南米のサルの調査
論文「化石ヨザルの犬歯の性的二型の意味」
南米コロンビアの中期中新世の地層から見つかった現生のヨザルの祖先種Aotus dindensisの上顎犬歯にみられる性的二型の意味について議論しました。現生のヨザルでは、雌雄共に犬歯は小型で性的二型性はみられないため、化石種におけるこの特徴は現生種との行動的な違いを示しているものと思われます。A. dindensisにおける犬歯の存在について現生種に関する研究と比較してみたところ、A. dindensisがオス間の闘争をするような社会構造を持っていた可能性が強いことが判明しました。さらにこういった犬歯の性的二型と大きな眼窩といった形態的特徴を詳しく検討した結果、A. dindensisが現生のヨザルのようなペア型の夜行性種ではなく、複数のメスを含む群れを持った昼行性の種であることが推測されました。ヨザルの系統においては、夜行性への進化の過程で眼窩の大型化のような適応は急激に進んだのですが、昼行性の名残である犬歯の性的二型はゆっくりと退化したようです。これは形態的な進化のモザイク性を示していると思われます。
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