドワーク公開講座(2003年8月, 上屋久町).
  5. 杉浦秀樹 (2003) ニホンザルの音声コミュニケーション. 第40回市民文化大学 (2003年9月, 一宮市).

↑このページの先頭に戻る

このページの問い合わせ先:京都大学霊長類研究所 自己点検評価委員会