Top-Down Signal of Retrieved Information From Prefrontal to Inferior Temporal Cortices
Masato Inoue, and Akichika Mikami
[Journal of Neurophysiology 98, 1965-1974, 2007.]
Abstract
We compared neuronal activities in the ventrolateral prefrontal cortex (VLPFC) and the inferior temporal cortex (IT) during the retrieval of an object from the working memory. About one third of IT neurons showed color- and target-selective (CT) or target-selective (T) response during the color cue period of the serial probe reproduction (SPR) task. These object-selective (CT and T) responses in IT could be correlated with the retrieval process of an object from the memorized multiple objects because no objects were presented during this period. However, proportion of CT and T responses was smaller in IT than in VLPFC, where two thirds of neurons showed object-selective response. In addition, objectselective response started earlier in VLPFC than in IT. These results suggest that VLPFC retrieves particular object information from the working memory and sends the retrieved object information to IT. The fact that the responses in the error trials did not decrease in IT suggests that IT is not a critical area for the retrieval process from the working memory..
[要約]、
想起した情報は前頭連合野jから下部側頭連合野へトップ・ダウン信号として送られる。
井上雅仁、三上章允
複数の図形とその呈示順序の作業記憶(ワーキングメモリー)課題遂行における想起に前頭連合野(PFC)と下部側頭連合野(IT)の神経細胞がどのように関わっているかを比較した。用いた課題は2006年に発表した論文の課題と同じSerial Probe Reproduction (SPR) 課題、サルも同じ2頭を用いた。下部側頭連合野の約4分の1の神経細胞(CTタイプ)は、想起の信号である色刺激の色に選択性を示し、同時にその色刺激によって想起した図形にも選択性を示した。約6%の神経細胞(Cタイプ)はどちらお色でも特定の図形を想起するとこに選択的活動を示した。この結果は、下部側頭連合野も複数の作業記憶から特定の図形を想起するプロセスに関与することを示唆している。しかしながら、前頭連合野腹外側部(VLPFC)の神経細胞の約半数がCTタイプ、10%がTタイプであることと比較すると、前頭連合野腹外側部の寄与がより大きいことが分かる。また、CTタイプおよびTタイプの活動の開始時刻は、前頭連合野腹外側部が下部側頭連合野に先行していた。さらに、サルが誤反応するとき、前頭連合野腹側部の神経細胞活動は有意に低下するが下部側頭連合野では有意な差は認められなかった。これらの結果は、複数の作業記憶から特定の図形を想起するプロセスはまず、前頭連合野腹外側部で行われ、その信号が下部側頭連合野に送られていることを強く示唆する。一方、想起した図形には選択性を持たず、色選択的活動のみを示す神経細胞は前頭連合野腹外側部で25%であったに対し、下部側頭連合野では50%と多く、活動開始時刻も下部側頭連合野が前頭連合野腹外側部に先行していた。従って色情報は下部側頭連合野から前頭連合野腹外側部に送られていることが示唆された。
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図1
A 図形とその順序の記憶課題(Serial Probe Reproduction (SPR) task) の時間経過。画面中央の注視点をサルが見ると課題がスタートする。1.5秒後に図形1(C1)が0.5秒間呈示される。1秒の記憶期間(D1)の後、図形2(C2)が0.5秒間呈示される。その後、2番目の記憶期間(D2)が1秒間あって、赤または緑の色刺激が0.5秒間呈示される。さらに1-1.5秒の記憶期間があり、最後に3つの図形が呈示される。色刺激が赤のときは図形1に、緑のときは図形2に視線を移動すれば正答として報酬を与える。この課題では、D1の期間はC1の記憶、D2の期間はC1とC2とその呈示順序の記憶、D3の期間は正答図形の記憶を必要とする。さらに、色刺激で正答図形の想起が必要である。
B 仮説1:色情報は下部側頭葉連合野(IT)から前頭連合野腹外側部(VLPFC)へ送られ、VLPFCで作業記憶から特定の図形の想起が行われ、行動選択へと進む。
C 仮説2:作業記憶は下部側頭葉連合野(IT)から前頭連合野腹外側部(VLPFC)の双方の相互作用の過程で処理されており、ITが色情報を受け取ると、ITで図形情報の想起が行われ、VLPFCへ想起した図形情報が送られて、行動選択へと進む。
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図 3
A.CTタイプ(色と想起図形の両方に選択性を示した応答)、Tタイプ(想起図形にのみ選択性を示した応答)、Cタイプ(色にのみ選択性を示した応答)の活動開始時刻の比較。細胞数はそれそれ、VLPFCで60,13、31、ITで21、5、48
B.CTタイプ、Tタイプの活動が図形選択的となる時刻、Cタイプの活動が色選択的となる時刻の比較。細胞数はAと同様。
CT、TタイプはVLPFCの活動開始が早く、図形選択性を示す時刻も早い。一方、Cタイプの活動開始時刻はITが早く、色選択性を示す時刻もITが早い。
VLPFCについては2006の論文のデータを用いた。
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図 8
SPR課題遂行時に色情報にもとづいて想起するときの下部側頭連合野(IT)と前頭連合野腹外側部(VLPFC)における情報の流れの模式図。
色情報は下部側頭連合野から前頭連合野腹外側部に送られていることが示唆された。複数の作業記憶から特定の図形を想起するプロセスは、色情報を前頭連合野腹外側部が受け取り、前頭連合野腹外側部で行われる。つぎに想起した図形情報は、下部側頭連合野に送られている。すなわち、仮説1が正しいことが示唆された。
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